内容説明
10年後に思い出す。そんな日は突然やってくる。
『わたしを空腹にしないほうがいい』『うたうおばけ』『湯気を食べる』がロングヒット&話題沸騰!!
ままならない人生に巻き起こる、心ざわつく悲喜こもごも――。
エッセイで日常のシーンを鮮やかに切り取り掬い上げてきたくどうれいんが描く、風味絶佳な初の小説作品集。
「そうだ。この間、酔って穴掘ったんだよ」「穴?」「どこに」
高校時代からの三人の友情は、公園の穴に吸い寄せられてゆく。(「スノードームの捨てかた」)
「いいんだよ、バイキングって『ご自由に』って意味なんだから」
同じヨガ教室に通う美女・ようこさん。彼女の“秘密”を知った私は――。(「鰐のポーズ」)
「どういうことですか」「こういうことです」
別れた恋人との指輪の処分に迷うまみ子が出会った、しゃがみ込む男。(「川はおぼえている」)
「すみません相席いいですか」
美術館の監視係をするわたしに舞い込んだ恋の予感、のはずが……。(「背」)」
「なにか直してほしいところ聞きたい、時間つくるから、つくって」
――結婚目前の彼女からの不穏な質問。(「湯気」)
「あら、じゃあもう決定だ、正解だ、運命だ」
仕事を辞め、虚ろな毎日で見つけたのは、一枚の祖父の絵だった。(「いくつもの窓」)
思ってもみなかった。こんなに心ざわつく日がくるなんて。
くどうれいんが描く傑作6篇。
目次
スノードームの捨てかた
鰐のポーズ
川はおぼえている
背
湯気
いくつもの窓
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
やすらぎ
207
買う時はワクワクしているから捨てるときのことなんて考えないけど、どう手放したらいいのだろう。真っ白な雪、スノードームもそうだし、冷たい雨、叶わなかった思いも。天秤が右へ左へ傾いたりしながら釣り合っている日々が幸せなのかも分からなくなるし。くどうれいんさんと同世代の女性が主人公の短編集。日常の周りに物語は転がっている。蹴飛ばしたり拾ったり、捨てることができなくなると拾うこともできなくなって。不幸すぎるのは辛いけど幸せすぎるのも怖いし。彩りのないまま過ぎ去る時間、好みではない色に染められて純白に戻るみたいで。2025/06/02
いつでも母さん
138
くどうれいんさんの短編集。6話の中で表題作が特に印象に残った。そう言えば、私の持っていたスノードームはどうやって捨てたのだったろう・・そんなことをふと思った。そして、「しんにょうが変だ。」で始まる『湯気』妙に私のツボにハマる書き出しなのだ。実は未だに上手く書けない(そこ?)この方は感性が柔らかいのだろうなぁなんて、この短編集から感じた。2025/06/22
itica
74
何気ない日常の情景、出来事。それだって私たちは傷ついたり元気を貰ったり、何かしら心を残しながら過ごしているんだと気づかされた6編。主人公は主に20代後半だろうか。「背」「湯気」のぞくぞくした感じは小川洋子さんをソフトにしたみたいな。明るい未来を予感させる「いくつもの窓」も良いな。静かに、でも確実に心に迫ってくるこんな短編集をまた読みたい。 2025/08/15
花ママ
61
初読みの作家さん。読み進むほどに、この作家さん好きかもと。婚約破棄された友人の、その人と選んだ思い出のスノードームを、私ともう一人の友人と一緒に公園に穴掘って埋めるという話「スノードームの捨てかた」6話の短編集の中で一番しっくり馴染めた。ありそうなことでもあるが、やはり主人公 のこだわりを強く感じた。2025/07/16
もぐもぐ
57
2話目の途中、不倫の話が出るまでエッセイだと思い込んで読んでました。それくらい文章の雰囲気も読みやすさもくどうさんらしさが溢れてた。日常の中で起こる心の揺れが丁寧に描かれていてほろ苦いけど面白かったです。特に表題作が好き。確かに”別れた相手とクリスマスに買ったきれいなスノードーム”って絶妙に捨て難いですね。くどうさんらしく出てくる食べ物がどれも美味しそう。 #NetGalleyJP2025/06/26




