虚構世界の存在論

著者名：三浦俊彦

勁草書房（2025/05発売）

• ISBN：9784326153053

内容説明

テキストの同一性の基準とは何か。虚構世界と現実世界とはいかなる関係にあるのか。虚構世界と虚構世界の住人は指示対象として存在するのか、しないのか。キャラクターの属性とはどういうものか（存在しないものが属性を持てるのか）。英米哲学の学説を紹介しつつ、虚構世界における存在・非存在の問題を論理学の手続きで論じる。

目次

序言

第一章　虚構作品（テクスト）とは何なのか
　1　作品の変貌と同一性
　2　外延と現象
　3　発見と規定
　4　作品の可能態

第二章　虚構世界とは何なのか：不完全性
　1　余剰情報と不確定性
　2　不確定性への三つのアプローチ
　3　排中律と二値性
　4　発見、選定、創造
　5　D・ルイスの集合説
　6　外挿原理と曖昧さ
　7　個体の追跡

第三章　虚構世界とは何なのか：矛盾
　1　矛盾に依拠する物語
　2　二種類の矛盾
　3　合併の方法
　4　解釈の存在論
　5　論理的非閉鎖と最小離脱
　6　論理的メタファー
　7　二〇五五年に何が起こったか

第四章　虚構的対象（キヤラクター）とは何なのか　諸説概観
　1　記述理論（ラッセル）
　2　擬装主張説（サール）
　3　還元主義（ライル）
　4　マイノング主義（パーソンズ）
　5　理論的実体説（ヴァン・インワーゲン）
　6　種類説（ウォルターストーフ）
　7　寓意説（プランティンガ*）
　8　代入的量化説（ウッズ）
　9　状況説（ハインツ）
　10　de re 可能多世界説（クリプキ）
　11　物理主義（クリプキ、カプラン、ドネラン）
　12　de dicto 可能多世界説（ルイス）
　13　de dicto 超世界説（スタルネイカー、カリー）
　14　メイクビリーブ説（ウォルトン）
　15　de re 心眼理論（ハウエル）
　16　限界仮説と唯一仮説（スタルネイカー）
　17　虚構論の判定軸

第五章　虚構理論とは何なのか
　1　現象主義と一世界説
　2　メイクビリーブとしての世界観

注
あとがき
引証文献表（兼・人名索引）

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

[Ecriture]

小説などの虚構世界において、言及されていないものは存在するか、矛盾と思われる部分が見つかった場合どのように処理するのかといった問題を扱っている。ブラッドベリのタイムトラベル小説の解釈が興味深かった。著者の記憶変換説は私にとって斬新で面白く読んだ。

2010/04/22

[iwri]

虚構の対象の存在論的身分など、ポストモダン系批評理論とは違う、英米系現代形而上学や指示理論に基づいた虚構論。とはいえ、批評理論ではなくあくまで哲学的な議論であって、良く言えば虚構の存在論に対する哲学的基礎付けとでも言えるのではないかと思う。虚構をある種のごっこ（メイクビリーブ）として扱うという点では、直観的にも違和感がなく、大筋では同意できた。一方で、虚構の対象の指示の理論の簡単なまとめとしても面白かった。

2011/11/02

[あるれん]

なるほど、分からん。

2010/12/17

[ケユ一ナ]

フィクションの概念は諸世界でも通用するのか。 また様々な客観的要素から作られ、構成されていく。 あまり概念論は分からなかったけれど。

2014/04/12

[ozanarimakoto]

可能世界論や一世界説というのは大陸哲学のモダン、ポストモダンとの議論とつなげられそうだと感じる。と、いうかとっくに誰かやってるんだろうな。でも、こっちのタイプの哲学はかーなーりストイックなので安易にやるときっとめちゃくちゃに叱られるでしょう。とか、なんとかいうとまた逆方向からも槍が飛んでくる。ほんとうに哲学は怖いものです。それにしても本当に難しかった！　いや、正直にいうと記号が出てきたあたりから置いてけぼりになってしまった。でも、可能世界意味論の主要なキーワードや人名をさらえたのは良かったです。つよがり。

2014/12/11