内容説明
十年近く専業主婦だった八重樫靖羽は40路を前にして、尊敬する年上のキャリア女性から公益財団法人で働かないかと誘われ、新たな環境に思い切って飛び込むことに。しかし慣れない仕事で失敗の連続。これまで自分を中心に回っていた家庭や、その周囲にも思いがけないトラブルが巻き起こる。だが、小学校6年生の次女が「チョコレート」を自由研究のテーマにしたことから、チョコの歴史や製造工程を知って仕事や人間関係のアイデアを得たり、美味しいチョコを一緒に食べて励まされたりして、前に進もうと奮闘していく。海外のさまざまな子育て事情にも興味を持ち、合理的でフラットな考え方をもつ靖羽の目を通じて、仕事をすることで女性が抱える悩みを描きつつ、多様な価値観を描く勇気をもらえる物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さてさて
126
『チョコレート』を食べて、美味しいな!と思う瞬間、ほっとする!そんな瞬間に”起点・きっかけ”を得る人たちの姿が描かれていくこの作品。そこには、『チョコレート』にフォーカスしたほっこりとした物語が〈序章〉と〈終章〉に挟まれた5つの短編が連作短編を構成する中に描かれていました。『チョコレート』という”食”の魅力に抗し難いものを感じるこの作品。『公益財団法人』の”お仕事小説”としての側面も持つこの作品。読み進めれば読み進めるほどに、『チョコレート』が無性に食べたくなってもしまう、とっても『美味しい』物語でした。2025/05/23
えみちゃん
23
最近お気に入りの《角川ごちそう文庫》初読みの作家さん。美しい表紙とタイトルに惹かれ手に取りました。専業主婦だった靖羽(やすは)は40歳を目前にして財団で働くことになります。家族は応援してくれるが現実はそれほど甘くはない。思春期の娘の悩みにいかに寄り添うか、娘のお受験に身内の介護問題などなどどこにでもある問題に突き当たったときにいかに対処したらよいのか。すべてを深刻に受け止めないで靖羽のように「そうきたか」と「受け」はするけど「受け止めない」ようにしたいですね。「人は人、自分は自分。育ってきた土壌が異なる2025/06/13
鹿ノ子
10
チョコレート大好きなので思わず手に取りましたが、なかなか勉強になる本でした。チョコレートの歴史や製造過程など、帆乃香ちゃんの自由研究と共に学ばせていただきましたよ。そして、公益財団法人という聞いたことあるけど今一つわからなかったお仕事についても知ることができました。やりがいのある仕事と素敵な家族に囲まれた主人公がうらやましかったなぁ。2025/07/09
あーちょ
10
心が疲れていた自分に染みた。いつもならきっとこんなにせまってくるようなタイプの話ではなかったと思うけれど、チョコが私の心を癒してくれるように、この物語も私が前を向けるようそっと背中を押してくれているようだった。この話に出てくる人は、みんな必ず前を向いている。「労働は苦ではなく、人生を豊かにするものてなくてはならない」2025/06/08
ユウハル
10
読んでいてこれほどチョコレートが食べたくなるとは思わなかった。そして読めば読むほどチョコレートに詳しくなれる。ほのちゃんの自由研究のおかげ。 靖羽さんの気持ちや考えがとてもステキで読んでて気持ちが良かったです。私も『そうきましたか』の精神で乗り切るのいいかも!と良いアドバイス貰いました。 登場人物たちがみんなどこにでもいるかもしれないという身近な人たちで、その悩みも誰にでも起こりうるようなことが多くて、それでいて前向きに進んでいけるよう思い合っている様子にとても穏やかな気持ちで読めて心が温かくなりました。2025/05/23