内容説明
「生者とは、生の許しを受けた死者にすぎない」
二十世紀初頭のアルバニア北部の荒涼たる高地。この土地を支配するのは「カヌン」と呼ばれる、先祖伝来の終わることのない復讐の掟である。兄の血を奪い返した山岳民の若い男ジョルグは、三十日間の休戦の猶予ののちに自らの死を待つ身だった。しかし、この土地を新婚旅行で訪れた作家の妻ディアナと、馬車の窓越しにただ一度視線を合わせたことで、ふたりは命を賭してその運命を交錯させてゆく――。伝説と神話の影をまとった悲劇の時空間が立ちのぼる、忘れがたく美しい叙事詩的散文。
現代のアルバニア文学を、そして世界文学を牽引したカダレの作品は、フランス語を筆頭に四〇以上の言語に翻訳され、ノーベル文学賞の候補にたびたびその名が挙がったが、作家は二〇二四年七月に惜しまれつつ八十八歳で亡くなった。カダレの創作全体を見渡す井浦伊知郎氏(アルバニア語学・翻訳)による解説を巻末に付す。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
TATA
18
カダレは「夢宮殿」以来、数年ぶりに読んだ。相変わらずファンタジーの世界の中を彷徨っているような世界観。20世紀初頭のアルバニアの山岳地帯を舞台に生死をかけた復讐という掟に縛られた人々の日常を描く。その異常とも言える日常を描くことで抑圧された当時のアルバニア政府を批判したのかと思える内容。後書きを読むと日本とは大きく異なる国の成り立ちに改めて驚きます。2026/04/06
ふゆきち
4
血の掟が壮絶で、『夢宮殿』よりもファンタジックに思えるくらいでした。一気読みです。2025/10/11
Masaaki Uesaka
2
立場が異なる複数人の視点で「血の掟」が多層的,かつ価値相対的に描かれている点が印象に残りました.独特の陰鬱とした情景が語りのベースにあり,最後を除いては淡々とした物語が進みますが,それが故に登場人物の考えていることがビビッドに伝わるのかもしれません.2025/06/12
楢橋
1
面白すぎて一瞬で読み終わってしまった…。 アルバニアの血の掟の前提を全然知らないのに一息に読まされて終わった。2025/07/15
tu
0
なぜアルバニア人は客人という制度を作り、それをあらゆる人間関係、血縁さえも凌ぐものとしたのだろう? 「それはおそらくこの制度の民主的な性格にある」彼は考え考え話した。「市井の人々が誰でも、いつ何時でも、客人という至高の地位にのぼれるのだ。つまりこのかりそめの神格化への道は、いつでも、誰にでも開かれている。 大いなる事象にもどこか不完全なところがあるけれど、だからといってその価値が貶められるわけではなく、むしろわれわれの手に届きやすくなる。それが物事の理屈じゃないか2026/03/01




