内容説明
アシカガ・ショーグネイト崩壊後、AIは長足の進歩を遂げる。軍事AIが合戦を司り、文事AIが詩歌、楽曲の生成に勤しむ世界で、つわものたちは何を思惟するのか? 歴史小説のはずが、ミステリあり、スペースロマンあり、アイドル活劇あり、異世界転生まであり! 何でもあり! 円城ワールド全開の戦乱ラプソディー!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
160
円城 塔、4作目です。著者の新境地でしょうか、歴史小説×SF短編集でした。オススメは、「タムラマロ・ザ・ブラック」&「偶像」&表題作「去年、本能寺で」です。 https://www.shinchosha.co.jp/book/331163/2025/06/09
ケンイチミズバ
71
去年、マリエンバートで、じゃないが。象追い祭りで起きた殺人事件。目撃者ナシ。現場は象の群れに踏み荒らされ証拠も乏しい。被害者は肩から斬られ傷はみぞおちにまで達していた。探偵と助手は凶器の石斧を発見する。石斧?えっ?石器時代。ここは極東に位置する弓型の島。縄文時代はまだ2万年後。文字も存在しない。毛皮に穴を開けて首を突っ込み縄で腰のあたりを縛っただけのファッション。象は頭がイイらしい。平原に落とし穴を掘っただけじゃ仕留められない。障害物を構築し罠に追い込むが、毎年死人が数人はでる。今回は他殺のようだ。(笑)2025/06/12
nbhd
12
円城塔さんが書いた歴史小説なのでもちろん歴史小説ではない。大好きだ。本居宣長ランゲージモデルが古事記を解釈するし、親鸞さんの息子の善鸞はYOASOBI的なアイドルになるし、無数の信長が無数の光秀に無数に裏切られたりする。いつものように、なんのこっちゃなのだけど、円城塔さんにしか行けない数光年先に連れてかれた。2012年の芥川賞受賞以降、毎度読んできた人としては所収の短編11篇のうち6篇は「なんか良かった」と感じれた(驚異の円城塔ヒット率54%)。そんな円城塔リテラシーは世の中には必要ないが、僕には必要だ。2025/07/07
てん
11
やはり円城氏はクセが強い。嫌でも文章から知識があふれ出てくる。こっちが受け止められないほど。分かる所はニヤっとしたり、そう来たかと感心したり。そして、なんてことなく常識をはみ出してくる。あの手この手で。まるで読者と登場人物達に挑戦するように。読者はただ驚いていればいいけど、登場人物は対応するのに大変。そんな思索を追っかけるのもおもしろい。でも、この手の本は読み進めるのにエネルギーを使うから、片手間には読めないし時間もかかる。山口晃さんの表紙はイメージピッタリ。2025/07/01
そうたそ
10
★★☆☆☆ 円城塔の歴史×SFモノ!?と面食らったが、読んで安心。やはり円城塔は円城塔だった。ということはつまり難しい。「偶像」など、数篇は面白いかも、と思えるものがあったが、やはり大半は難しい。歴史が好きだから楽しめるとは言いきれないのが、本作の難しいところ。一方、著者の作品が好きならば、これまで通り楽しめるだろう。2025/06/18