内容説明
巨大なアンテナ設備の近くにある家で、幼い娘を育てる父親が体験する数々の異変(「アンテナ」)、なにげなく漂着物を砂浜に埋めたことで老夫婦が巻きこまれる思わぬ事態(表題作)、中年になり帰郷した男が振り返る、キャンプ場で姉と過ごした子供時代のあれこれ(「海辺のうた」)……。海沿いに点在する無人の家、大潮の日にだけ行ける入り江、漂着物が絶えず流れ着く砂浜、さびれたキャンプ場……英国コーンウォールの海辺に見られるありふれた場所では、ふとしたはずみに幻めいた現象が起こり、もの哀しくも美しい物語がいくつも紡がれる。現実と幻想の境目で生まれた、いずれも忘れがたき13の短編を収録。サマセット・モーム賞受賞作『潜水鐘に乗って』に続く、珠玉の第二短編集。/【目次】空っぽの家/アンテナ/すぐの未来に/帰郷/出て行け/ソルトハウス/漂着物、または見捨てられたものたち/波乗り/嵐の日/死者たちの年/ケーブル/海辺のうた/漂流するクラゲたち/謝辞/解説=石井千湖
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
R
48
物悲しい、短編集。言い表せない、漠然とした不安とは異なる不穏さ、寂しさ、悲しさが染み伝わるような内容で、かなり難しいと感じた。話しとしては、ちょっとした冒険小説めいた雰囲気もあるのだけど、底知れぬ畏れが漂うような感じで、日常といえてしまいそうな情景を描いているのだけど、何か怖いような、寂しいようなという空気が常に付きまとうようだった。原文で読むともっと違う感想になる詩のような文章なのかもと思う。2025/09/04
キムチ
43
コーンウォール…英最南西エリア。世界遺産にもなっており断崖の景勝と鉱山産業が独特の空気。寄せては返す波のように日々の出来事が人のこころにさざ波を。「アンテナ」音、気配…現実と幻想が撚れる。作品は全体的に無音無臭だったり「波乗り」きみと父親、俯瞰している語り手。その世界観ストレスフル。「死者たちの年」は筆者ながらの心髄の語りに思えた。総括してわたし的に短編だから読めたのであり長編ではきつい。現地に旅したのが10余年前、「あの景色」だから、この叙情が流れるんだと心底響く。でも嫌いじゃない2026/02/25
りつこ
33
全体を通して寂寥感に満ちていて自分自身も心もとなくなるような短編集だった。1作目の「空っぽの家」からして主人公はもしかして死んでいるのか?と思うような会話のちぐはぐさや存在感のなさがあって、それは本人に他の人に置いて行かれてしまうという寂しさがあるせいなのか? 表題作も美しいと思っていた海岸が実は漂着物の吹き溜まりになっていたように、自分たちも流れ着いたものの捨ててきたはずの物たちに取り囲まれてしまったようで…鬱々とした気持ちに。2026/02/04
ぽてち
32
デビュー作の『潜水鐘に乗って』(未読)でサマセット・モーム賞とホリヤー・アン・ゴフ賞を受賞した作家の第2短篇集。13篇を収録している。うーん、これは苦手なタイプの作品集だった(^_^;)。映像的ではあるのだが、そこからなにを感じればいいのかがわからない。ただ文章を愉しめばいいのかとも思うし実際それで愉しめたけれど、中には内容がまったく理解できない作品もあった。解説によれば、出身地のイギリス・コーンウォールを舞台にしているそうだが、そもそもこの地についての知識が皆無なので、理解の助けにはならなかった。2025/06/21
ベル@bell-zou
25
砂浜のようにサラサラと移ろう12の物語。アルバムの写真をただ見せられ閉じられたように、どれもその続きを知ることはない。そしてそれらをなぞるような最後の物語もやはり唐突に終わる。幼い娘の存在が彼を現実に留める「アンテナ」、けりをつけたはずのものとは一体…ゴミ回収に囚われていく夫婦「漂着物、または見捨てられたものたち」、インパクト抜群ご近所トラブル「嵐の日」が印象的。スコンとはしごを外されたような読後感に最初は戸惑ったけれどつかみどころのない独特の寂寥感にいつの間にか浸っていった。2025/11/16




