内容説明
激しい雨の降る夜、眠る夫を乗せた車で老婆を撥ねたかおりは轢き逃げの罪に問われ、服役中に息子を出産する。出所後、息子に会いたいあまり園児連れ去り事件を起こした彼女は息子との接見を禁じられ、追われるように西へ西へと各地を流れてゆく。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
fwhd8325
332
素晴らしい作品でした。生意気なことを言えば、完成された作品だと思います。人生の歯車が、ちょっとしたことがきっかけで、大きく狂ってしまう。そうした怖さをはらみながら、物語は淡々と進んでいるのに、私にはとても息苦しく感じられた。これが小説なんだ。文章というものは、こうも人の心を揺さぶってしまうのだろうか。幸せになってほしいという気持ちよりも、歯車が正しく動くように、落ち着くところに落ち着いてほしい、それだけでした。2025/09/29
うっちー
244
「熟柿」いい言葉です。かおりさん頑張ってと応援します2026/01/06
旅するランナー
240
人生の道を外れてしまった女性。会えなくなってしまった息子に伝えたい心の日記。とてもつらい生活だけど、それでも千葉から山梨石和温泉、大阪、福岡へと流れて生きていく。タイトルの意味が分かるラストに救われ、大辞林第四版で調べたくなります。2025/06/29
tetsubun1000mg
236
「本の雑誌」の7月号の書評で絶賛されていたが、あらすじの紹介の時点で苦しい気持ちになる題材だったのでためらっていた。 しかし、続く8月号の上半期ベストテンでは圧倒的に第一位と称されるので読んでみた。 冒頭から親戚から評判の良くなかった伯母さんの葬儀での精進落としの場面から始まる。 事件は飲んだ夫を助手席に乗せて運転して帰る途中で起こる。 この辺からは読むのが辛くなりなかなか進めなかったのだが、終盤から少しづつ空気が変わってきそうに泣けてくる。 衝撃の事実も出てくるのだが、初めて会った息子の言葉に救われる。2025/07/13
nonpono
235
久しぶりの佐藤正午。帯より、題名の「熟柿」とは「熟した柿の実が自然に落ちるのを待つように、気長に時期が来るのを待つこと」。交通事故により「人生を踏み外した女性」。獄中で息子を産み、離婚、息子は旦那のもとに。息子に会いたくて学校に行くが、通報されてパトカーへ。主人公は言う。「いつまでも続いていくもの、不変なものなど一つもない。たった一日で人生は変わる」と。聖人君子な人なんていない。完璧を求めるが故に人は狂う。話が出来て聞いてくれるの存在は尊い。そして、人は何歳になっても、人は変わろうと思えば、変われるんだ。2025/12/22




