内容説明
戦後のイギリスでは「衰退」が強調される一方で,福祉国家の下で「民衆的個人主義」が花開いた.民衆的アーカイヴを駆使し,戦後史の分水嶺とされる新自由主義的改革へと向かう一九七〇年代の社会が内包していた多様な可能性を,福祉や教育,ジェンダー,移民と多文化主義,宗教とモラリズム等の面から明らかにする画期的論集.
目次
序章 一九七〇年代の民衆的個人主義(長谷川貴彦)
はじめに
一、戦後史の再検討
二、一九七〇年代論
三、民衆的個人主義の諸相──本書の構成
おわりに
第1章 コミュニティ・アクションの源流──ノッティングヒルのジャン・オマリー、一九六八─七五年(長谷川貴彦)
はじめに
一、ノッティングヒル
二、コミュニティ・アクション
三、ジャン・オマリーの思想と実践
おわりに
第2章 教育政治の変容と新自由主義──ウィリアム・ティンデール校事件(一九七五年)を再訪する(岩下 誠)
はじめに
一、イギリス教育改革はどのように語られてきたか
二、ウィリアム・ティンデール校事件
三、背景とアクター
四、対立
おわりに
第3章 ライフヒストリーからみたウーマンリブ運動──オルタナティヴな女性コミュニティの希求(梅垣千尋)
はじめに
一、イギリスのウーマンリブ運動
二、世代論的にみたウーマンリブ運動
三、四人の若き歴史家たち──家庭とは別の居場所を求めて
おわりに
第4章 ゲイ解放戦線の運動経験とそのレガシー──「サッチャリズム」ナラティヴ再考のために(市橋秀夫)
はじめに
一、最初の公然デモ
二、GLFの運動基盤──誰が参集したのか
三、GLFの活動の核心──当事者直接行動と街頭劇グループ
四、GLFの運動の「衰退」
五、「ゲイ・リベレーション」から「ゲイ・アクティヴィズム」へ
おわりに──GLF/カウンターカルチャーとサッチャリズム
第5章 「危機の時代」の北アイルランド問題──バーミンガム・アイリッシュの経験から(尹慧瑛)
はじめに
一、一九七〇年代の北アイルランドとブリテン
二、「内部の他者」としての在英アイリッシュ
三、バーミンガム・アイリッシュの経験
おわりに
第6章 「踊りの場」の人種差別(浜井祐三子)
はじめに
一、歴史的背景
二、「踊りの場」での差別 一九六八─七六年
三、人種と民衆的個人主義──メッカを事例として
おわりに
終章 「許容する社会」、モラルの再興、マーガレット・サッチャー(小関 隆)
はじめに──「許容する社会の巻き戻し」
一、一九六〇年代との接続
二、「許容」の時代
三、一九七〇年代の反「許容」
四、サッチャリズムとモラルの再興
おわりに──サッチャーの敗北?
あとがき
感想・レビュー
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ケイ
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