内容説明
激しい雨の降る夜、眠る夫を乗せた車で老婆を撥ねたかおりは轢き逃げの罪に問われ、服役中に息子を出産する。出所後、息子に会いたいあまり園児連れ去り事件を起こした彼女は息子との接見を禁じられ、追われるように西へ西へと各地を流れてゆく。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
青乃108号
742
何か不思議な予感の様なものが働いた為に一切情報を入れずに読み始める。「熟柿」。それは物語の早いタイミングで何とも醜悪な場面で登場するのだが、タイトルの本当の意味は最後の最後に漸く判明する。その物語は断片を切り取りながら何処に向かっていくのか解らないまま読み手を掴まえたまま決して離さない。この辺りの筆力は圧倒的だ。そしてクライマックス、抑えた筆致で2人の心情を描ききる作者の力は凄まじい。最後の「熟柿」。素晴らしい。現状、今年のベストは間違いなくこの本です。2026/08/27
ミカママ
609
読メでの評判すこぶるよく、本屋大賞ノミネート(発表が明日?)もあり、珍しくタイムリーに読めた。先が気になり一気。「人生を踏み外した女性の静かな決意」との帯どおり。自分で産んだ我が子なのに会うことが叶わない主人公。前科のあることから日本を流れ流れて最後は福岡だ。途中さまざまな人に護られ裏切られ、かおりはひとり息子への想いを胸に暮していく。子どものいる人には間違いなく刺さるし、そうでない人にも「ひょっとして自分にも」と思わせる作品。でもまぁ、わたしならあの状況で電話になんて出ない。絶対に。2026/04/08
うっちー
519
「熟柿」いい言葉です。かおりさん頑張ってと応援します2026/01/06
nonpono
473
久しぶりの佐藤正午。帯より、題名の「熟柿」とは「熟した柿の実が自然に落ちるのを待つように、気長に時期が来るのを待つこと」。交通事故により「人生を踏み外した女性」。獄中で息子を産み、離婚、息子は旦那のもとに。息子に会いたくて学校に行くが、通報されてパトカーへ。主人公は言う。「いつまでも続いていくもの、不変なものなど一つもない。たった一日で人生は変わる」と。聖人君子な人なんていない。完璧を求めるが故に人は狂う。話が出来て聞いてくれるの存在は尊い。そして、人は何歳になっても、人は変わろうと思えば、変われるんだ。2025/12/22
はにこ
447
本屋大賞ノミネート作品だとのことで読んでみた。罪を犯した母親が息子のことを思いながら各地を転々としながら生きていく。コロナがあったり、過去のことがバレたり、お金を盗まれたり。辛すぎ。その分、最後には救われた気がするけど。罪を背負った人の生き辛さがヒシヒシと伝わってきた。2026/03/07




