内容説明
二人の巨人と辿る戦後80年間の魂の遍歴
戦後80年間の日本人の魂の遍歴を、江藤淳・加藤典洋とともにたどる試み。小林秀雄賞の歴史家が放つ、初めての「文芸批評」。
<上野千鶴子さん推薦
「戦後批評の正嫡を嗣ぐ者が登場した。文藝評論が政治思想になる日本の最良の伝統が引き継がれた思いである。」>
国破れて小説あり
――敗けてから80年、
再生する日本が「青春期」に悶えた記憶を
老いたいま、どう受けとるのか。
文芸評論の巨人ふたりに倣いつつ
太宰治から村上龍、春樹まで、
戦後文学の最も高い尾根から見晴らす
私たちの ”魂” の現代史。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
118
江藤淳も加藤典洋も戦後文学に正面から向き合った評論家だが、やがて文学を生んだ母体である戦後史自体に引き寄せられていった。明治以来の大日本帝国が失敗に終わり、再出発した民主国家日本が無条件に正しいという批評の前提に対する疑問が生じたのか。しかし戦前生まれの江藤はGHQによる日本人洗脳史観に取り憑かれ、戦後生まれの加藤は学生運動の失敗体験から9条擁護固守派の空虚さを糾弾した。文学批評と同じ手法で歴史認識に挑み、その複雑怪奇さに自爆した感が強い。歴史家をやめたと自称する著者は、そこに自分と似たものを見つけたか。2025/06/25
Mark
32
ようやく「批評」という営みの意味が少し見えてきた気がします。高校時代に流行だからと手に取った芥川賞作品が、実は当時の社会や政治への批評を内包していたことに、今さらながら気づかされました。與那覇潤さん自身の経歴──愛知県立大学での孤立や精神的な苦悩──も、批評という行為の背景を理解するうえで示唆的でした。「いまさら昭和史」と言うなかれ。震災のような大きな出来事でさえ、語り継がれずに風化していくこの国にあって、過去をどう読み直すかという姿勢の重要性を改めて感じました。2025/08/05
hasegawa noboru
26
太宰治と江藤淳<繊細なふたりの文学者は、遠く隔たったまま、ともに自死によってその一生を終えた。このすれ違いが示すように、私たちの国ではある時代の切実な体験が、世代を超えては伝わらない。><かつて母ないし女性に喩えられた、流れた過去をただ忘却し、あるいは祈ることで赦すばかりの「歴史のない」この国の構造は、いよいよ強固になってゆくように見える。>その通り。そんな中、二人の文芸批評家を通して時々の文学作品を取り上げ精緻に分析して改めて日本の戦後史をたどり直す。こんなことがまだ可能だったのかという驚き。2025/06/22
mori-ful
5
第一部は「実質書き下ろし」とのことだが、せっかく書く機会に恵まれたのならば、全体を一つの史観を立てて、しっかりと書き下ろせばよかったのではないかという印象が拭えない。また柴田翔や庄司薫の小説なども論じられるのだが、どうも「批評の批評」といった感じで読み応えがない。歴史に節目が生まれなくなっているという指摘も面白いし、加藤典洋については魅力的に論じられているので、加藤ひとりに絞った方が良かったかも。2025/05/08
みんな本や雑誌が大好き!?
3
政治的な問題にも積極的に発言をしていた江藤淳と加藤典洋を比較考察した本。全編、本格的な比較列伝的な評伝・評論というのではなく、既述のエッセイなどを収録しつつ、書評なども含めつつ、また同様の文芸評論家であった村松剛氏なども登場させての多角的な比較分析をされていました。江藤さんの著作『閉された言語空間』や加藤さんの『敗戦後論』など、一読はしたものの、昔のことで、記憶も薄れています。そうした著作を通じての比較分析論。その可否が的確なのかどうかは判断する能力もなく、ふむふむ、なるほど……という感じで一読。2025/08/08
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