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内容説明
中欧のチェコに生まれたミラン・クンデラは20世紀後半の歴史と文学を「中欧」という視点から体現した作家。2023年の没後、作品の再検証を試みる機運が高まるなか、クンデラが生涯をかけて探求した概念「中欧」と「小民族」を巡る両論考は作家の世界観を理解するための貴重な証言と言える。また、主体的な関与がないまま自国の運命が一変するという「小民族」の置かれている状況は、現在のウクライナやパレスチナの情勢にも援用可能な視点であり、その警鐘は鳴りやむどころか世界中に響き渡っている。
目次
文学と小民族
誘拐された西欧、あるいは中欧の悲劇
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
旅するランナー
179
好きな作家を3人挙げるなら、ヘミングウェイ、村上春樹、そしてミラン·クンデラになる。そのクンデラによる1967年の演説と1983年の評論である。彼が破壊者と呼ぶ検閲を行うイデオロギー信奉者に対する挑戦であり、権力の手から文化の解放を試みる動きとなっている。小民族という概念を中心においた中欧論を今読むと、文化そのものがアイデンティティの聖域であることが良く理解できる。まさに存在の耐えられない曖昧さである。2025/06/13
アキ
89
2023年に亡命先のパリで94歳で亡くなったチェコスロバキア共和国生まれの作家ミラン・クンデラ。表題の「誘拐された西欧、あるいは中欧の悲劇」は、1983年フランスの「ル・デパ」誌に発表したもの。本新書は、その前の1967年に報告された論説「文学と小民族」を載せている。チェコスロバキアにソ連軍が侵攻する「プラハの春」は1968年であり、周辺のポーランド、ハンガリーなどを含んだ中欧とはロシアより西欧に近い文化圏であるが、小民族の存続の困難さを憂うもの。1984年「存在の耐えられない軽さ」を上梓後、亡命に至る。2025/06/29
どんぐり
85
チェコの作家であり、かつフランスの作家でもあったクンデラの「中欧論」。1967年の作家大会での「文学と小民族」と題した演説、1983年に発表した表題の論考に解説が付いた新書。文化では西欧に属していながら、東欧圏の一部としてしか見なされていなかったポ-ランド、ハンガリー、チェコスロヴァキアなどの国々。西側のドイツ、東側のロシアに囲まれた小民族の歴史と文化の流れを「誘拐された西欧、あるいは中欧の悲劇」から論じる。いま読んでも、その論調は旧さを感じない。2025/10/06
よっち
26
『存在の耐えられない軽さ』の著者ミラン・クンデラが生涯をかけた「中欧」と「小民族」を巡る両論考から作家の世界観を理解する1冊。揺籃期からローマ教会に基盤を置くヨーロッパの一部だったはずのハンガリーやチェコ、ポーランド。しかし東西ローマ帝国に象徴されるように常に二分されそれぞれ独自に発展を遂げてきた経緯、また主体的な関与がないまま自国の運命が一変する「小民族」の置かれる状況、常にロシアなどにアイデンティティを脅かされてきたこともあって、西欧側とは意識的にだいぶ隔てられている存在なのだなと実感させられました。2025/05/16
mtht
8
読了。内容を足早にまとめると、クンデラが紡ぎ出す「中欧の運命と悲哀」についてのテクストであった。「文学と小民族」と、「誘拐された西欧、あるちは中欧の悲劇」の2編とその解説・序文載っていた。歴史的背景からヨーロッパ精神=西欧、と東欧=ロシア精神が比較された。その根が古代ギリシャにあることを参照しつつ、宗教的・文化的・歴史的・政治的背景からそれらを追っていった。そしてその中で客体としてしか存在し得なかったチェコ人及びポーランド、ハンガリーなどの中欧の小民族の運命について語られていた。2025/06/29




