岩波新書<br> 日本人拉致

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岩波新書
日本人拉致

  • 著者名:蓮池薫【著】
  • 価格 ¥1,034(本体¥940)
  • 岩波書店(2025/05発売)
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  • ISBN:9784004320647

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内容説明

突如自由を奪われ,独裁体制下で生きた二四年.北朝鮮からの「帰国」を後押ししたのは,現地に暮らすある人の言葉だった――.私はなぜ拉致されたのか.「マインドコントロール」「革命教育」の現実は.国家に生を翻弄された当事者自らが未解決事件の本質をえがく.重層的な人権問題として拉致を捉えなおす決定版.

目次

はじめに──ある人の言葉
選択肢のなかった日々
何のために二四年間を奪われたのか
I 問題は決して「解決済み」ではない
1 「八人死亡」は事実か
二〇年の時を経て
「遭難救出」から「拉致」へ
当局へのダメージ軽減──二つの策略
筋書きどおりに動かせる人物を
指導部は何を見誤ったか
2 変遷する説明──横田めぐみさんをめぐって
他人の遺骨だった
拉致被害者の住所は最高機密
妻の「死亡日」を錯覚?
車の行き先は
不自然な「遺骨」保管経緯
捏造の理由
II 日本人拉致の本当の目的
1 直接の目的は何だったのか
拉致機関は二つ
「よど号」グループによる〝人材獲得〟
スパイ網の構築のために
「土台人」を利用してのなり代わり
非合法、半合法、合法
2 世界各地で発生した事件
金賢姫の告白
「日本人は思いどおりにはできない」
偶発的な拉致だったのか
一一人の被害──一九七七~七八年
曽我ひとみさん親子・田口八重子さんの場合
前代未聞の同時多発事件
III 拉致は北朝鮮に何をもたらしたのか
1 果たされなかった目的
進まない思想改造
「拉致されたことは恥ずかしい」
一九八八年、実家に届いた手紙
「豆飯を食わせる」警告
二〇〇二年の方向転換
謝罪の背景──経済援助だけではない
2 まず「拉致」ありきの発想
最初の拉致で、犯人は逮捕されていた
なり代わったが、持て余す
対外情報調査部の「消極性」
逮捕、自白
送還ののち「非転向長期囚」に
3 計画を頓挫させたもの
確認できない工作員教育
工作員の条件──政治軍事大学卒業
脱出に成功した被害者たち
国内で育成する方針に
外国人「工作員化」の非現実性
IV 変容する思想教育
1 工作員育成のための「マインドコントロール」術
言いようのない孤独
韓国敵視──塗りつぶされた「韓」の字
「社会主義は世界の趨勢」
映画学習、日本人としての「負い目」
「この内容、わかりますか」
言われるままに
贈り物伝達式
2 育成放棄後の思想統制
思想の「現地化」へ
国際情勢に目を向けさせない「二〇〇日戦闘」
朝鮮半島核危機へ
涙は出ない
希望のありか
V 独裁下を生きるということ──私に与えられた「革命任務」
1 一二人の工作員に日本語を教える
「用済み」とされた被害者をどう扱うか
手に負えない任務
朝鮮戦争従軍者たち
ネイティブ化という幻想
将来不安な生徒
この二人も秘密工作員の任務につくことはなかった
敵の手に落ちれば──幹部の保身
怖さと後ろめたさ
2 書庫での発見
対外情報調査部七課
検閲からこぼれた記事
武田信玄について翻訳させられた
革命英雄の小説執筆
一冊のパンフレット
3 異質な任務
新室長の野心──金正日の現地指導
「自力更生」のため建設労働者に
月命日ごとに、花かごを
生死を懸けた熾烈な政争
遮断塀の中の生活
機密に接することが負担だった
自分で自分を警備する
4 動き出した事態
日朝国交正常化という目標
「日本に帰るのが怖い」
平壌市内の生活には馴染めない
小泉訪朝、面談へ──変わる北朝鮮側の指示
本音を話せない虚しさ
踏み絵だった質問──「子どもを連れていくか」
決断を後押しした言葉
おわりに──重層的な人権問題として
拉致問題の原点
被害者「線引き」の意味は
被害は拉致そのものだけではない
日本人拉致 関連年表
扉写真撮影:上村 窓

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

あすなろ

97
1978年に北朝鮮に拉致され24年後の2002年に日本へ帰国。その2002年から更に23年が経過しようとしている。そんな蓮池氏の人生を思いながら読書は進む。拉致被害をどこまで我々は理解し語れるのか。僕が知らない事実が沢山あった。まだまだ帰国出来ていない、或いは生存自体が分からない拉致被害者に何か出来る事はもうないのであろうか。一つ分かるのは、こうして我々読書家は書物を読み事件を風化させないという事だ。2002年に北朝鮮を動かしたのは自国の状況と共に伝わった我が国の拉致被害に対する意識であったとあるのだから2025/06/15

rico

80
かの国でのことを体系的に語ることができるとすれば、多分この方だろうと思っていたけど、既に何冊か書かれているのですね。拉致から帰国までの24年間。理不尽に異国に連れ去られた怒りや絶望については抑制的で、事実を伝えるという強い意志が感じられる。思想教育を受け工作員に日本語を教える日々の中、内側から見えた独裁国家の実相。拉致が国際社会の知ることとなった後の帰国に至る過程。まだ書けないこともあるはず。でも、よくここまで。解決が見えないまま時間ばかり過ぎていくことへの危機感がひしひしと伝わる。忘れてはいけないこと。2025/07/25

さつき

66
拉致被害者の蓮池薫さんの著作。北朝鮮でどのような暮らしをしていたか。拉致をした側が被害者に対し拉致されたのは恥ずかしいことだと言うなんて!あちらの言う通りにしなければ何をされるかわからない。そんな状況に24年も置かれていたこと、そして徐々に洗脳されていく様子が恐ろしかった。北朝鮮が何のために拉致をしたのか、そして想定通りにはならず失敗したか分かりやすく分析されていました。実際に渦中にいた方の言葉は重みがあります。2025/06/18

くろにゃんこ

32
拉致をされてからの生活、北朝鮮という国。こんなことが現実だという怒りと恐怖で苦しい読了。思うことはありすぎるがとても言葉に出来ません。ほんと、風化させてはいけない。2025/08/07

ちさと

27
北朝鮮による日本人拉致の全容を、知る限り書ける限り、当事者によって明かされた1冊。工作員による身分の成り代わり、外国人工作員としての利用目的で拉致されたという認識はあったが、よど号グループによる革命人材確保の目的があったことは知らなかった。拉致から帰国までの独裁体制下での24年間の様子は中盤に詳しい。帰国できた事は当然のことなのに、本当によかったと思う。帰国できていない人達は、公表できない国家秘密を知りすぎてるんでしょうね。。横田めぐみさんのご尊父が亡くなったと知った時は、胸がぎゅっと摑まれる思いがした2025/08/10

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