内容説明
地方の不動産会社で働く瑞季は、鬱屈した日常の中、自分だけの小さな楽しみとして「アルパカのヤスオ」のキーホルダーをひそかに集めている。ところが、孤高を貫いて怖がられている先輩社員の今泉さんとの意外な共通点やささやかな交流を通じて、瑞季の心に少しずつ変化が訪れる――表題作をはじめ、誰かにとっては価値のないものを大事に集める人と、その心を汲み取ろうとする人たち。そんな彼・彼女たちが、ぎこちないながらも心を通わせていく姿を優しく綴った、五つの物語からなる愛おしい短編集。/【目次】梅雨が来る前に/きみは湖/トカゲのいる闇/ハマエンドウが咲いていた/へびつかい座の見えない夜
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
168
タイトルに魅かれ読みました。砂村 かいり、初読です。本書は、収集癖短編集、オススメは、「梅雨が来る前に」&「トカゲのいる闇」です。 https://www.tsogen.co.jp/np/isbn/97844880292722025/07/27
hiace9000
136
『コーヒーの囚人』からの今作…にて砂村ファン完全確定。めちゃくちゃいいじゃないですか!現代社会における女性の当たり前への問い直しや、生きづらさ描きでは、最近の寺地さんや町田さんーだけじゃない、と。心の機微描きの繊細さと共感レベルは特筆もの。今作、何らかの理由で何かを集めてしまうことに囚われた人とそんな相手の心を汲み取ろうとする人の葛藤を描く五短編。各作品の掴みやテーマ、新たな示唆に富む意外な展開、そして絶妙の〆っぷりは実にお見事。一編読み終えるごとに、ほーっと息をつき、また新たな頁を繰る楽しさ満喫の良作。2025/07/12
ネギっ子gen
69
【なかったことにしたほうが、都合がよくて楽だったんだろうね】あまり価値のなさそうなものを大切にする人々の姿を綴る短編5つ。特に、ペットボトルのおまけ収集をする“実家に縛られた”25歳の女性会社員を描く表題作が響いた。<正直であることは、しばしば人を怖がらせる。社会に出ればみんな大なり小なり仮面をかぶり、本音はその下に包み隠してやり過ごしながら生きている。それをせずにありのままの感情を見せつけられると、未知の生き物に出くわしたときみたいに、防衛本能のセンサーが反応して恐怖をおぼえるのではないだろうか>と。⇒2025/07/17
えんちゃん
60
もー好き好き!砂村さんのことますま大好きになっちゃう!『何か』を収集する人たちの短編集。5つ。単にコレクターの話じゃなくて、それを通して交わる人間関係を描いたお話。自分を閉じ込めるひと、自分を解放してくれるひと。自分の人生はこうだって決めつけないで、出会いときっかけがあれば、いつでも新しく生きられるんだよって。勇気を貰えた。美表紙は浜名湖パルパル。ちなみにSixTONES松村北斗もパルっ子だよ。弁天島駅とか舘山寺とか私の庭(庭多過ぎ)が出てきて、これはもう聖地巡礼案件!2025/07/17
ででんでん
54
初めて読んだ砂村かいりさんの短編集。好きだった。収集癖…が鍵となる物語たち。のっけから「梅雨が来る前に」に出てくる男性の収集物にギョギョッとしてしまった。が、物語自体は「自分は変わることも変わらずにいることよ選択できる」ことを改めて認識できたというラストを含め、ギョギョッを乗り越えてくるものだった。「トカゲのいる闇」は、変わることを選択できた女性の物語で、小気味よく爽やかだ。表題作も「あるものをなかったことにしない」方向に自分の道を開いていく主人公が素敵だ。異彩を放つ「ハマエンドウが咲いていた」…大好き。2025/08/02
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