内容説明
若き本草学者の不思議に満ちた生きものとの出会い――心震わせる時代幻想譚。
美(う)っつい奇のくには、どこからか草木の「声」が聴こえてくる。
みずみずしい読後感につつまれた。
―――――中江有里さん(俳優・小説家・歌手)
心震わせる生きもの賛歌。
美(う)っついのう。
紀州藩士の息子・十兵衛(後の本草学者・畔田翠山(くろだすいざん))は、
幼いころから草花とは自在に語らうことができるのに、人と接するとうまく言葉を交わすことができずに育った。
ある日、草花の採取に出かけた山中で天狗(てんぎゃん)と出会ってから、面妖な出来事が身の回りで次々と起こり……。
若き本草学者の、生き物や家族、恩師との温かな交感と成長を描く、感動の時代幻想譚。
〈目次〉
天狗 てんぎゃん
卯木 うつぎ
蜜柑 みかん
雪の舌 ゆきのした
伊佐木 いさき
不知火 しらぬい
藤袴 ふじばかま
仙蓼 せんりょう
譲葉 ゆずりは
山桃 やまもも
白山人参 はくさんにんじん
黒百合 くろゆり
瑞菜 ずいな
稲穂 いなほ
蓮華 れんげ
装画 MAYA MAXX
本文画 畔田翠山
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
207
江戸時代に実在した本草学者をモデルに、人付き合いが苦手で山歩きが好きな少年が山のヌシである天狗と出会い、草木と意思を通じ合えるようになる。最初は周囲から変わり者と思われたが、やがて主君にも認められ大切な役目を果たすほどになっていく。天狗たちも少年を常に見守り、苦しい時にはさりげなく助けたり亡父と再会させるなど温かく育てているようだ。こうしたホラー的なテイストを取り入れた物語は漫画やラノベでも多いが、こちらは派手なシーンは一切なく、自然と友情を結ぶことこそ大切だと静かに訴えて心に響くドラマを描き出している。2025/07/20
ちょろこ
135
本草学者、畔田翠山を幻想的世界観の中で息づかせた一冊。大好きな「よこまち余話」テイストで、梨木香歩さんの「家守綺潭」好きにはたまらない。岩瀬の山で天狗に会った日から始まる数々の面妖な出来事はまるで縁側でうたた寝しながら見る白昼夢のよう。終始ふわっと漂う時間にふわっと心弾んだ。定家葛の蔓が結ぶ世界と時間なんて最高。翠山はどれだけの草木や仲間の声を聴き、どれだけの想いを相手に捧げたことか。その交流は脈動のように心打ち彼の生き方を刻む。人は自然界から常に学び続けるべきことを思はずにいられない世にも美っつき物語。2025/07/09
KAZOO
121
今までほとんどの作品を読んできている(「惣十郎浮世始末」は文庫になってからと思っています)木内さんの最新作です。主人公は紀州藩士でその後本草学者となった畔田翆山ですが、この物語では比較的若いころの十兵衛時代のことを書かれています。人づきあいが苦手であった主人公が若いころに天狗に出会いそれを契機として、不思議なことに出会っていきます。様々な草や植物のことがわかります。中江有里さんが「みずみずしい読後感につつまれた」と書かれている通りです。2025/06/16
fwhd8325
107
描かれている世界と共生しているような感覚で読み進めました。とても心が穏やかで穣になったように感じます。2026/01/01
タツ フカガワ
105
十代徳川治宝が藩主の紀州藩で、下級藩士の家に生まれた畔田十兵衛は、のちに本草学(薬用植物の研究)を修めて藩医にまで登った実在の人物。これは他人との関りを苦手とする十兵衛が植物に魅せられた若き日々を描いた評伝的内容ながら、急逝した父の霊も、森の天狗もたびたび登場。木内さんの『よこまち余話』や『化物蝋燭』に通じるファンタジックな物語で、書き出しの数行で物語世界へ引き込まれました。それにしても、よくもまあこうした題材からこんな物語を紡ぎだしてくるものだと、その筆力と構成力に平伏。2025/12/27
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