内容説明
本書は、『ギフテッド』と『グレイスレス』(ともに文藝春秋刊)を一冊にまとめた合本です。
夜の街が生んだ才能、衝撃の芥川賞候補作2編
重病に冒された母とホステスの娘、AV業界の化粧師と瀟洒な邸宅で暮らす祖母。生/性、聖/俗のあわいを描く衝撃作が合本で文庫化。
(解説・水上文)
単行本
『ギフテッド』2022年7月 文藝春秋刊
『グレイスレス』2023年1月 文藝春秋刊
文庫版
『ギフテッド/グレイスレス』2025年4月 文春文庫刊
この電子書籍は文春文庫版を底本としています。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケンイチミズバ
70
母の天賦の才は美しい顔と男好きのする体であって、詩の才能ではなかった。彼女に与えられたギフテッドが人を特に男を引き寄せ、どうにかシングルマザーで生きて来られた。娘がそれを理解する17歳で家を出て行った。が、生きるための卑しさと捨てられないプライドも大人になり分かっている。だから管に繋がれた病床の母親に最後まで寄り添った。文章が素晴らしく著者のギフテッドは体で稼ぐ商売の方でなく作家の才能だと分かる。彼女が置かれた水商売の世界のリアルが生々しくて感覚的な表現が良い。虐待の経験は私自身の火傷の記憶とも被る。2025/04/28
sk
6
淡々と深みを描く。2025/04/26
ほなみ
5
読書会で紹介されて、いつか読もうと思いつつようやく購入。 退屈と言えば退屈だが、純文学と楽しむのであれば面白いと思う。 2篇の小説が収録されており、どちらも母娘に焦点が当たっている。「娘」を「自分の一部だった」と表現するのは思わず目を見張った。確かに子供はもともと母親の一部であり、それが同性であるなら余計境界線が曖昧になることもあのだろう。親子って難しい。距離感も出しなかなか感情もさらけ出せない。そんな微妙な感覚を情景や風景を使いながら表現していて味わい深かった。 とりあえず母親に会いに行こうと思った。2025/06/05
ごま
1
鈴木涼美さんのエッセイがとても面白かったので小説を初購入。うーん、作者ならではのリアルな夜職描写や母子関係の複雑さは読み応えがあったけど、初期の又吉直樹作品にも感じたような「必要以上に文学的であろうと肩肘を張ってる感じ」が真っ先にくる、読み手に対して身構えているような文体で、読みづらかった。このかたの他の作品も読んでみたい。2025/04/14
小寅
0
ギフテッドもグレイスレスも芥川賞の候補作で気になったので、読んでみた。テレビで鈴木涼美の経歴を知り、どんなものを書くのか更に知りたくなった。2作品とも、自分の知らない環境の話で感想を持つと言うよりも、その環境のことを少し知ったのかなぁ、と。確か、母親が大学の先生だったなぁ、母親との関係性に何かあったのかなぁとか、作品の意図を読み取れない感想ばかりになってしまった。2025/08/10