内容説明
山奥で行うイメージのある林業ですが、実は都市にも街路樹や公園木、庭木など木々がたくさん存在しており、これらの樹木を使って、緑を社会に役立つものにしようという「都市林業」の取り組みが始まっています。
これまで都市にとっての樹木は「景観」という側面が強く、近隣の問題などから伐採された木々は木工で扱える質ではなくほとんど活用されてきませんでした。
そんな都市の木々をゴミではなく活かす方法とは。
都市林業の可能性と、都市の木々を循環させ街の暮らしを豊かにするヒントがわかる1冊です。
目次
序 いまここにあるものでつくる
第1章 街の木はなぜ木材にされなかったのか
木材にされてこなかった街の木々
腐れが多い
異物が出る
樹形が悪い―「薪でもいらない」と言われた理由
製作に時間がかかり、たくさんの端材(ゴミ)が出る
クレームの発生率が高くなる
樹種が多い
山林の広葉樹でも木材になるものはごくわずか
時代に合わないことをするのは無理がある
2つの課題
<コラム>街の木(クセが強い材)の活かし方①
反りや歪み、割れにつながる材のクセ
曲がった材は曲がったなりに
生来の形を組み合わせて活かす
虫食い穴を抽象化
第2章 都市林業は成立できるか?
グリーンウォッシュで成立している?
街の木を活かす事業は玉石混淆
「成立」の形について考える
ブランディングで成立させる?
実際、どうやって成立させたのか
効率化とワンストップ化、芸域・職域を拡げて成立させる
投資になることを考え抜いたから機会を得られた
街の木の循環、お金の循環、愛情の循環
<コラム>都市林業のはじめ方
自分でできることからはじめる
第3章 緑でいっぱいの素敵な街、の舞台裏
都市林業を成立させる手がかりは、街の課題のなかにある
維持管理という深刻な課題
こんなにあったか危険木
庭の保存樹木が向かいの車を潰してしまった
ソメイヨシノの寿命は短い、は本当か
伐採への反対運動
街の木のあり方を問い直す
<コラム>街の木を食に活かす収穫祭
第4章 事例紹介 都市林業で変わる街づくり
事例紹介① さくら花見堂の物語
サクラがシンボルの小学校
時短樹木診断と事業価値を担保する提案
伐ったサクラでつくるのは、「モノ」じゃない
住民参加ではなく住民が主体
伐採・造材ワークショップ
樹木染めワークショップ
家具づくりワークショップ
最低のマナーを基準にしない花見堂
物語の結び目として生まれる街の居場所
<コラム>街の木(クセが強い材)の活かし方②
クセが強い材の代表、ソメイヨシノ
割り矧ぎ
大きな木取で使う
事例紹介② 南町田グランベリーパークの物語
商業施設と公園を一体的に整備する再開発
「前例がない」から「やってみよう」へ
製材ワークショップ―街のこれからにつながる木材を地域住民の力でつくる
都市森林の縮図のような空間を
苗木づくり大作戦
一巡できた後の難しさ
<コラム>街の木(クセが強い材)の活かし方③
ネタでくくって組み合わせる
多様な材を多様な人の手で活かす
最後の最後まで活かし切る
事例紹介③ 湘南リトルツリー&ともしびショップの物語
障がい者支援に取り組む福祉法人が運営するお店
投資成立の糸口を探す
個性を集めて調和をつくる
いまここにあるものでつくる、からこそできること
困難があってこそ物語ができる
つくり手と使い手の共犯関係が、木のものづくりの明日を拓く(かもしれない)
多様な個性を調和させる具体的手法
私たちは何者なのか
<コラム>街の木(クセが強い材)の活かし方④
なんとかおっつける
コナラの合理的な活用法
伐採したコナラを活かしたワークショップ
第5章 3つの提案
困難さをもたらす前提条件を大きく変える
提案① 「都市林業」を街路樹で
街路樹の管理に林業のコンセプトを取り入れる
明日の世界遺産にぐっと近づく
提案② 清掃工場をハブにしよう
伐採木を遠くまで持っていかずに、近くで処理する
小さな製材機能を付加しよう
わずかな予算でいますぐ試せる
提案③ 都市緑地を小中学校の演習林に
体験活動が無限に生まれる
体験の機会を平等に
まずは小さい規模から実証実験
教師と生徒は共闘者かつ共犯者
物語の欠如がもたらすのは―名建築が次々と取り壊される理由
<コラム>街の緑の変化といまだからこそできること
ウメ、カキ、ビワが消えていく
大木いっぱいの団地植栽から、株立いっぱいのマンション植栽へ
団地の庭は遺伝子プール
80年に一度の投資のチャンス、伐採した巨木を散逸させるのは勿体無い
あとがき
参考文献
参考動画