内容説明
医療技術は着実に進歩し、難病治療も可能になった。セカンド・オピニオンやインフォームド・コンセント、情報開示やAI活用もいまや当たり前だ。にもかかわらず、患者の不安が一向に減らないのはなぜなのか。現場で感じる「高邁な理想論」と「非情な現実」との乖離、そしてその狭間で治療を続ける臨床医の本心とは――。患者やその家族と対面する診察室では語りえない医師たちの苦悩、医療の実情を鋭く切り出す。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
coldsurgeon
9
著者と世代はほぼ同じ。私が外科医になった頃と比較し、医療を取り巻く社会は、大きく変貌した。そして医療自体も、技術的な大きな進歩も含めて、予想以上に変貌した。医療者として働くときのワクワク感、意気揚々とした気分は、焼失してしまい、患者の立場は弱者から、よくわからない「弱者時々強者」に変わった。抗がん剤治療は、高額が当たり前となり、患者にどのような利益をもたらしているのか、わからなくなっている。国債などの借金のほとんどの原因は、社会保障費だた著者は書いているが、財政破綻したら、自ら経済的な防衛しかない。2025/07/24
藤井宏
9
辛辣な物言いをされているが、共感できるところも多かった。びっくりしたことだが、アメリカでは患者さんが電子カルテの内容を自分のパソコンやスマホで閲覧可能にするシステムが急速に広がっており、さらに法律で患者情報を本人に伝えずブロックすることが禁止されていると。不確かな事柄もあると思うのにね。2025/06/28
フリウリ
5
医療費に関しては、前期・後期高齢者の一律3割負担と、超高額薬剤の保険適応の再考は、制度持続のために考慮すべきと思います。有限な医療資源をどう割り当てるかは、倫理的に困難な判断が問われますが、真摯な議論と政策を実施しないとやがて皆が困ることは目に見えています。医学の進歩で生き延びられる人は増えても、人はいずれ必ず死ぬ。個人的には、長く生き延びればそれだけ幸せになるとはいえないこと、1秒後が私にやってくることすら不確定なことを肝に銘じ、できるだけ「よい死」に出会うためにどう準備していくか、が課題です。72025/08/12
Asakura Arata
5
最後のおまけのディストピアが怖かった。何はともあれ健康と自給自足は大事。2025/07/31