内容説明
高層ビル間にピンと張ったロープの上を、長く重いバランス棒だけを抱えて一歩一歩進む綱渡り師たち――。地上の観客が息を詰めて見上げるなか、空中で歩いたり、座ったり、寝転んだりを繰り返す。悲鳴をあげる観客。彼ら/彼女らはなぜ挑戦するのか。どのようにして墜落の恐怖を超えられるのか。
ナイアガラの滝の上を走る1本のワイヤー。綱を感じる足裏、皮膚が感じる湿気、微風をいち早く察知する。それはまるで身体を世界へと拡張させているかのようだ。SNSの時代には考えられない身体の極北がそこにある。
大の男だけではない。8歳の少年や15歳の少女、サーカス芸人の女性、何世代にもわたり延々と危険な技を続ける綱渡り一族。死をも恐れない老若男女が「より高く」「より長く」「より魅力的に」綱を渡る。「アクロバット」を「アート」に転換する現代の高所綱渡り師たちもいる。
生の実感、死の恐怖、生死の境界の究極のポエジーがそこにある。高所綱渡りに挑む勇者たちの、緊張感みなぎる生きざまを丹念に描く渾身のドキュメンタリー。
目次
第1章 ロープの上の途方もない可能性
1 ロープ上で観客を魅了する幼女
2 代役がセンセーショナルな人気を博す
3 婚外子を出産、そしてナポレオンと出会う
4 土砂降りのなかでロープを……――ロンドンっ子の驚きと称賛が止まらない
5 「マダム」と「マドモワゼル」、二人のサキが出現
6 満身創痍で芸を続ける――壮絶なる晩年
第2章 ブロンディン――綱渡りの代名詞になった巨人
1 天才少年、波瀾万丈の日々
2 歴史に残る「ブロンディン」はアメリカで誕生した
3 ついにその日がやってきた――ナイアガラに挑む
4 ナイアガラでの前代未聞の行為の数々
5 ダブリンで、作業スタッフの事故死を経験する
6 母国フランスに錦を飾れないのは「重婚」が原因か
7 オーストラリアでも衰えを知らない技を見せる
8 六十代半ばでニューヨーク公演、そしてロンドンのついのすみかへ
第3章 「ブロンディン」を名乗り、ブロンディンに挑む
1 自他ともに認める「オーストラリアのブロンディン」とは
2 少年を巻き込む二つの悲劇
3 「オーストラリアのブロンディン」を名乗る男の無鉄砲なパフォーマンス
4 ナイアガラで生まれた男のナイアガラ挑戦
第4章 体でジェンダーイメージをくつがえす女たち
1 サーカスが、女が自由を手にできる数少ない領域だった
2 セリーナ・ヤング――最初の「女ブロンディン」
3 セリーナ・パーウェル、またの名をマダム・ジュヌヴィエーヴの痛ましい墜落死
4 ナイアガラを渡った歴史上ただ一人の女性
第5章 当代最高の綱渡り師だった男の数奇な行路
1 桁外れの情熱に突き動かされた人生
2 ブロンディンに真っ向勝負を挑む
3 「ストロングマン」の桁外れの身体能力
4 初めて公衆の面前で綱渡りを披露する
5 バランス棒なし、素手でワイヤーを歩く
6 ナイアガラ――運命の日がきた
7 よきパートナーに起こった悲劇
8 放浪、そしてふたたび挑戦への情熱に駆り立てられる
9 綱渡り師から本格的な興行師に
10 業界を震撼させるルルは、少年なのか少女なのか
11 アフリカの砂漠を縦断する大冒険、そして晩年
第6章 勇気と実力で時代を走り抜けたザゼル
1 天性の才能と特訓による無二のアンファン・テリーブル
2 ザゼル誕生前夜
3 十五歳の少女の常識を超えた芸とは……
4 天才少女にも事故は起きる
5 それでも危険な人間大砲を続ける
6 大いなる転機――イギリスからアメリカへ、そして結婚
7 度重なる事故を生き延びる
8 伝説の女性を再起不能にした最後の事故
第7章 栄光と悲惨――綱渡り一族の壮大なる歴史
1 語り伝えられる墜落事故
2 伝説の綱渡り師カール・ワレンダの起源
3 サーカス団が馬車で移動していた時代
4 女性関係
5 ヘレン・クライス――願ってもない新星が現れる
6 先妻マーサと後妻ヘレン
7 大サーカス団専属の獣医師を務めた男
8 夫と父の墜落死を乗り越える――頭領の娘ジェニー・ワレンダ
9 八十代でアクロバットを見せるカーラ・ワレンダの華々しい生涯
ほか
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kawa
チェアー
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