内容説明
戦後の新憲法で「国政に関する権能を有しない」と規定されたにもかかわらず、天皇が今なお権力の主体であり続けているのは一体なぜか。儒学・国学・超国家主義・民主主義など従来の思想史に加えて、新たに「空間」と「時間」という補助線を取り入れ、これまで言説化されてこなかった日本固有の政治思想の本質を明らかにする。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
おたま
61
幕末から現代までの「日本政治思想」を概観している。日本には、ヨーロッパ近代のような政治思想は生まれなかった。例えば、ルソーのような、ホッブスのような、ヘーゲルのような、あるいはマルクスのような思想を日本人は生み出さなかった。また東洋における、儒教的なものも十分には育たなかった。国学を通して、日本の古代から続く「国体」というようなものを見つけることはできる。しかし、それは確固とした論理に基づいたものというよりも、感覚的なものに多くを負うている。まさにこの本は、その曖昧な「国体」をこそ主題に掲げた政治思想史。2025/09/27
無重力蜜柑
13
結構面白い。西洋政治思想史と異なる日本政治思想史について、その学史的な起源や視角の整理に始まり、江戸時代から令和まで各論を概ね時系列順に取り上げる。もともと放送大学のテキストなだけあって初学者にも分かりやすい平易な内容。ただ、(これは著者も断っているところだが)オーソドックスな教科書というより著者の興味関心を濃厚に反映した本で、人物や狭義の思想だけでなく「空間」や「時間」といった一見突飛なテーマを採用している。そういう意味では原武史のこれまでの研究の総まとめの観もある本で、彼の最初の一冊には最適だと思う。2025/07/26
青雲空
7
ブランクを置きながらやっと読了。各章がそれぞれ独自の考察をしているので、こういう本こそ一気読みに拘らず、つまみ読み用でいいのかも。私にとっての新鮮さでは、第14章戦後の「ソ連化」がもっともインパクトがあった2025/11/17
辻井凌|つじー
5
何度読んでも違う発見がある。時間支配について、僕らには時間に支配されているという感覚がどれくらいあるだろうか。時間に追われてるときだけじゃない。時刻表通りに電車がやってきて、それに乗ることも時間支配につながるのだ。空間による支配にも関心あり。2025/12/31
胃酸
4
れっきとした日本政治思想史の教科書でありながら、教科書的な無味乾燥とした記述と一線を画す、斬新且つある程度説得的な語り口を通して日本の政治思想の色んなトピックを贅沢に摘み食いできる本で良かった。例えば本書では政治における空間について全編通して着目していて、明治期以降に作られた運動場や公園などの空き地と近代天皇制の関連、五街道や鉄道、高速道路といった交通インフラ整備が生む政治的効果、西武線沿線と共産党(中央線沿線と新左翼)の共振...と枚挙に暇がないほど沢山具体例が挙げられていた説得力が半端なかった。2026/03/11
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- CAPA2015年2月号




