新潮文庫<br> 桜の実の熟する時(新潮文庫)

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新潮文庫
桜の実の熟する時(新潮文庫)

  • 著者名:島崎藤村【著】
  • 価格 ¥539(本体¥490)
  • 新潮社(2025/04発売)
  • ポイント 4pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784101055046

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内容説明

明治20年代に高輪台の学舎に学んでいた主人公岸本捨吉は、年上の繁子との交際に破れ、新しい生活を求めて実社会へ出て行く。しかし、そこで遭遇した勝子との恋愛にも挫折した捨吉は西京への旅に出る――。作品の行間には少年の日の幸福の象徴である桜の実にも似た甘ずっぱい懐かしさが漂い、同時に恐ろしい程に覚醒した青春の憂鬱が漂う。「春」の序曲をなす、傑れた青春文学である。(解説・三好行雄)

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

新地学@児童書病発動中

116
島崎藤村の自伝的な作品。主人公の捨吉が大学を出て、社会に出ていくまでを描く。作者は詩人でもあるので、この小説のあちらこちらに詩的な感性を感じた。特に彼が桜の実を拾う場面はその感性が生かされており、美しく切ない。きめ細かな文章で描かれる明治の日本の姿に限りない郷愁を覚えた。この頃は捨吉と同じように、日本も若かったのだ。北村透谷を初めとして、日本の新しい文学を切り開いていった人たちの姿が活写されているところが興味深かった。捨吉は胸の中に抱える憂鬱を何度も自覚する。この気持が後の作品の伏線のような気がした。2016/10/13

優希

85
自伝的私小説で青春の香りがします。鬱々としながらも成長したいと願う捨吉に共感せずにはいられませんでした。年上の繁子との恋に破れ、新生活を求めて社会に飛び出すことで新たな現実に希望を見たかと思うとそういうわけでもないように見えます。新たな仲間や恋にも挫折したのは苦しい自意識に襲われたからのように感じました。覚醒した青春を送るからこその憂鬱があったのでしょう。丁寧な風景描写の優しさ、心の葛藤が美しかったです。何処かに懐かしい桜の実が感じられる作品でした。2016/03/30

フリウリ

20
「春」読了後に読む。時系列としては「春」の前の話だが、執筆されたのは「春」の後というのには考えさせるものがある。「春」で暗示された岸本(藤村がモデル)と勝子(佐藤輔子がモデル)の恋愛は、教師の岸本が教え子の勝子を愛し、告白することはもちろん手を握ることもできぬものであった。岸本は教師としての自責の念から辞職、流浪の旅(といっても行く宛には友に紹介された女性がいる)に出る。女性への恋心(と性欲)をどうおさめたらいいかという悩みは、男らにとって純情かつ凄絶なものであったろうが……明治は遠くなりにけり。72026/06/23

ちぇけら

16
河岸にさいた桜が散り、川のながれにのってたゆたう花びらに似た恋が、小さな蝋燭をかすめる。ぽうっと火がついて、やがて人知れず消えてしまう。春は、そのちっぽけな火を消してしまいたい衝動と、それすら畏れてしまう弱さのいりまじった季節だ。恋心と挫折、逡巡。春のため息は、とても甘くてすこしだけ冷たい。ひとり暗い部屋で名前をよぶことしかできなかったあの人の記憶は、ため息とともにはきだされた蒸気となって空にのぼっていく。2019/04/02

そうたそ

12
★★★☆☆ 著者の自伝的な作品にして「春」の序曲的な位置にあたる作品とのこと。「春」は未読だが、こちらから先に読めて良かったかもしれない。若さ故の苦悩や葛藤もあるが、どちらかというと本書は先への希望を感じさせるような内容で、伸びやかに描かれたことが感じ取れる。圧巻の文章ではあったが、思っていたほど面白くなかったという印象。とりあえず、記憶の薄れないうちに、ここから繋がっていく「春」を読んでいきたい。2023/02/06

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