内容説明
西洋なんて存在しなかった?──近代知の起源とされる「啓蒙思想」は,ヨーロッパ貴族のサロンではなく,じつはマダガスカルの海賊と女性たちの社会実験によって創造されたのではないか.海賊王国の知湧き心躍る「本当の」歴史をたどり直し,自由,国家,民主主義をめぐる無数の常識をくつがえす.グレーバー生前最後の著作.
目次
序文 (とびきり)ラディカルな啓蒙主義
第一部 マダガスカル北東部の海賊と偽王
海賊がマダガスカルにやってきた
掠奪品の問題
サントマリーの実体経済
実在のリバタリアⅠ──アンブナヴラ
さらなる偽王,ジョン・プランタン
年代にかんするいくつかの問題
第二部 マダガスカル人の目に映った海賊の来訪
アブラハムの子孫たちに抗する性革命?
政治のコマとしての女性
女商人と魔法のお守り
家内の諸事象
軍事的権力と性的権力の対立について
第三部 海賊の啓蒙
発端の状況
最初の挑戦
大カバリ
誓約儀礼
王になったラツィミラフ
英雄たちの戦い
宮廷と王国,そしてザナマラタの台頭
結論 実在のリバタリアⅡ──ベツィミサラカ連合
地図
海賊と啓蒙の時系列
訳者あとがき
文献注
参考文献
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
チェアー
6
要はマダガスカルの歴史は西洋的な植民目線で描かれているが、本当は現地のイデオロギーと外部から入ってきた西洋のイデオロギーが混濁してできているもので、そう簡単に解き明かせるものではないと。 西洋の植民者の目線で語られる歴史は本当の歴史ではないということを知ったようだ。わからんけど。 2025/06/30
Junichi Watanabe
3
#読了。17~18世紀のマダガスカルには民主主義が存在した。当時の欧州では自由で平等な海賊王国「リバタリア」の噂があった。実際には棲みついた海賊の息子達と先住民の疑似王国があった。平等主義、非奴隷貿易、対話重視、権力の集中を嫌っての戦争、そして諸々の拘束を脱ぎ捨てたい女性達等諸力が充満した社会があったとされる。マダガスカルは馴染みの薄い国だが、地図をみれば喜望峰周りでインドに向かう船にはうってつけの中継地だ。世界にはまだまだ知らない歴史が存在する。本文はかなり読みずらいので解説を先に読むと理解が進みます。2025/06/04
Ryo Sogawa
2
マダガスカルの17世紀頃の歴史。海賊を中心とした外来の人々と現地人が混合しながら、当時としては実験的ともいえる国と社会ができた…という感じの話。2025/07/30
Go Extreme
2
https://claude.ai/public/artifacts/263efc3d-6ff9-4664-bb45-cd4104f3f5242025/06/07
中村蓮
2
『民主主義の非西洋起源について』の詳細版。 ノア・ハラリあたりの世界史(要するに今あっていることを正当化するだけの後付け説明)より知的刺激と希望のあるものだけれど、マダガスカルの擬似王国にしても、オキュパイウォールストリートにしても、システムの転覆という祝祭的空間であって長続きしていないのは残念です。2025/05/29