内容説明
盛田照美、50歳。夫と娘がいる。ひとりになる必要のない人生を送ってきた。はじめての「ひとり旅」で温泉地へ。人生の折り返し地点をすぎて、自分の半生に想いを馳せる。わたしがここまでに成し遂げたもの、何かあったかしら……。思い惑い人生の苦みを抱えながら彼らは温泉地へと向かう。「温泉ソムリエマスター」でもある作者が描く、温泉愛に満ち満ちた、六つの極楽小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しんごろ
169
もっと楽しい温泉旅ばかりの短編集だと思っていたけど、人間関係の悩みや想いを抱く人達が、温泉の湯で優しく包みこむ物語と言ってよいかな。『わたくしたちの境目は』が個人的に一番タイトルにマッチしてるかな。『女友達の作り方』、『島と奇跡』は良かった。タイトルが『温泉小説』なだけに、もう少し温泉シーンがほしかったかなと思うけど、この短編集のように、温泉に浸かりながら、いろいろ考えるのは自分も同じ。温泉に行きたくなるのは間違いなし。そして、改めて自分は温泉が好きだと実感できる短編集でもありました。2025/08/16
Ikutan
73
"友情を続けることって、努力。面倒くさくて放置していると、簡単に枯れちゃう。でも、時間をかけて、対話を続けていくうちに、互いのミスすら愛おしいと思えるくらいの関係になれる。" 温泉ソムリエマスターの称号を持つ朝比奈さんが紡ぐ、年齢も性別も境遇も違う主人公たちが新しい自分に出会う六つの温泉旅の物語。のっけの『女友達の作り方』から心掴まれた。印象に残ったのは高齢男性の物語。『また会う日まで』では、どうなることかとハラハラさせられ、『わたくしたちの境目は』では、亡くなった妻を思う主人公に胸が熱くなった。2025/08/12
ででんでん
69
これは良かった😊装幀や帯の「尖った私がほどけてゆく」…から、ほっこりとしたお話たちかと、そこまで楽しみにはせず読み始めたが。やはり朝比奈さん、それだけのはずはなかった。⚪️女友達を作る「丁寧な」努力…私はやっているか?⚪️「自分は、心配をする側ではなく、こんなにも、される側にいる」…自分もどんどんそちら側へと進んでいる。⚪️共依存 ⚪️なんにもしてこなかったようだけど、ずっと楽しかった。昔の人の人生が50年なら、私たちは二回目人生。◎最後の「島と奇跡」。これだけでも、この本を読んだ甲斐大有り。オススメ。2025/06/30
pohcho
69
温泉がテーマの短編が六編。表紙めちゃくちゃ気持ちよさそうなんだけど、温泉より旅に出て自分を見つめなおすという内容だったかも。日帰りバスツアーは便利なんだけど、ひとり参加だと人間関係が面倒そう。断食やってみたいけど、でもやっぱり美味しいごはんが食べたいかな。おじいちゃんと孫のしりとりはいい感じ。島の海辺の絶景吹きさらし温泉に行ってみたい。2025/06/03
シャコタンブルー
63
作者は温泉ソムリエマスターの資格を持っているが、それを日常生活にどう生かしているのだろう気になる(笑) 6話の短編集だがどの話ものぼせることなくサッとカラスの行水のように上がった感じだが、それぞれの温泉が独特の成分や特徴もあり存分に楽しめた。印象に残ったのは「女友達の作り方」初めてひとり旅バスツアーに参加した女性の複雑な心境の変化と温泉やサウナで整い、身も心も清々しくなっていく様相が何とも気分が良い。温泉に入りたくなること間違いなしの話だった。2025/06/04