内容説明
1996年、横浜市内で塾経営者が殺害された。
事件発生から2年、被疑者である元教え子の足取りは今もつかめていない――。
殺人犯を匿う女、窓際に追いやられながら捜査を続ける刑事、そして、父親から虐待を受けている少年。
それぞれの守りたいものが絡み合い、事態は思いもよらぬ展開を迎える。
日本推理作家協会賞受賞作。(解説)山田詠美
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
のり
102
塾の経営者が殺害された。容疑者は教え子。二年経つが犯人はまだ見つからない。捜査も縮小され情報も途絶える。一人の女・少年達の話も同時進行。これがどう絡んでくるのか…しかも殺人の動機が想像以上の衝撃だった。時代背景と国の愚かな政策。とにかく心身共に深い傷を負った者が多かったし、少年達の重荷も相当キツかった。悲劇続きで苦しくなるが、考えされる良書だった。2025/11/10
まこみん
58
1996年評判の良い塾の先生が殺害され、容疑者は特定されたが2年後も捕まっていない。小学6年のバスケの上手な少年波留は、父親から当たり屋をさせられ、日々の食事もろくに貰えない。この二人の出会いが新たな展開を招く。まだ発達障害の言葉が一般的ではなかったこの頃、精神薄弱という認識は確かにあった。阿久津自身の目線思惑記述はなく、殺人に至った理由も母親の言葉で推測される。もし元妻があれ程迄子どもを欲しがらなければ、もし母親がもう少し上手く息子に話せていれば。波留が酷い毒父から抜け出せたのは良かった。2025/08/09
佐々陽太朗(K.Tsubota)
50
「健常」と「異常」、「普通」と「特殊」の境目はどこにあるのか。そもそも「健常でないこと」や「普通でないこと」は悪なのか。そうした問いをするどく読者に突きつけてくる問題作です。世の中がこうあるべきという理想にそって器用にスイスイ生きていける人間はそういない。たいていの人は何らかの普通でないところや、足りないところを抱えた生きづらさを感じながら、なんとか踏ん張って生きているのではないか。どうすべきかを分かっていても、それができない人もいる。自分の力だけではどうしようもないこともある。そうした不条理が悲しい。2026/02/03
ま~くん
47
塾の経営者が殺害される事件が発生。容疑者と思われるれる人物の行方は掴めずに時は過ぎていった。ある事情から殺人犯を匿っている女、父親に支配されている少年、上司に疎まれながらも部下と共に犯人を追う刑事等、それぞれの立場から事件に関わりあう内に交錯する真実と闇。「真犯人はお前だ!」という内容ではないがストーリーに引き込まれた。最大の焦点は殺人の動機。現代では考えられない酷い真実に唖然とした。「それが普通だった。みんなやっていた」という言葉はとてつもなく重たい。決して繰り返してはいけない歴史の真実に驚愕した。2025/07/23
ワレモコウ
46
1996年、横浜市の塾の経営者が殺された。すぐに特定された被疑者・阿久津は、忽然と姿を消し2年が経っている。阿久津と匿う同級生の女性豊子と追う刑事。父親から虐待を受けている小学生波留と友人の桜介。それぞれの視点から描かれた話は、やがて波留が匿われている阿久津から、食料をもらうことから動き出す。阿久津の動機がわかったことで、この小説が1996年でなければいけなかったことを知る。波留と阿久津、どちらも受けていたある意味虐待…なんともやり切れない思いが残る。その後の阿久津の取り調べや、豊子の様子も気になった。2026/02/05




