内容説明
アシカガ・ショーグネイト崩壊後、AIは長足の進歩を遂げる。軍事AIが合戦を司り、文事AIが詩歌、楽曲の生成に勤しむ世界で、つわものたちは何を思惟するのか? 歴史小説のはずが、ミステリあり、スペースロマンあり、アイドル活劇あり、異世界転生まであり! 何でもあり! 円城ワールド全開の戦乱ラプソディー!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
旅するランナー
194
円城塔「去年、本能寺で」読了。細川幽斎や本居宣長のAI並み計算能力、坂上田村麻呂のガリア戦記、斎藤道三のボディダブル、ハイデルベルク人殺人事件@日本、親鸞の息子善鸞のアイドルツアー、ジャイアントインパクトの衝撃から地球を建て直す信長の神目線など。史実を再構築して、円城流に歴史劇を書き換え伝え、知識欲を刺激する11短編。2025/08/03
starbro
173
円城 塔、4作目です。著者の新境地でしょうか、歴史小説×SF短編集でした。オススメは、「タムラマロ・ザ・ブラック」&「偶像」&表題作「去年、本能寺で」です。 https://www.shinchosha.co.jp/book/331163/2025/06/09
ケンイチミズバ
77
去年、マリエンバートで、じゃないが。象追い祭りで起きた殺人事件。目撃者ナシ。現場は象の群れに踏み荒らされ証拠も乏しい。被害者は肩から斬られ傷はみぞおちにまで達していた。探偵と助手は凶器の石斧を発見する。石斧?えっ?石器時代。ここは極東に位置する弓型の島。縄文時代はまだ2万年後。文字も存在しない。毛皮に穴を開けて首を突っ込み縄で腰のあたりを縛っただけのファッション。象は頭がイイらしい。平原に落とし穴を掘っただけじゃ仕留められない。障害物を構築し罠に追い込むが、毎年死人が数人はでる。今回は他殺のようだ。(笑)2025/06/12
R
55
歴史を扱ったSF小説短編集。独特の切り口で、歴史人物や事象をSF的に見立てを行った物語がどれも面白い。特に細川藤孝を扱ったAIの話と、斎藤道三の歴史修正の話が、考えさせられるところもありながら滑稽話でとても楽しかった。そうかと思えば、戦国時代の仏教を地下アイドル的に扱ったりするというのも斬新なような、そういうものかと騙されてしまいそうなこなれ具合で、ケレンとハッタリが実によく効いててとても楽しかった。2025/08/15
harass
48
11の短編集。表題で歴史ものかと手に取った。この著者らしさ満載だった。理解の遥か上に困惑しつつなんとか理解しようとする読書を繰り広げてしまう。語り手はなんやねんと考えてしまう。人を食ったような、読者の予想を唖然とするレベルで裏切るのは生来の作家であると確信。2025/07/19