内容説明
日露戦で満蒙権益を獲得した日本は、その維持を最重要課題として勢力拡張に舵を切る。だが国益追求に邁進する外務省は、次々と変化する情勢の中で誤算を重ね、窮地を打開するため無謀な秩序構想を練り上げていく。小村寿太郎から幣原喜重郎、重光葵まで、国際派エリートたちが陥った「失敗の本質」を外交史料から炙り出す。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ぴー
68
本書は日露戦争後〜太平洋戦争までの外務官僚の構想と外交を中心に書かれており、興味深く読むことができた。特に印象的だったのは小村欣一の「満蒙供出」論。市場開放という発想と柔軟性、したたかさには驚いた。また、幣原喜重郎が「満鉄主義」に固執しすぎた点も含め、従来の幣原外交の評価が若干変化していることも自分には新しかった。外務官僚の構想や外交が一枚岩でなかったこと、国際情勢の見通しの甘さなど、やや辛口評価の本書。しかし、同時に国益追求+国際協調が外交の根底にあるため、改めてその難しさを実感した。良書でした。2025/07/03
MUNEKAZ
14
中公新書『幣原喜重郎』では所謂「幣原外交」の実相を描いた著者だが、本書でも幣原に対しては厳しい論調が続く。大陸利権に対する固執と、国際協調の維持という二律背反する目標を追った戦前日本の外交は、前者の追求が後者を上回ったことにより、「大東亜共栄圏」という構想に至る。日露戦争の戦勝と小村外交によってビルトインされた満蒙権益は、幣原をはじめとする歴代の外務大臣を縛り続け、軍部とともに日本の針路を破滅へと向かわせる要因に。「国益」の追求のみが、外交に求められるものではないことを戦前の経験は教えてくれる。2025/05/25
seki
8
第二次世界大戦へ日本が突き進んだのは、とかく軍部の暴走と描かれがちであるが、実はその理論的支柱は歴代の外務官僚たちが連綿と練り上げてきたものだと、本書は指摘する。大東亜共栄圏なる理想理論は外務官僚たちが一進一退を繰り返し、結実したものである。結果、日本はそこに正義をおき、アジアの救世主であることに活路を見出したのであろう。その結果は知ってのとおりである。歴史は一朝一夕に変化するものではない、必然のこともあるということを知る。積みが上がった歴史は大きなうねりを持つ。そうなってからはどうにもならない。2025/07/31
Ohe Hiroyuki
7
「大東亜共栄圏」誕生に至るまで外交官は何を考えていたのかに着目し、日清戦争直後から大東亜戦争の敗戦に至るまでの外交官の歩みを概観した一冊である▼本書では、列強と対立するきっかけとなったのは満州の扱いであったと描かれる。しかもその発端は日清戦争直後まで遡る。満州事変や日米の戦いは、ぽっと出たのではなく、半世紀にわたって蓄積された紛争の火種が噴火したものといえるように思う▼戦前の我が国歩みについて、通史的に、しかも外交官の振る舞いに着目した本は少なかったように思う。本書は、存在自体がなかなか興味深い。2025/07/04
onepei
2
外務省が国際情勢の変化に冷静に対応できていなかった感2025/06/29
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