ちくま新書<br> 国立大学教授のお仕事 ――とある部局長のホンネ

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ちくま新書
国立大学教授のお仕事 ――とある部局長のホンネ

  • 著者名:木村幹【著者】
  • 価格 ¥935(本体¥850)
  • 筑摩書房(2025/04発売)
  • ポイント 8pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784480076793

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内容説明

時は1993年。若き政治学者・木村幹(27歳)は、愛媛大学法文学部に助手として採用された。「雇用の安定した国立大学に就職し、研究に集中したい」という夢が早々に叶い、これで韓国の政治文化研究に打ち込めると思いきや、国立大学の置かれた状況は刻一刻と悪化していく。神戸大学に移るも、2004年の独立行政法人化により研究費も人員も削減され、予算獲得のための仕事が日々の研究を圧迫する。昇進しても、小さいパイの取り合いで疲弊するばかりだ。還暦間近のとある部局長が見つめた、おかしくも哀しい国立大学の30年。

目次

はじめに──不思議な仕事/序章 国立大学三〇年/私的三〇年史/はじめての赴任/教養部解体と学部改組/異動の掟/国立大学間の異動/黎明期の独立研究科/第一章 大学教授はどう採用される/大学教授って誰のこと/公募と引き抜き/審査はこう行われる/引き抜きは減っている/任期付きポストと任期のないポスト/教授になるには/仕事はどんどん増えていく/教員人事はいつもギリギリ/コラム 大学教員とお金/第二章 組織としての大学のガバナンス/本部と部局/教員組織のトップは評議会/教員組織と事務組織/教授会は各部局の意思決定機関/学域に所属、部局に配置/執行部会議と各種委員会/部局長(研究科長・学部長)はどう選ばれる/コラム 大学教員と人間関係/第三章 大学教員の働き方/裁量労働制/学年暦と授業の厳格化/教育業務/学内行政事務/研究業務/対外活動/外部資金獲得/ワークライフバランス/絶えないハラスメント問題/コラム 大学教員とご飯/第四章 学会でのお仕事/学会とは何か/なぜ学会に入るのか/学会は営業とリクルートの場/学会の会員になる/会員を辞める/学会を運営する/学会長はこうして選ばれる/年次大会や研究会の開催/学会誌編集/査読のあんばい/査読とハラスメント/コラム 大学教員と専門分野/第五章 大学教員を育てる/大学教員の退職年齢/学部と大学院はこう違う/学生を紹介するのも仕事/研究者の卵はここでつまずく/ポスドクを助ける/コラム 大学教員と編集者/第六章 営業する大学教員/部局の運営経費は三〇年で三〇〇〇万円減/個人研究費は年間五〇万円から一〇万円に/科研費は大学のお金/外部資金への依存が招く問題/少子化だけではない/二種類の営業/大学を売り込む/国内での営業/研究者としての営業/研究費を得るための間接的な営業/本を出すための営業/研究プロジェクトに参加するために顔を売る/コラム 大学教員と趣味/第七章 大学は海外に活路を見出す/留学のセットアップ/変わるアジアの大学との関係/奨学金を獲得する/英語コースの設置/留学生は多すぎるのか/リカレント教育という道/コラム 大学教員とDX/むすびにかえて

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

よっち

28
1993年。愛媛大学法文学部に助手として採用され、研究科長にもなった還暦間近のとある教授が語るおかしくも哀しい国立大学の30年。じっくり研究に取り組めない大学教員の慌ただしい日常や、改革から独立法人化が進んだ国立大学の激変、大学教授はどのように採用されるのか、組織としての大学のガバナンス、大学教員と人間関係、学会でのお仕事、営業する大学教員、海外に活路を見出す大学など、教授にまで昇進した経緯は自身も語られているように、今よりもおおらかな時代だった影響もありそうですけど、今の国立大学はなかなか大変そうです。2025/05/05

さとうしん

18
韓国政治研究で知られる著者が大学教授の業務を紹介。一般に大学教授の仕事としてイメージされている教育・研究以外にも、学内行政、学会関連の業務、教職員あるいは研究者としての営業活動、研究者の卵としての院生やポスドクの指導、外部資金の獲得、留学生の招致等々多様な仕事ぶりが見えてくる。著者も断っているように大学教授といっても国公立か私立か、あるいは大学の規模、大学での役職によってその業務は様々だが、それをふまえた目配りもできていると思う。2025/04/14

月をみるもの

17
オリックス研究家、、、、もとい韓国政治史研究の第一人者として著名な木村教授が、赤裸々に語る大学の現状。文学部タダノ教授シリーズや、身近な大学の先生たちとのおつきあいを通じ、ある程度わかってるつもりだったがあらためて本書を読むと「ここまで来ちゃっうと、もはや元には戻れないのでは」というのが率直な感想。明治日本が「生き馬の目を抜く国際社会で生き延びていくには、国民の教育こそが肝要だ」との認識をもち、現在に続く様々な制度をたちあげてから150年。初等・高等教育ともに制度自体が、限界を迎えつつある。2025/05/11

あっくん

15
純粋に大学教授がどのように日々業務をこなしているのか興味を持ち読んでみた。 国立大学の独立行政法人化によって大学の運営が様変わりしたこと、研究費に困窮していること、大学教員のポストが狭まっていることなどを読み取った。 若かりし頃、研究者を目指したがあまりの閉鎖性に辟易してドロップアウトした身としては、己の選択は吉だったのかも、と思う。研究だけで生きていける世界に憧れたが、現実には研究以外の業務に忙殺されている。これはどんな仕事にも当てはまる。専門性で生きるためにはそれを支える多量の雑務も必要だ。 2025/04/28

てくてく

7
専門の韓国政治の他、球団(オリックス)愛やマウンテンバイクの趣味などで有名な神戸大教授が大学教授の多様な業務や独立行政法人後じわじわと首を絞められているような現場の状況を語った一冊。研究に集中することができた時代を経験しているし、その分野の第一人者で研究者としてはトップ層に分類される人だからか、それで踏ん張れる体力に圧倒された。女性研究者・教員の言及部分は、女性は今なお大学業界ではマイノリティで見えない存在なのかなと思ったりした。2025/04/22

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