内容説明
舞台は、〈北の街〉にある蛸足型の古い総合大学。語り手の女子学生と同じ生命科学研究所に所属する幼馴染みの男子学生が、ある日、一心不乱に奇妙な実験を始めた。亡くなった心の師を追悼するためだ、と彼はいうのだが……。夏休みの閑散とした研究室で密かに行われた、世界を左右する実験の顛末とは? 少しだけ浮世離れした、しかしあくまでも日常的な空間――研究室を舞台に起こるSF事件の数々。第1回創元SF短編賞を受賞した表題作にはじまる、大胆な発想と軽快な語り口が魅力のデビュー作品集。/【目次】あがり/ぼくの手のなかでしずかに/代書屋ミクラの幸運/不可能もなく裏切りもなく/幸福の神を追う/へむ/解説=三村美衣*本電子書籍は『あがり』(創元SF文庫 新装版 2025年5月9日初版発行)を底本としています。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Shun
31
松崎有理デビュー作の短編集新装版。著者の作品は3冊目になりますが、本作では同じ街そして同じ大学内での物語という特徴があります。著者の専門であるためか出てくる用語や理論は極めて専門的でどこからSFなのか判然としない部分はありましたが、大学または大学院という一応特殊な環境での日常の光景とフィクションが見事に融合した小説となっています。大学を舞台としたミステリやSFは数多くあれど、この作品ほど大学内での研究や日常生活に密着して書かれた小説は読んだことがない。論文執筆自体をテーマにした作品というのも面白い。2025/05/17
イシカミハサミ
18
日本列島の北の方にあるとある大学と その周囲の町を舞台にした連作短編集。 仮説・実験・実証にSFを少々。 時系列を使った仕掛けも少々。 個人的には文庫が絶版で手に入らなかった 代書屋のミクラくんに会えたので、 非常に満足できました。2025/06/02
ソラ
7
【読了】B この作者の作品は面白そうだなと思いつつも実際読んでみるとちょっと合わないということが続いたものの、この作品はしっくり来た感じでとても良かった。2025/06/22
海苔数
1
舞台が仙台すぎて楽しい。発想までは面白く読めるんだが、展開の方向性がややピンとこないので、全体としてはイマイチな印象が残ってしまった。2025/06/21
c3pomotohonzuki
1
細胞の大量増幅、偶然の数式化、遺伝子の行方。 北の街の大学を舞台に繰り広げられる研究者の営みは少し不思議な非日常で。 日常としてそれを受け入れている彼ら彼女らの短編集。 静かにわくわくし、少し切なく苦い、そんな読後感。 「研究とは物語を語ることに似ている」2025/06/07
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