内容説明
新型コロナウイルスが蔓延する2020年春、手話通訳士の荒井尚人の家庭も様々な影響を被っていた。刑事である妻・みゆきは感染の危険にさらされながら勤務をせざるを得ず、一方の荒井は休校、休園となった二人の娘の面倒をみるため手話通訳の仕事ができない。そんな中、旧知のNPOから、ある事件の支援チームへの協力依頼が来る。女性ろう者が、口論の末に実母を包丁で刺したという事件のサポートだ。聴者である母親との間に何が? “コロナ禍でのろう者の苦悩”、“家庭でのろう者の孤独”をテーマに描く、〈デフ・ヴォイス〉シリーズ第4弾。/解説=佐久間文子
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
hrmt
28
シリーズ4作目ですが、毎回外れなく考えさせられる良作。家族団欒の場で聴こえない自分だけが団欒に参加出来ず孤独を感じるディナーテーブル症候群。聴こえない音を発声させての口語会話を求める無理解。意思疎通への諦めなど想像するだけでもかなり辛い。けれど聴こえる側も、団欒の場を一緒にとの思いだったり、口語の対話で意思疎通を図ろうと思っているのだ。ただ完全にボタンをかけ違っている事に気付かない。そしてコロナ禍はろう者にとってより災難だった。この先、荒井家がどう理解し合う家族を築いていくのか楽しみにしています。2025/09/07
ぽけっとももんが
17
思い出した。わたしが生まれる前に亡くなっている曽祖母も耳が聞こえない人だった。おそらく中途失聴者で、耳元で大声ならばかろうじて聞こえるくらい。母が、聞こえないけどいつもにこにこしていた、ときどき誰かが大声で通訳すると、とても嬉しそうにしていた、と。それをディナーテーブル症候群で思い出したのだ。今思えばさほど高齢でもなかったはずだ。のちに母が手話教室に通っていたのはそれもあったのか。手話に対する偏見、家族内での疎外感、いろいろ考えさせられる。しかしアラチャン、もうちょっとしゃきっとしたまえよ。2025/08/06
ツバサ
14
読み終えて気づくタイトルの悲しさ。いるのにいない扱いを受ける人達の心叫びが感じられて、切ない気持ちになる。耳が聞こえない人と生きる為に何が出来るのか、それ以外の障害ある人と共存する社会になるためにはどうすればいいのか。問題は山積みだ。荒井家の課題もどうなるのか気になる。2025/05/23
なんてひだ
7
今回もじっくりのめり込んで読了。よく調べて描けてる 瞳美のブランコ乗り場で謝っているのにどうして怒っているの?家族には重い話は絶対しないとか、頑張れって郁美に伝える閃き、自分もだけど知らなすぎる。聞こえないのに口述を必死になって教えるとか、手話覚えてバカになったんだという郁美のオー馬鹿母親、郁美の事件と同じ根本的な問題を語る財産放棄したトキ子もよかった。当事者じゃないけど家族が手話覚えろよと本気で思う。2025/08/26
TOMTOM
6
デフ・ヴォイスシリーズ、第4弾。シリーズ当初は推理物っぽかったけれども最近は徐々に社会問題に流れつつあります。作中で語られている「ディナーテーブル症候群」、聞こえる家庭の中でひとり聞こえない者の孤独。愛情は感じるけれどもつながりは感じないという言葉、切なくなるとともに、主人公の尚人が自分の娘を心配してしまう気持ちがストレートに伝わってきます。成長する娘たちの姿をこれからも見届けていきたいです。2025/11/08




