内容説明
子どもがほしい。でも病気は遺伝させたくない。
32歳の不妊治療中に発覚した遺伝性乳がん。今の日本では、子どもに病気を遺伝させない技術が使えない。なぜ――?
・父方? 母方? 遺伝性のがんがわかったとき最初に思ったこと
・遺伝性がんでも子どもがほしい。「着床前遺伝学的検査」という選択肢
・わたしが海外で着床前診断をすると決めた個人的な理由
・日本で着床前診断のルールを作る日本産科婦人科学会
・遺伝性がん患者に「生殖をめぐる自己決定権」はないの?
・遺伝性疾患がますます明らかになる時代に向き合うべき課題
遺伝性がん患者の着床前診断は本当に「命の選別」なのか?
わたしは哲学者として、答えのない問いを考え続けなければならない――。日本社会が長く目を逸らしてきた問題に勇敢に挑む。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
けんとまん1007
49
「遺伝性」「がん」の二つの言葉を考えながら読んだ。自分自身、身近に感じる言葉でもある。それを引き受けて、生きていくこと。そこで考えること。自分、家族、医療技術、制度、文化などなど、考えることは多く、かつ、広い。そもそも、自分の意志で生きることとはも考える。そこで気を付けることは、自分の立ち位置を変えて、考えてみること。2025/08/06
buuupuuu
22
遺伝性の乳がんを患った著者が、自身の経験と、そこで問題と感じた事柄について考えたことを記したエッセイ。日本では旧優生保護法への反省などから遺伝病の着床前診断へのハードルが高く、著者は海外での診断を決断する。著者が問題だとするのは、医療や生殖や研究といった場面において、患者が自身について決定したり、その経験が生かされたりするような環境になっていないという状況である。考え方や価値観、置かれた環境などは様々であり、人によって当然決断は異なる。また、その重要性が当事者の観点からでなければ分からないこともある。2025/08/21
glyco
4
若くして遺伝性乳がんと診断された著者。赤裸々だが、非常に論理的で淡々とした文体から、その時の様子、心境がストレートに伝わってきて心を揺さぶられた。感情中心に描かれやすい闘病記の中でこれほど冷静な文は珍しい。AYA世代はもちろん、そうでない世代にも参考になると思う。2025/06/15
読書熊
3
がんと命を生きること2025/06/23