内容説明
誰もが抗えないのに、なぜ老いは否定されるのか。ボーヴォワール『老い』を読み、老い衰え自立を失った人が生きる社会を構想する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ネギっ子gen
65
【人は老いる。老いて衰える。やがて依存的な存在になる。人は人の手を借りて生まれ、人の手を借りて死んでゆく。そういうものだ。そのどこが悪い】ボーヴォワールの「老い」を通して、自己嫌悪させる社会のからくりを暴く書。巻末に、引用・参考文献とボーヴォワール略年譜。「あとがき」で、<1970年に『老い』を刊行したときにはボーヴォワールが知らなかったこと、彼女の想像が及ばなかったことを21世紀に生きる私たちは知っている。それはボーヴォワールに限らずすべての個人が背負う歴史的限界であり、後から来た者の特権である>と。⇒2025/06/20
hasegawa noboru
20
今、生きている現実として「老い」がある。今日72歳の誕生日を迎えるはずだった妻は2か月前にがんで逝った。これほど身につまされて読んだ同世代上野の本はない。62歳のボーヴォワールが書いた『老い』をコロナ禍中に逢って手にしたという73歳の「わたし」(著者・上野)が解説紹介しながら考察する。<わたしが読みたかったのはこの本だったのだ><老人になるとは情けなくもいとわしい経験であることをボーヴォワールはくりかえし述べてきた>。ボーヴォワールの母の老いと死を巡っての章では、著者自身の父の死の記憶に重ねて考察する。2025/07/14
冬峰
5
全15章、取り上げたテーマはどれもでかい。ボーヴォワールとサルトルの老いや看取りから、日本の介護制度、性別によるケア担当の偏り、安楽死と「自己決定」のあやふやさなど現代の問題を扱う。とにかく若さ至上主義の現代社会は、若者たちには老いへの恐怖を与え、老人たちからは尊厳や生きる意志を奪う。そこにも性別の差は深く影響する。どうあがいても老いは来る。しかも超高齢社会。社会が老人を中心に置くぐらいのことをしないと、構成員の価値観は変わらないだろうな…。2025/08/14
アトム
3
読めるかなと思ったが、興味深く読み終えた。自らの問題だと思った。 「まだまだ若い」「年寄り扱いするな」という高齢者のイメージをポジティブに更新するアンチ・エイジズムと、「老い衰えて弱くなった」「それの何が悪い」という弱さを受容するアンチ・エイジズム。2025/08/07
skr-shower
3
祖母が「初めて80歳になるんだから」といっていました。「役に立たなきゃ生きていてはいけない」社会なんだから仕方ない。寝る食う出す、は動物としては生きているのだがなぁ…2025/07/31