ちくま新書<br> 英語と明治維新 ――語学はいかに近代日本を創ったか

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ちくま新書
英語と明治維新 ――語学はいかに近代日本を創ったか

  • 著者名:江利川春雄【著者】
  • 価格 ¥990(本体¥900)
  • 筑摩書房(2025/04発売)
  • ポイント 9pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784480076816

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内容説明

江戸幕府を倒し、新しい「日本」の形を模索した明治維新。水面下では、言葉をめぐって「もう一つの闘い」が繰り広げられていた。迫りくる西洋列強と外国語で交渉できなければ植民地にされかねない。まともな教科書も辞書もない時代、サムライたちは必死に西洋語を学び、欧米に密航留学した。漢学、蘭学に加え、英語、独語、仏語が乱立する中、なぜ英語が新しい国家を創る原動力となりえたのか? 英語教育史の第一人者が、これまで語られてこなかった視点から幕末・明治に光を当てる。

目次

はじめに/第1章 英語という黒船──幕末のグローバル化に対応せよ/1 植民地化がいやなら外国語を学べ/日本列島に押し寄せる異国船/英語を学び西洋列強に備えよ/英学事始めの苦労と使命感/フランス語事始め/軍の近代化は語学力から/2 幕府のグローバル化対応/アヘン戦争の衝撃/黒船の外圧/通訳の重圧/条約「誤訳」事件/対日交渉でハリス激 せ/国際法を知らずに条約締結/3 西洋の覇権と自由貿易の罠/日本を「半未開国」とする万国公法/「脱亜入欧」の登場/グローバル資本主義に組み込まれた日本/イギリスの自由貿易帝国主義/開港が幕府崩壊を早める/第2章 幕府の英語教育と西洋体験──近代化で幕府を延命せよ/1 英語教育を本格化せよ/蘭学から英学へ/江戸の蕃書調所も英学導入/英語教育のメッカ長崎/幕府の長崎英語伝習所/ネイティブが教えた横浜英学所/箱館の英語稽古所/2 英語教材と英語教師たち/横浜のピジン英語と英語教材/英語教育の聖人フルベッキ/引く手あまたのジョン万次郎/英語と西洋事情の伝道師・福沢諭吉/3 西洋式の軍制改革と欧米体験/水戸藩の「厄介丸」/洋式訓練で海軍士官をつくれ/幕府のフランス語教育と軍事の影/遣米使節のアメリカ体験/西洋文明の光と影/第3章 西南雄藩の英語学習──西洋式軍隊で幕府を倒せ/1 薩摩藩の志士を変えた英語/明治維新の主力となった西南雄藩/薩摩藩はなぜ強かったのか/洋学教育で人材を育てよ/薩英戦争に負けイギリスに急接近/悲劇の兵学者・赤松小三郎/世界観を変えたイギリス密航留学/薩摩藩士による英語教材と辞書/2 長州藩の攘夷派を変えた英語/軍の近代化は洋学教育から/松陰の遺志を継ぐ密航留学/攘夷から脱皮させた英国留学/下関戦争で目覚めた長州藩/英語を武器にした伊藤博文/3 佐賀藩の先進性を支えた英語/佐賀藩は洋学先進藩/海軍力近代化のための英学研究/英学修業の栄光と悲劇/外交官と英語で渡り合う大隈重信/精読の副島、多読の大隈/4 西洋式軍隊で幕府を倒せ/薩摩と長州が手を結ぶ/海援隊の英語教材/幕府崩壊へのカウントダウン/クーデターで新政権樹立/戊辰戦争と欧米列強の駆け引き/西洋武器商人たちの暗躍/パークスとロッシュの明暗を分けた日本語通訳/第4章 明治日本の西洋化──近代国家を構想せよ/1 近代国家の将来構想を描け/西洋化をめざす革命/中央集権体制を急げ/産業の近代化に必要な外国語/明治の軍隊に必要な外国語/文明開化と英語ブーム/伝統文化の破壊と民衆の反発/2 西洋人を雇い、西洋を視察せよ/西洋の頭脳を丸ごと雇え/岩倉使節団の大胆さ/伊藤の「日の丸演説」もむなしく/『米欧回覧実記』が描く西洋の光と影/台湾出兵と朝鮮への不平等条約/3 留学で学んだ西洋文明/留学で西洋学術を学べ/幕府留学生が学んだ西洋/薩摩・長州留学生が見た未来像/藩を超えた連帯とナショナリズム/明治初期の留学事情/第5章 英語とドイツ語の攻防──近代教育をどの言語で行うか/1 近代的な学校は英語で教育せよ/徳川の沼津兵学校と静岡学問所/学校近代化の「仁義なき戦い」/開成学校は英・独・仏語で開始/英語だけで講義せよ/外国語学校を英語学校に/2 専門教育は英語かドイツ語か/英国人が英語で教えた工部大学校/英語名人を育てた札幌農学校/医学は英語かドイツ語か/3 ドイツ語で自由民権運動をつぶせ/自由民権運動の高まり/自由民権運動つぶしのドイツ学振興/ドイツ語の拠点校をつくれ/東京大学で拡がるドイツ学/大学教育も日本語で/第6章 日本語を変えた英語──言文一致をめざせ/1 日本語を近代化せよ/言語革命をもたらした明治維新/近代化で急増する日本語/漢語の氾濫/ナショナリズムと近代日本語辞典/英学者・大槻文彦の『言海』/2 言文一致による日本語革命/西洋語との接触で変容する日本語/翻訳という言語バトル/漢字は廃止か削減か/仮名表記かローマ字表記か/「言文一致」がついに登場/国語教科書も言文一致へ/3 西洋文学と格闘した文学者たち/西洋文学のインパクト/言文一致の開祖・坪内逍遥/写実的描写の二葉亭四迷/言文一致運動の旗手・山田美妙/言文一致への反動と日本語の成熟/夏目漱石の多彩な文体/おわりに/「英語と明治維新」関連年表/主要参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

壱萬参仟縁

44
E図書館新刊棚。書店で見つけていた一冊。S・スマイルズ『西国立志編』(1871)、福沢先生の『学問のすゝめ』、内田正雄『輿地誌略』は「明治の三書」で大ベストセラー(032頁)。福沢先生が大村益次郎に英書購読を共にやろうと声かけしたが、拒否られたという(068頁)。その福沢先生は英学者・英語教育者、西洋事情の伝道師(094頁)。子卿(しけい)『華英通語』の日本語訳、『増訂華英通語』で出版第一号。2025/05/24

ねこまんま LEVEL2

15
今や英語を学ぶツールは数多存在する中で、江戸から明治にかけての人々は確かな教科書もない中凄まじい熱意を持って英語を学んでいたのだろうか。外国語を習得しなければ列強の支配下に置かれてしまう、そういった強い危機感が日本を強くしたことは間違いない。歴史に学び自身も熱意を持って学びを深めていけたら良い。2025/06/28

qwer0987

11
幕末や明治維新を外国語習得と教育の視点から探っており、視点のユニークさが目を引く。幕末は諸外国が日本に押し寄せた時期だけに、外国語の習熟が交渉の面でも必要だった。そのため幕府もオランダ語に代わって英語の習得を命じ、留学も積極的にさせていたが、幕臣が通辞という点で情報収集にバイアスが入ったであろう。一方の雄藩は末端から直接外国人と接して情報を得てきたという差は大きい。そうして新政府後は留学に積極的に力を入れ、世間でも英語ブームも起きる。同時に新政府は「国語」の作成にも力を注いでおり、その流れは興味深かった2025/07/30

Hatann

6
語学が近代日本を形づくった過程を描く。幕末期より西洋列強による帝国主義的進出に対抗するため、西洋語の習得が必要となった。語学を通じて西洋的なものを貪欲に命がけで吸収した。当初、高等教育は外国語で実施されたが、英語が有力になった背景には、輸入高の9割が英語圏からのものだった、留学生の6割が英語圏に向かったという事情も大きいようだ。他方、自由主義運動への警戒感から、高等教育機関にてドイツ学に注目されるようになったことや、英語の翻訳を通じて、日本語においても言文一致体を求めるようになったことへの指摘も興味深い。2025/06/20

田中峰和

5
外国語を学ばざるを得ないのは、国力の弱さと関係している。アフリカ諸国は多くがフランス語を使っている。産業や文化の発展は言語が寄与する部分が多い。抽象的な表現は、途上国の言語では困難だ。明治以降、多くの翻訳言語が生まれたのは元々、日本が取り入れていた漢語の影響が大きい。社会の変化を反映した語を挙げれば、汽車、汽船、鉄橋、電線、商法、民法、貿易、科学、数学、学歴、哲学などおびただしい数におよぶ。貿易のために商人に用いられたビジン・イングリッシュ。商業のビジネスがなまったものだ。どれほど通じたのか疑問だ。2025/06/05

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