内容説明
ピューリッツァー賞受賞作。ヨルダン川西岸地区で園児たちの乗ったバスが燃えた。アーベドは息子を探して奔走する。占領とは何かを問う悲劇のノンフィクション。
目次
登場人物プロローグ/第一章 三つの結婚式/第二章 ふたつの火/第三章 多数傷病者事故/第四章 壁/第五章 三つの葬式/エピローグ/謝辞/訳者あとがき/出典/用語索引/地名索引
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
どんぐり
91
2012年、ヨルダン川西岸地区でスクールバスがセミトレーラーに衝突した多数傷病者事故。炎上したバスの中で児童6人と教師1名が焼け死んだ。ユダヤ人とパレスチナ人の共同体がすぐ隣り合う場所にある検問所、路上封鎖物、バイパス、フェンスと分離壁。パレスチナ・イスラエル問題の壁が、助かるはずの命を救えずに死に追いやる。これは事故関係者のその日の行動をパレスチナ問題と併せて描くノンフィクションである。パレスチナ人の子どもが道で石を投げたなら、イスラエル軍はすぐにその場に現れる。→2025/03/05
ケンイチミズバ
76
検問所の兵士らは救助に加わることもできたはず。が、横転し火を噴いたのはパレスチナ人の幼稚園バスだった。占領地でパレスチナ人を監視するイスラエル兵の役割に人命救助は含まれない。園児らが焼け死ぬのをただ見ていた。イスラエルのやり過ぎに世界が不快感を覚えたことの表れなのかパレスチナ関連の書籍がつつましくも目立つところに置かれている。読むのではなかったと多くの人は思う作品。現実はさらに眼を背けたくなる。読むにも体力気力が必要でそこまでして遠い地で起きている事にシンパシーを寄せるより無関心でいてもだれも責めない。2025/03/12
pohcho
64
2012年ヨルダン川西岸地区で起きた事故を描いたノンフィクション。遠足に出かけた幼稚園のスクールバスとセミトレーラーが衝突し炎上。パレスチナ人の子ども6名と教師1名が死亡した。アーベド・サラーマの息子がバスに乗っていたが、アーベドの半生から始まって次々にいろんな人が出てきてかなりわかりにくい構成。でも読み進めるうちに、パレスチナの人々がいかにひどい状況に置かれているのかが浮かび上がる。一番怖かったのは、事故を知ったイスラエルの若者たちの反応だった。本当に狂っているとしか思えないがだからこその今なんだろう。2025/04/01
藤月はな(灯れ松明の火)
54
2012年、イスラエルによる壁で阻まれるヨルダン川西岸地区にてピクニックへ行こうとしていたパレスチナの幼稚園バスが追突衝突され、横転、炎上した。子供達が取り残され、燃え盛るバスをイスラエルの検問所はただ、助けず、見ていただけだった。「イスラエルの子供達なら助けるのにパレスチナの子供達だったから助けなかった!」と真実を叫んだ人がイスラエル軍から暴行されたり、息子のピクニック行を許可した為にナンシーが夫家族から蔑ろにされる理不尽など、惨い。そしてエピローグでのこの事件を更に喜んだイスラエルの若者がいた事に暗澹2025/03/29
TATA
43
結局私達がパレスチナ紛争を伝えるニュースを見てもその一部さえ理解できていないんだということ。パレスチナでの生活がどんなものかなんて想像さえできていなかった。私達の今の普通の生活なんて望むべくもなく辛く厳しい毎日。憎悪からは憎悪しか生まれないんだ。2025/04/09