内容説明
その画家はなぜ、強烈に「知」を求めたのか──?
近代の夜明け前、フンボルトやリンネ、ダーウィンよりはるか昔に、昆虫学という学問が存在しないなか独学で研究を行い、メタモルフォーゼ(変態)の概念を絵によって表現、さらに大西洋を渡って南米を調査旅行し、昆虫や植物の姿を生き生きと描写した破格の女性が17 世紀にいた。小さな虫の中に「神」を見たその女性、マリア・シビラ・メーリアンとは何者だったのか──。科学と芸術が混じり合った豊かな時代の輝かしい偉業を、中野京子が生き生きと蘇らせる。2002 年刊の幻の名著、『情熱の女流「昆虫画家」──メーリアン波乱万丈の生涯』が満を持して復刊!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
keroppi
69
中野京子の新刊と思って読んだら、2002年に刊行された本の復刊だった。この本が出版された頃は、まだ中野京子も知られていなかったのだろう。その後、「怖い絵」のヒットにより、知られるようになり、この本も復刊出来たのではないか。17世紀に生きた昆虫画家の生涯。この女性のことは、この本で初めて知った。見たい、知りたいという欲求から、こんなにも魅力的な作品を生み出していたとは。復刊され、この本に触れることが出来てほんとによかった。2025/07/04
あたびー
42
この女性の存在を全く知らなかったばかりか、生きた時代がバロック(17〜18世紀)と知って驚愕した。女性の生き方が型にはめられていた時代に、画家で印刷業の家に生まれたとは言え、自分の興味のある虫の世界に浸りきり一生をその観察と絵画化に費やした偉大な女性の生涯を綴った本である。幼虫と成虫は別の生物だと誤解されていた時代に、虫を観察し、幼虫が蛹になり成虫になる過程を明らかにしたのが女性であるということに感動した。さらに南米スリナムのジャングルでの活動までとは恐れ入る。昆虫学の魁としてもっと評価されるべきと思う。2025/06/17
読特
42
葉を食べる芋虫が、蛹となり、蝶や蛾になり飛び立つ。メタモルフォーゼ。本能の赴くままに動いて、時が来て、変態する。偶然おかれた環境で、生き物がそれぞれ行動し、自然界を成り立たせている。…フランクフルトの版画工の後妻の子として生まれる。父の死後、実家を追い出され、母の再婚相手の元で暮らす。孤独な少女が出会ったミクロな世界。虫さえ追っていれば幸せだった。成長し結婚する。出産し離婚する。その後、スリナムを目指す。娘とのフィールドワーク。歴史に残る「虫の本」の出版。バロック期の女性。それぞれの中の1人として生きた。2025/05/07
たまきら
37
生物の細密画に関する本を読むと必ず登場するのがこの画家です。けれども、彼女の「はじめの一歩」はあまりにも知られていません。まあなんといっても悪魔の仲間、魔女の化身である昆虫が好きだと魔女認定されたような時代ですからねえ…私猫好きで虫飼い…この時代に生まれてたら火あぶり決定だわ…こわ~い。養蜂はOKなのに、ホント、美醜で決めてほしくないわ~。「科学が芸術に奉仕すべき」の章は、著者の気持ちがみっちり入っていて、読んでいてうれしかったです。魔女バンザイ!2025/10/03
じーにあす
32
時は17世紀。まだ誰しもが興味を抱かなかった虫を描き観察し続けた一人の女性がいた。その名はマリア・シビラ・メーリアン。植物画家であり昆虫学者であった彼女。魔女裁判とペストの時代に何故彼女は虫を描き続けたのか。何故危険を冒してまでオランダから南米へ船で渡ったのか。そこには想像を絶する波乱万丈の人生が!とまでは言っていないのだけどそのドラマティックな彼女の生涯が綴られている。この時代の女性が認められたのはやはり自然や虫を知りたいという情熱だったのだろう。その探究心は凄いの一言。描かれた絵は写実的で実にリアル。2025/06/24
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