内容説明
「生者とは、生の許しを受けた死者にすぎない」
二十世紀初頭のアルバニア北部の荒涼たる高地。この土地を支配するのは「カヌン」と呼ばれる、先祖伝来の終わることのない復讐の掟である。兄の血を奪い返した山岳民の若い男ジョルグは、三十日間の休戦の猶予ののちに自らの死を待つ身だった。しかし、この土地を新婚旅行で訪れた作家の妻ディアナと、馬車の窓越しにただ一度視線を合わせたことで、ふたりは命を賭してその運命を交錯させてゆく――。伝説と神話の影をまとった悲劇の時空間が立ちのぼる、忘れがたく美しい叙事詩的散文。
現代のアルバニア文学を、そして世界文学を牽引したカダレの作品は、フランス語を筆頭に四〇以上の言語に翻訳され、ノーベル文学賞の候補にたびたびその名が挙がったが、作家は二〇二四年七月に惜しまれつつ八十八歳で亡くなった。カダレの創作全体を見渡す井浦伊知郎氏(アルバニア語学・翻訳)による解説を巻末に付す。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ふゆきち
3
血の掟が壮絶で、『夢宮殿』よりもファンタジックに思えるくらいでした。一気読みです。2025/10/11
Masaaki Uesaka
1
立場が異なる複数人の視点で「血の掟」が多層的,かつ価値相対的に描かれている点が印象に残りました.独特の陰鬱とした情景が語りのベースにあり,最後を除いては淡々とした物語が進みますが,それが故に登場人物の考えていることがビビッドに伝わるのかもしれません.2025/06/12
佐藤
0
ディアナは「掟の外」の感覚を代表し、掟を相対化する人間性を浮かび上がらせる。ギョルグにとって彼女のまなざしは恋心の喚起であると同時に、「外部」を想起させる突破口である。一方、ディアナの「塔」への立入りからの瞳の漂白化、虚無化と彼女の立ち位置がかぎりなく周縁化されることが、カヌーン社会の男性的暴力構造を捉えている。2025/09/18
楢橋
0
面白すぎて一瞬で読み終わってしまった…。 アルバニアの血の掟の前提を全然知らないのに一息に読まされて終わった。2025/07/15
sugsyu
0
アルバニア北部山岳地方の、復讐の掟に翻弄される若者と、新婚旅行に都会からやってきた作家の新妻。重苦しい空気のもとで、2人の間で電光のように走る憧れ、緊張、渇望に、読者の側もまた魅了される。2025/05/23
-
- 電子書籍
- つんドル! ~人生に詰んだ元アイドルの…




