内容説明
観光という近代的営為を通じて,満洲における「帝国の物語」はどのように紡がれ,満洲国崩壊後の「失われた帝国への郷愁」はどのように醸成されたのか.観光が生み出した欲望と記憶の背後に潜む政治的意図を解明し,個人と国家,そしてその間に立つ満鉄や在満県人会などさまざまな主体の思惑が絡み合う複雑な構造を明らかにする.
目次
序章
一 本書の主題
二 考察の舞台
三 先行研究の検討
四 分析視座と分析概念
五 用語の定義
六 方法と構成
第1章 戦地から旅行地へ──かきたてられる旅行欲
一 日露戦争の前夜までの満洲旅行
二 日露戦争中の観戦旅行と戦地視察
三 戦勝後の「利源調査」ブーム
四 「観戦鉄道」という見世物
五 小結
第2章 満洲観光ツアーの誕生──「ロセッタ丸満韓巡遊」(一九〇六年夏)
一 メディア・イベントとしての満韓巡遊
二 旅行者の構成
三 軍への依存
四 在満有力団体の歓迎
五 二つの異質な「他者」
六 小結
第3章 満洲修学旅行の誕生──全国規模の「満韓修学旅行」(一九〇六年夏)
一 満洲修学旅行への助走
二 発案の経緯
三 公表から出発まで
四 陸軍指揮下の「行軍旅行」
五 在満県人と校友による歓迎会
六 「他者」の選別と排除
七 旅行の波及効果
八 小結
第4章 満洲観光の「代理ホスト」と観光空間の形成
一 観光事業の担い手たち
二 在満県人会
三 観光空間の形成
四 小結
第5章 〈憧れの的〉としての満洲──学生たちの旅路
一 満鉄の優遇策
二 全国学校長会議の誘致
三 学校教育の一環として
四 校友会の役割
五 「憧れ」の醸成
六 警戒する中国社会
七 小結
第6章 日本旅行会主催の満洲観光ツアー──消費文化の一環として
一 満洲観光ツアーの機運
二 日本旅行会、満鮮をゆく
三 さまざまな集客方法
四 満洲観光ツアーの参加者
五 小結
第7章 「楽土」を走る観光バス──満洲国時代の都市観光と帝国のドラマトゥルギー
一 「楽土」の上演
二 「観光楽土」としての満洲
三 「満人」向けの観光バス
四 小結
第8章 観光・民俗・権力──民俗行事「娘々祭」の変容
一 日露戦争から満洲事変まで
二 満洲国時代の「娘々祭工作」
三 小結
第9章 ポストコロニアルな「再会」──満洲観光の戦後史
一 「再会」までの「空白」と「時差」
二 記憶の拮抗
三 記憶の共振
四 記憶の感染
五 記憶の流用
六 小結
終章
一 「帝国の舞台装置」──観光を生み出す政治とポスト帝国の記憶再編
二 「まなざしの交響曲」──観光が生み出す政治と経験の多層性
三 「近代の万華鏡」──帝国、近代、観光の相互浸透
四 「経験の交差点」──重なりあう経験としての満洲観光
注
あとがき
キーワード
感想・レビュー
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