内容説明
激しい雨の降る夜、眠る夫を乗せた車で老婆を撥ねたかおりは轢き逃げの罪に問われ、服役中に息子を出産する。出所後、息子に会いたいあまり園児連れ去り事件を起こした彼女は息子との接見を禁じられ、追われるように西へ西へと各地を流れてゆく。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
578
読メでの評判すこぶるよく、本屋大賞ノミネート(発表が明日?)もあり、珍しくタイムリーに読めた。先が気になり一気。「人生を踏み外した女性の静かな決意」との帯どおり。自分で産んだ我が子なのに会うことが叶わない主人公。前科のあることから日本を流れ流れて最後は福岡だ。途中さまざまな人に護られ裏切られ、かおりはひとり息子への想いを胸に暮していく。子どものいる人には間違いなく刺さるし、そうでない人にも「ひょっとして自分にも」と思わせる作品。でもまぁ、わたしならあの状況で電話になんて出ない。絶対に。2026/04/08
まちゃ
389
人とは失敗を繰り返し、経験を積んでいくものだと思います。しかし、時として取り返しのつかない過ちにより、人生が暗転することもある、という怖さを感じました。長い暗闇の先に光明がさすような、安堵感のあるラスト。読み応えがありました。良かったです。2026/03/30
fwhd8325
382
素晴らしい作品でした。生意気なことを言えば、完成された作品だと思います。人生の歯車が、ちょっとしたことがきっかけで、大きく狂ってしまう。そうした怖さをはらみながら、物語は淡々と進んでいるのに、私にはとても息苦しく感じられた。これが小説なんだ。文章というものは、こうも人の心を揺さぶってしまうのだろうか。幸せになってほしいという気持ちよりも、歯車が正しく動くように、落ち着くところに落ち着いてほしい、それだけでした。2025/09/29
うっちー
325
「熟柿」いい言葉です。かおりさん頑張ってと応援します2026/01/06
nonpono
311
久しぶりの佐藤正午。帯より、題名の「熟柿」とは「熟した柿の実が自然に落ちるのを待つように、気長に時期が来るのを待つこと」。交通事故により「人生を踏み外した女性」。獄中で息子を産み、離婚、息子は旦那のもとに。息子に会いたくて学校に行くが、通報されてパトカーへ。主人公は言う。「いつまでも続いていくもの、不変なものなど一つもない。たった一日で人生は変わる」と。聖人君子な人なんていない。完璧を求めるが故に人は狂う。話が出来て聞いてくれるの存在は尊い。そして、人は何歳になっても、人は変わろうと思えば、変われるんだ。2025/12/22




