内容説明
語りは未知なる情景を相手に伝えるためのものだが、一方で言葉はそれ自身次の言葉を求めて自在に繁茂していく。そのふたつが合わさったとき、小説は一文一文、一語一語、圧倒的な速度で跳躍しながら、読む者を〈現在〉の強度へと誘いつづける。2019年『する、されるユートピア』で中原中也賞、2023年『この世の喜びよ』で芥川賞に輝く、詩人・作家が放つ、言葉を読む原初的な快楽に溢れる最新短編集!
目次
移動そのもの/花瓶/市場/本汚し皿割り/軽薄/老いる彼女は家で/人々の大いなる口/通い路/旅は育ての親
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
141
井戸川 射子、4作目です。 本書は、芥川賞作家らしいバラエティに富んだ短編集でした。 オススメは、表題作『移動そのもの』&『通い路』です。 https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480805232/2025/05/02
さちこ
48
隠喩とか暗喩に時間を使いたくないと感じるのは残りの人生で集中して本が読める事が難しくなってきたからだろう。2025/05/26
tenori
32
9編からなる短編集。これは難易度が高かったなぁ。言葉の選び方、句読点の位置、文節のつながり。何かしらの社会的な問題を間接的に投げ掛けてくる比喩・暗喩。小説の体ではあるけれど、井戸川射子さんはそもそも詩人だったよなと改めて感じさせる。全体を通して散文詩的な風情で、万人受けするものではないだろう。表題作『移動そのもの』を読みきることができるか。読解力の試験のようで疲れるが、たぶん、自由に解釈すれば良いのだろう。2025/06/29
Tαkαo Sαito
24
間違いなく、井戸川さんにしか書けない文章、小説ではあるのだが、とにかく読み辛い。比喩が多すぎてあっちいったりこっちいったりさせられ、まともに理解できた気がしない。やっぱり癖が強い作家だなぁと思いつつ、好きだから買って読んでるんだけれども笑。2025/06/21
いちろく
19
奥付で著者が詩人でもあると知り納得。独特な句読点の使い方と文章の紡ぎ方に特徴を感じた短編集。短編を読んでいるのに、短編を読んでいる感じがしない。飄々として手のひらからこぼれ落ちるような、掴もうとしたらすり抜けるような感じもした内容。かと言って悪いという理由ではなく、コーヒーを飲みながら読んでいたら、いつの間にか終わっていたという印象。2025/05/16