内容説明
海辺の温泉街で旅館を営む旧友の坂口が逮捕された。街一帯を牛耳っている下山観光の事務所で刃物を振り回したのだという。坂口は決して人に刃物をむけるようなやつじゃない。真相を探るために坂口の親友である新藤剛はこの街にやってきた。下山観光と坂口の間に何があったのか。坂口を留置場から出そうと、新藤は体を張って動き出す……。痛み、傷つき、彼らは命がけで己を生きる。血よりも濃い男の友情、生き様に熱く震える、語り継がれる北方文学の傑作が、装いも新たに登場。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
そる
172
昭和に刊行されてますが最近復刻版で発売されたようで、書店で見て表紙買い。文章リズミカルでテンポ良く読めて止まらない。ザ・昭和なハードボイルドで登場人物が7割型タバコ吸って、ケンカとヤクザと銃と裏社会が絡んできて、映画化だな、って感じです。その昭和テイストも含めてとにかくかっこいい。最後主人公とその親友の心情はちょっと謎だけどそれもハードボイルドなんでしょうね。「「なんでこだわる。なんでそう坂口とあいたがるんだ。坂口は会いたがってないってのに」「昔から、そんなやつだった。会いたくても、そうは言わないんだ」」2025/05/02
hanako20220810
3
竜太くん大丈夫?令和の子育て感覚でいると、ラストシーンが心配になるけど、少年にも遠慮しないのが北方ワールド。北方世界の男の子は小さい男なだけだから、良い男になるんだろうけど。新藤さん、あんな大立ち回りしてやっと顔を合わせた友人との再会シーンの書き方が、北方節すぎた。読んでるこっちは、あの文字数だけで納得しちゃった。北方本の復刻販売万歳。読んで無かったハードボイルド読めて面白かった。2025/09/10
ヤエガシ
2
過去の残酷な因縁の詳細とか、主人公の友人の病状とかをクドクド書かず、あえて匂わせるだけにとどめていて、そこに作者の美意識というか作品の品性を感じました。 嗜虐性とか悲劇性をあえて隠し、言動から登場人物の人間性をイメージさせて、「この人物がこれだけの行動をとるのだから、きっとこういうことなんだろう」と読者に、行間を読ませる。 「走れるだけ、走れ。それで血を吐いて倒れれば、負けということだ。負けたところで、恥じることはない。血を吐いて倒れるまで走れば、恥じることはない。」という主人公のセリフも良かった。2025/08/31