内容説明
地方の不動産会社で働く瑞季は、鬱屈した日常の中、自分だけの小さな楽しみとして「アルパカのヤスオ」のキーホルダーをひそかに集めている。ところが、孤高を貫いて怖がられている先輩社員の今泉さんとの意外な共通点やささやかな交流を通じて、瑞季の心に少しずつ変化が訪れる――表題作をはじめ、誰かにとっては価値のないものを大事に集める人と、その心を汲み取ろうとする人たち。そんな彼・彼女たちが、ぎこちないながらも心を通わせていく姿を優しく綴った、五つの物語からなる愛おしい短編集。/【目次】梅雨が来る前に/きみは湖/トカゲのいる闇/ハマエンドウが咲いていた/へびつかい座の見えない夜
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
183
タイトルに魅かれ読みました。砂村 かいり、初読です。本書は、収集癖短編集、オススメは、「梅雨が来る前に」&「トカゲのいる闇」です。 https://www.tsogen.co.jp/np/isbn/97844880292722025/07/27
hiace9000
141
『コーヒーの囚人』からの今作…にて砂村ファン完全確定。めちゃくちゃいいじゃないですか!現代社会における女性の当たり前への問い直しや、生きづらさ描きでは、最近の寺地さんや町田さんーだけじゃない、と。心の機微描きの繊細さと共感レベルは特筆もの。今作、何らかの理由で何かを集めてしまうことに囚われた人とそんな相手の心を汲み取ろうとする人の葛藤を描く五短編。各作品の掴みやテーマ、新たな示唆に富む意外な展開、そして絶妙の〆っぷりは実にお見事。一編読み終えるごとに、ほーっと息をつき、また新たな頁を繰る楽しさ満喫の良作。2025/07/12
ネギっ子gen
75
【なかったことにしたほうが、都合がよくて楽だったんだろうね】あまり価値のなさそうなものを大切にする人々の姿を綴る短編5つ。特に、ペットボトルのおまけ収集をする“実家に縛られた”25歳の女性会社員を描く表題作が響いた。<正直であることは、しばしば人を怖がらせる。社会に出ればみんな大なり小なり仮面をかぶり、本音はその下に包み隠してやり過ごしながら生きている。それをせずにありのままの感情を見せつけられると、未知の生き物に出くわしたときみたいに、防衛本能のセンサーが反応して恐怖をおぼえるのではないだろうか>と。⇒2025/07/17
やも
73
髪の毛集めるハウスクリーニング屋、失踪彼氏が集めてた記念切符、旦那が集めてたトカゲの脱皮した皮、海の漂流物を集めてる男の手元にイルカの耳石はあるのか、ペットボトルのおまけの中にへびつかい座はあるのか、の短編5話。▶へぇー!新鮮!面白い!ぜんぶいいじゃん!こんなラストになるのかぁ👀✨ただの無駄にほっこり前向きなラストじゃないね。もっとピリッと、背筋がしゃんと、胸がキュンとするような。トカゲの生態やらへびつかい座やら、知らなかった事が知れたのも面白かった🦎🐍かなり好みの一冊。2025/10/04
えんちゃん
64
もー好き好き!砂村さんのことますま大好きになっちゃう!『何か』を収集する人たちの短編集。5つ。単にコレクターの話じゃなくて、それを通して交わる人間関係を描いたお話。自分を閉じ込めるひと、自分を解放してくれるひと。自分の人生はこうだって決めつけないで、出会いときっかけがあれば、いつでも新しく生きられるんだよって。勇気を貰えた。美表紙は浜名湖パルパル。ちなみにSixTONES松村北斗もパルっ子だよ。弁天島駅とか舘山寺とか私の庭(庭多過ぎ)が出てきて、これはもう聖地巡礼案件!2025/07/17