内容説明
巨大なアンテナ設備の近くにある家で、幼い娘を育てる父親が体験する数々の異変(「アンテナ」)、なにげなく漂着物を砂浜に埋めたことで老夫婦が巻きこまれる思わぬ事態(表題作)、中年になり帰郷した男が振り返る、キャンプ場で姉と過ごした子供時代のあれこれ(「海辺のうた」)……。海沿いに点在する無人の家、大潮の日にだけ行ける入り江、漂着物が絶えず流れ着く砂浜、さびれたキャンプ場……英国コーンウォールの海辺に見られるありふれた場所では、ふとしたはずみに幻めいた現象が起こり、もの哀しくも美しい物語がいくつも紡がれる。現実と幻想の境目で生まれた、いずれも忘れがたき13の短編を収録。サマセット・モーム賞受賞作『潜水鐘に乗って』に続く、珠玉の第二短編集。/【目次】空っぽの家/アンテナ/すぐの未来に/帰郷/出て行け/ソルトハウス/漂着物、または見捨てられたものたち/波乗り/嵐の日/死者たちの年/ケーブル/海辺のうた/漂流するクラゲたち/謝辞/解説=石井千湖
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
R
41
物悲しい、短編集。言い表せない、漠然とした不安とは異なる不穏さ、寂しさ、悲しさが染み伝わるような内容で、かなり難しいと感じた。話しとしては、ちょっとした冒険小説めいた雰囲気もあるのだけど、底知れぬ畏れが漂うような感じで、日常といえてしまいそうな情景を描いているのだけど、何か怖いような、寂しいようなという空気が常に付きまとうようだった。原文で読むともっと違う感想になる詩のような文章なのかもと思う。2025/09/04
ぽてち
31
デビュー作の『潜水鐘に乗って』(未読)でサマセット・モーム賞とホリヤー・アン・ゴフ賞を受賞した作家の第2短篇集。13篇を収録している。うーん、これは苦手なタイプの作品集だった(^_^;)。映像的ではあるのだが、そこからなにを感じればいいのかがわからない。ただ文章を愉しめばいいのかとも思うし実際それで愉しめたけれど、中には内容がまったく理解できない作品もあった。解説によれば、出身地のイギリス・コーンウォールを舞台にしているそうだが、そもそもこの地についての知識が皆無なので、理解の助けにはならなかった。2025/06/21
おだまん
12
寄せては返す波のように、静かに、時には激しい余韻。前作に負けず劣らずそこはかとない寂しさと孤独の漂う雰囲気をゆったりと味わえました。2025/06/18
RST
4
「ソルトハウス」の思春期に差し掛かった女子感がよかった。友達が急に遠くに行っちゃって置いてきぼりになったような気持ち。歩いても歩いても永遠に家に帰れない話や行く先々で住処を追われる話など本当に現実に存在しているのか、当人だけが死んでいることに気付いていなくて彷徨っているのかと思われるような孤独感がある。2025/08/16
19番ホール
4
夏は観光客で賑わう一方、冬は厳しい自然が押し寄せるコーンウォール。たのしげな喧騒が遠くから聞こえてくる中、ひとり夜の浜辺を歩く気分を味わえる短編集。行間にたたまれた過去をああだこうだ想像するのが楽しかった。2025/06/20
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