内容説明
日露戦で満蒙権益を獲得した日本は、その維持を最重要課題として勢力拡張に舵を切る。だが国益追求に邁進する外務省は、次々と変化する情勢の中で誤算を重ね、窮地を打開するため無謀な秩序構想を練り上げていく。小村寿太郎から幣原喜重郎、重光葵まで、国際派エリートたちが陥った「失敗の本質」を外交史料から炙り出す。
感想・レビュー
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MUNEKAZ
13
中公新書『幣原喜重郎』では所謂「幣原外交」の実相を描いた著者だが、本書でも幣原に対しては厳しい論調が続く。大陸利権に対する固執と、国際協調の維持という二律背反する目標を追った戦前日本の外交は、前者の追求が後者を上回ったことにより、「大東亜共栄圏」という構想に至る。日露戦争の戦勝と小村外交によってビルトインされた満蒙権益は、幣原をはじめとする歴代の外務大臣を縛り続け、軍部とともに日本の針路を破滅へと向かわせる要因に。「国益」の追求のみが、外交に求められるものではないことを戦前の経験は教えてくれる。2025/05/25