内容説明
電車の行先を訊ねられたのがきっかけで親しくなった中国朝鮮族の女性と過ごした一六年間.実家の「地下教会」での抑圧された日々,日本で砕かれた夢と現実,植民地支配と戦争に分断された朝鮮族の歴史などを振り返り,東アジアを跨ぎ自立していく一人の女性の姿を描く.中国・韓国への同行取材を加えて描くノンフィクション.
目次
第一章 ハルビンにて
ハルビン行き
恩恵の実家へ
歓待
雪の大地
七三一部隊遺跡
満州移住
通訳断念
安重根義士紀念館
地下教会
帰国便の中で
第二章 一九九九年春
日本語学校就学生
アルバイトに追われる
専門学校教師の忠告
もう一つの日本
第三章 日中韓のはざまで
突然の結婚報告
転職を繰り返す
ぬれぎぬ
「中国人お断り」
ペットボトル事件
過酷な現実
日本も潮時
第四章 朝鮮族と地下教会
恩恵の記憶
政府は非公認
朝鮮族の日本語
一家、絶望の淵に
第五章 帰国
起き上がり小法師
東日本大震災
十二年ぶりの帰省
変わりゆく故郷
中国朝鮮族の大移動
コミュニティの解体
第六章 ルーツ
ソウル・九老にて
祖母の一生
汝矣島純福音教会
伯母・明姫
「サンドイッチ」として
神様がいつも胸の中に
あとがき
参考文献
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
どんぐり
68
日本語学校に就学生として来日した中国朝鮮族の女性・恩恵との16年間に渡る交流を描いたエッセイ/ノンフィクション。年々悪化していく日本と中国、韓国の関係。一方、偶然の出会いから身元保証人となった最相と恩恵は、付かず離れずの関係を重ね友人となっていく。朝鮮族であることと中国人であることによって、日本で二重にいわれなき差別を受けながら、日中韓の3か国語を自在に操りながらたくましく生きる恩恵。まるで起き上がり小法師のようだと最相は称する。2014年、二人は恩恵の故郷黒龍江省哈爾浜市に向かう。冒頭はここから始まる。2015/05/01
Miyoshi Hirotaka
31
潮が引くときに潮だまりができ、取り残された生き物が、再び潮が満ちてきた時に動き出す。国家と人の動きもこれに似ている。かつてわが国が朝鮮半島や支那に勢力を拡大した時に朝鮮族も大量に移動。わが国が収縮した際に、出身地に帰還した者の他に、その地に留まることを選んだ者も少なくなく、わが国の在日朝鮮人同様、中国領にも大量の朝鮮族が残った。彼らは、改革開放の膨張に乗じ、中国人として韓国、日本への移動を開始。同族の騙し合いや妬みにもめげず、人の善意を徹底的に利用。結婚すら在留権取得の作戦と割り切る上昇志向が凄まじい。2019/07/17
ぐうぐう
26
最相葉月が知り合った中国朝鮮族の女性との16年間の記録。交流を通して見えてくる朝鮮族の歴史と、朝鮮族の置かれた厳しい現状を通して、日本人の無知から来る差別意識を浮かび上がらせる。中国人と一括りにしてしまいがちだが、中国人であり、朝鮮族である本書の主人公の女性は、中国で、韓国で、そして日本において差別を受けるという境遇を強いられている。(つづく)2015/04/29
izw
20
今日、最相葉月さんの講演があり、この「ナグネ」を読むことと、お店などで外国人に会ったら出身地を尋ねることが宿題となっていた。中国の少数民族に朝鮮族がいることは知っていたが、その実態については全く無知だった。日本にいると「民族」について無頓着である。自分では差別せずに接しているつもりではあるが、「民族」が異なることに関心がいかないので、歴史認識や文化の違いにも気付かず、知らず知らずのうちに神経を逆なでするような言動をとっているのではないかと心配になる。そんなことを考えさせられる一冊であった。2015/09/12
tom
16
「セラピスト」を読んで、最相葉月を信頼できるルポライターと思うようになった。その彼女が中国に住む朝鮮族の人について書いた本。中国で暮らす朝鮮族ということで、中国でも韓国でも差別の対象となっていること。中国語、ハングル、そして日本語を扱うことができるので、中国の経済発展華やかな時代には、貴重な存在だったこと。中国と比べてはるかに豊かな韓国に脱出しようとする人たちが多かったこと。キリスト教の位置づけの高さなどなど、とにかく知らないことばかり。私自身の無知に驚く。加えて、主人公となる恩恵のパワフルさにも驚く。2015/06/02
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