高所綱渡り師たち - 残酷のユートピアを生きる

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高所綱渡り師たち - 残酷のユートピアを生きる

  • 著者名:石井達朗
  • 価格 ¥3,740(本体¥3,400)
  • 青弓社(2025/04発売)
  • ポイント 34pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784787274731

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内容説明

高層ビル間にピンと張ったロープの上を、長く重いバランス棒だけを抱えて一歩一歩進む綱渡り師たち――。地上の観客が息を詰めて見上げるなか、空中で歩いたり、座ったり、寝転んだりを繰り返す。悲鳴をあげる観客。彼ら/彼女らはなぜ挑戦するのか。どのようにして墜落の恐怖を超えられるのか。

ナイアガラの滝の上を走る1本のワイヤー。綱を感じる足裏、皮膚が感じる湿気、微風をいち早く察知する。それはまるで身体を世界へと拡張させているかのようだ。SNSの時代には考えられない身体の極北がそこにある。

大の男だけではない。8歳の少年や15歳の少女、サーカス芸人の女性、何世代にもわたり延々と危険な技を続ける綱渡り一族。死をも恐れない老若男女が「より高く」「より長く」「より魅力的に」綱を渡る。「アクロバット」を「アート」に転換する現代の高所綱渡り師たちもいる。

生の実感、死の恐怖、生死の境界の究極のポエジーがそこにある。高所綱渡りに挑む勇者たちの、緊張感みなぎる生きざまを丹念に描く渾身のドキュメンタリー。

目次

第1章 ロープの上の途方もない可能性
 1 ロープ上で観客を魅了する幼女
 2 代役がセンセーショナルな人気を博す
 3 婚外子を出産、そしてナポレオンと出会う
 4 土砂降りのなかでロープを……――ロンドンっ子の驚きと称賛が止まらない
 5 「マダム」と「マドモワゼル」、二人のサキが出現
 6 満身創痍で芸を続ける――壮絶なる晩年

第2章 ブロンディン――綱渡りの代名詞になった巨人
 1 天才少年、波瀾万丈の日々
 2 歴史に残る「ブロンディン」はアメリカで誕生した
 3 ついにその日がやってきた――ナイアガラに挑む
 4 ナイアガラでの前代未聞の行為の数々
 5 ダブリンで、作業スタッフの事故死を経験する
 6 母国フランスに錦を飾れないのは「重婚」が原因か
 7 オーストラリアでも衰えを知らない技を見せる
 8 六十代半ばでニューヨーク公演、そしてロンドンのついのすみかへ

第3章 「ブロンディン」を名乗り、ブロンディンに挑む
 1 自他ともに認める「オーストラリアのブロンディン」とは
 2 少年を巻き込む二つの悲劇
 3 「オーストラリアのブロンディン」を名乗る男の無鉄砲なパフォーマンス
 4 ナイアガラで生まれた男のナイアガラ挑戦

第4章 体でジェンダーイメージをくつがえす女たち
 1 サーカスが、女が自由を手にできる数少ない領域だった
 2 セリーナ・ヤング――最初の「女ブロンディン」
 3 セリーナ・パーウェル、またの名をマダム・ジュヌヴィエーヴの痛ましい墜落死
 4 ナイアガラを渡った歴史上ただ一人の女性

第5章 当代最高の綱渡り師だった男の数奇な行路
 1 桁外れの情熱に突き動かされた人生
 2 ブロンディンに真っ向勝負を挑む
 3 「ストロングマン」の桁外れの身体能力
 4 初めて公衆の面前で綱渡りを披露する
 5 バランス棒なし、素手でワイヤーを歩く
 6 ナイアガラ――運命の日がきた
 7 よきパートナーに起こった悲劇
 8 放浪、そしてふたたび挑戦への情熱に駆り立てられる
 9 綱渡り師から本格的な興行師に
 10 業界を震撼させるルルは、少年なのか少女なのか
 11 アフリカの砂漠を縦断する大冒険、そして晩年

第6章 勇気と実力で時代を走り抜けたザゼル
 1 天性の才能と特訓による無二のアンファン・テリーブル
 2 ザゼル誕生前夜
 3 十五歳の少女の常識を超えた芸とは……
 4 天才少女にも事故は起きる
 5 それでも危険な人間大砲を続ける
 6 大いなる転機――イギリスからアメリカへ、そして結婚
 7 度重なる事故を生き延びる
 8 伝説の女性を再起不能にした最後の事故

第7章 栄光と悲惨――綱渡り一族の壮大なる歴史
 1 語り伝えられる墜落事故
 2 伝説の綱渡り師カール・ワレンダの起源
 3 サーカス団が馬車で移動していた時代
 4 女性関係
 5 ヘレン・クライス――願ってもない新星が現れる
 6 先妻マーサと後妻ヘレン
 7 大サーカス団専属の獣医師を務めた男
 8 夫と父の墜落死を乗り越える――頭領の娘ジェニー・ワレンダ
 9 八十代でアクロバットを見せるカーラ・ワレンダの華々しい生涯
ほか

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

kawa

26
思わぬ拾い本を堪能。ナイアガラやグランドキャニオン、はてはNY貿易センタービルに安全ネット・ハーネス無し綱渡りの命知らず冒険家列伝。ブロンディン、ファリール、ザゼル・・・、知らなかった人々の所業が次々。「七人ピラミッド」なる妙技失敗で、2人亡くなり1人半身不随のワレンダー一族。世間常識からは、再びは無いと思うのだが果敢に「八人ピラミッド」挑戦に絶句。500回以上逮捕豪語のフィリップ・ティプの貿易センタービル違法綱渡りも、一体どのような準備から始まっての凄まじ所業の一端が明らかに(ノンフィク映像ありだと)。2025/07/12

チェアー

3
本当に綱渡りは無謀なのかと考える。鍛錬し、成功すると確信して臨む綱渡りは本当に無謀なのかと。それは失うものが生命(もしくは、健全な肉体)という「賭け金」なら大きさから無謀と判断しているのではないか。2025/06/25

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