内容説明
誰かが死ななきゃ分かんないの?
首相暗殺テロが相次いだあの頃、インターネット上にももう一つの爆弾が落とされていた。ブログに突如書き込まれた【宣戦布告】。そこでは、SNSで誹謗中傷をくり返す人々の名前や年齢、住所、職場、学校……あらゆる個人情報が晒された。
ひっそりと、音を立てずに爆発したその爆弾は時を経るごとに威力を増し、やがて83人の人生を次々と壊していった。
言葉が異次元の暴力になるこの時代。不倫を報じられ、SNSで苛烈な誹謗中傷にあったお笑い芸人・天童ショージは自ら死を選んだ。ほんの少し時を遡れば、伝説の歌姫・奥田美月は週刊誌のデタラメに踊らされ、人前から姿を消した。
彼らを追いつめたもの、それは――。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
419
塩田 武士は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。本書は、単なるSNS炎上復讐譚にあらず、骨太の社会派大河ミステリ、感動作でした。堂々と今年のBEST20候補です。本書でデジタル・キャンプファイアと言う言葉を知りました。私と共通点のある奥田 美月の「踊りつかれて」を是非聴いてみたい♪ https://books.bunshun.jp/ud/book/num/97841639198052025/06/10
やすらぎ
384
SNS、宇宙のような永遠に情報を投げ入れる恐怖。一時の感情の捌け口、その呟きの数だけ当事者を囲み、追い詰める。自身が浮上するわけでもないのに他者を沈める。一度躓いたら終わり、本当にそうなのか。正しさとは何か。どの立場に感情移入するかで読者の感想は変わるだろう。目の前に光る端末が世界とつながるその先、言葉の刃が心に突き刺さっている姿を想像できない人々。踊りつかれて。どんなに辛い人生を過ごしても、夢があり感謝がある。哀愁のメロディが夜の奥から聴こえてくる。青一色、夜の湖面。終盤に出てきたこの表現がとても好き。2025/06/28
パトラッシュ
364
スキャンダルを起こした芸能人をSNSで誹謗中傷し葬った面々が、逆に正体を暴露され社会的に追い詰められていく。ネット社会の歪みを衝く冒頭の衝撃は素晴らしいが、あっさり見つかった暴露犯は名誉棄損で逮捕され、彼の裁判シーンが延々と続くのはどうか。公判の場で正義の匿名性を訴える意図としても、話が矮小化されてしまった。むしろ暴露された一般人が一切を失って破滅する姿を容赦なく描いた方が、より強烈なドラマになったのだが。しかも登場人物の過去の惨い経験は、『朱色の化身』の焼き直し感が拭えない。惜しさ山積みの読後感だった。2025/06/17
hiace9000
333
直木候補で発表までに唯一間に合わなかった今作、ついに読了。ストーリー、キャラクター、そしてテーマ。そのどれもに塩田さんのこだわり、もはや執念にも近い濃厚なそれを堪能できた。答えの読めぬ複雑なピースが次第に組み上がっていく醍醐味、末端に至るまで細密な人物造形の生み出す生々しい現実感、なにより前半の怜悧冷徹にして鋭く切り込む「社会派筆」と、後半の繊細にして至高の感性で綴る「抒情筆」の絶妙ブレンド。この対比のもたらす余韻と奥深さたるや…。読み手にも向く作品の刃―、もう片方の先は、自身の立つ薄氷にも刺さっている。2025/08/20
のぶ
313
読み応えがあった。言葉が異次元の暴力になるこの時代。「枯葉」なる人物が、ネットによる誹謗中傷、過剰な週刊誌報道により、大好きだった芸能人の人生が狂わされたとして、仮面の加害者たちを断罪することから話しが始まります。「枯葉」なる人物の弁護を引き受けることになる女性弁護士・久代奏の目線で、「枯葉」がなぜそのようなテロ行為に及んだのか調査をしていくうちに、「枯葉」やお笑い芸人・天童ショージと歌手・奥田美月の半生が見えてきます。芸能界を扱った、今までにあまり読んでこなかったジャンルの小説だった。2025/06/05
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