内容説明
版元ドットコム「版元日誌」(https://www.hanmoto.com/nisshi1118)で大反響を巻き起こした、『USO』誌編集長にしてrn press社主・野口理恵の初著作。
「私は母と兄を自死で亡くしている。父も十代で他界し、祖父母はもういない。一度結婚をして息子がいるが親権は離婚した元夫がもっている。私はおそらく多くの人がもつ家族観をもっていない。おそらくこれからももつことはできない。」「顔の見えない読者が、ひとりでも、ふたりでも、生きたいと強く思えるような本づくりを(私は)したい」(本文より)
暮らしレーベル第7弾。
【著者】
野口理恵
一九八一年、埼玉県熊谷市生まれ。文芸誌「USO」編集長。rn pressの編集者として書籍を制作する傍らで、文筆活動を行う。健康体。
目次
昼間に風呂に入る
家族
生きる力が湧いてくる
酔う
大切なあなた
祝祭の日々
USO かわいいあの子
優しい兄
テニスが下手な女の子
夜、空を見上げる
USO Nの起源
USO 見えないアングル
正月嫌い
朝、虎ノ門で仕事を終える
遠くに住んでいるあの子
自由の証
今日も吉祥寺のルノアールで
太く、長く、濃く
しあわせの、となりにあるもの
それよりぼくと踊りませんか
発声のすばらしさ
中華料理とお節介
居場所をくれてありがとう
物語のはじまりには、ちょうどいいのさ
あなたと私のあいだにあるもの
USO Nのお葬式
あとがき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
Kanako
13
すごく力のあるエッセイだった。冒頭の温かい家族の思い出を描いた文章から一転、著者の家族に起こった悲しくて重い出来事が描かれる。著者の人生が壮絶であることは間違いないが、それでいて、パワーもおかしみも切なさもあって、読んでいると不思議と癒される。人間のダメなところやでこぼこな部分をそのままに描いていて、きれいにまとめようとせず、清濁併せ飲んで生きていこうという足取りが感じられる文章だった。2025/11/15
林檎
9
幼少の頃から身近な人間達の剥き出しの姿を見て育ち、人の死や別れが常に側にあった著者のこれまでの人生が書かれている。それでも読んでいて打ちのめされるような絶望感ではなく『良いも悪いもまんま丸ごと全部受け入れて生きていく潔い覚悟』が感じられて、生きる事を考えさせられような不思議な感覚は『生きる力が湧いてくる』というタイトルに繋がるのかもしれない。2025/05/17
nekomurice
8
「私は、いつ、どこにいても、なにを食べていても、私ばかりがこんなにいい思いをしていいのかなあと考える。」大切な人にこんな思いをさせてはいけないなと。しっかり生きていかなくてはと思わされる。エッセイの間にある「USOかわいいあの子」のお話がとても辛い。2025/06/10
チェアー
6
自分の足元を踏み固めるような文章が続く。なんだか目が離せない。きつい、痛い言葉であっても、筆者は笑い、大声で語っている。その裏の感情を想像してしまう。この人は一生懸命仕事をしているようでいても、その裏側ではいつも泣いているのではないか。 2025/09/23
夕暮
6
文芸誌「USO」編集長、野口理恵さんのエッセイ。十五歳で母親を自死で亡くし、その後父親を病気で、さらに兄も自死でなくした野口さんは、結婚出産を経て、離婚、子どもの親権は元夫がもち、編集者としてひとり出版社でバリバリ働いている。 雑に要約してしまうとめちゃくちゃ壮絶だが、野口理恵さんの自己肯定感の高さと、仕事への熱意?が、この一冊を全く重苦しくしていない。時に辛辣すぎる見解もありつつ、承認欲求を満足させるためのさらけ出しとは思えなかった。「Nの葬式」にもあるように、自己を俯瞰で見られる人なんだと思う。2025/08/11




