岩波新書<br> 歴史のなかの貨幣 銅銭がつないだ東アジア

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岩波新書
歴史のなかの貨幣 銅銭がつないだ東アジア

  • 著者名:黒田明伸【著】
  • 価格 ¥1,056(本体¥960)
  • 岩波書店(2025/03発売)
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  • ISBN:9784004320579

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内容説明

歴代中国王朝が鋳造した数千億枚に上る銅銭.世界史上極めてユニークなこの小額通貨は,やがて海を越え,日本を含む中世東アジアの政治・経済・社会に大きなインパクトをもたらした.銅銭はなぜ,各国政府の保証なしに商取引の回路を成り立たせてきたのか.貨幣システムの歴史を解明してきた著者が,東アジア貨幣史の謎に迫る.

目次

はじめに──貨幣を選ぶ人々
第一章 渡来銭以前──一二世紀まで
銭の常識
還流しない通貨
原子通貨
溶かされる銅銭
良貨は駆逐されず
一一世紀、硫化銅製錬の革新性
二〇〇〇億枚の古銭
第二章 素材としての銅銭──一二世紀後半以降
布・米遣いの平安日本
過低評価される銅銭
異朝の銭
素材としての中国銭
紙幣に追い出される銅銭
絹の疋から銭の疋へ
元朝の「紙幣本位」制
海を越える銅銭
銅銭を溶かす利益
銭建て取引の普及から定期市へ
素材なのか貨幣なのか
函館志海苔の埋蔵銭
第三章 撰ばれる銅銭──一五世紀以降
公式通貨消滅の一五世紀中国
日本列島での硫化銅鉱開発
東寺の「米価」は何を示すのか
兵士と銅銭需要
日本銅の登場
模造銭ラッシュ
銅銭の色が決め手──古銭と新銭
撰銭という問題
東アジアに広がる撰銭
基準銭と通用銭
日本新鋳の銭
純銅の和製模造中国銭──きわだつ永楽銭の多さ
宋銭で取引される明代
古銭模造と倭寇──結節点としての福建南部
開元銭専用の南京
一六世紀の永楽銭
ベトナムにおける中国銭流通
銅銭流通の重層化
古銭の過高評価
多層化する環シナ海の銭貨
第四章 ビタ銭の時代──一五七〇年代以降の日本列島
倭寇の終焉
撰銭令の変化
米遣いの復活
精銭の空位化
ビタ銭の登場
列島産新銭としてのビタ銭
貫高制から石高制へ
公認されたビタ銭
領国内の公式鋳銭
領国製古銭輸出
第五章 古銭の退場──一七世紀以降の東アジア、自国通貨発行権力の始動
真鍮銭の登場
銀代替のための鋳銭
良貨万暦銭の挑戦
一六一一年、南京銭騒動
北辺防衛のための鋳銭
史上最大の古銭溶解
ベトナムの日本製古銭ブーム
街道整備と寛永通宝鋳造
寛永銭鋳造再開とビタ銭の消滅
最後の宋銭流通
東アジアにおける自由鋳造の終焉
第六章 貨幣システムと渡来銭
英領ベンガルの銅貨
小額通貨の大問題
補助通貨と原子通貨
銅銭の帝国
民の便のための通貨
商品としての銅銭
東アジアの銀貨幣
マリア・テレジア銀貨──もうひとつの渡来古銭
物価と通貨
通貨と市場
あとがき
主要参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

パトラッシュ

131
江戸時代までは中国からの渡来銭が使われていたとは日本史の常識だが、元朝が銅貨を廃して紙幣化政策を推進した結果とは知らなかった。しかも渡来銭は貨幣としてだけでなく、銅の素材として輸入されたという。鎌倉の大仏や同時代の寺の梵鐘が、大量の中国銭を原材料に作られたと知れば見る目も変わってくる。また明朝成立後も貨幣不足が深刻化し、広く使用したとされる永楽銭も実は日本で私鋳された贋金が多かった。銭の便利さを知った中世の東アジアで悪銭が必要悪として流通していた実態は、上に政策なければ下が対策をとる逞しさの表れといえる。2025/04/24

へくとぱすかる

46
銭形平次の投げる一文銭、あれと同類の銅銭こそが、本書のテーマ。平次親分の手元に届くまでに、こんなにも長い歴史があったのかと。金貨なんかより、あれこそが経済の中心なんだと感じた。日本でいえば、江戸の長屋の暮らしにもっとも役に立つのは小判なんかじゃないということだ。それは中国も同じ。中世はいわゆる渡来銭の時代だが、日本で出土する銭の中に唐やベトナムの貨幣と思われるものがあっても、実はそうではない可能性が大きいらしい。そもそもなんで古い唐のお金が? 常識をくつがえすように、そんな疑問を一気に解決してくれた。2025/06/08

よっち

33
歴代中国王朝が鋳造した数千億枚に上る銅銭が、日本を含む中世東アジアの政治・経済・社会に大きなインパクトをもたらした状況を解説する1冊。歴代中国王朝の銅銭はなぜ各国政府の保証なしに商取引の回路を成り立たせてきたのか。12世紀に銅銭が渡来するまでの状況を踏まえながら、素材としての中国銭、元朝の紙幣本位制を機に銅銭が渡来した経緯があって、含有割合で古銭の方がより評価される状況も興味深かったですけど、日本で銅が発見され、倭寇が衰えたことや貫高制から石高制への移行もあって、古銭が退場していく歴史は興味深かったです。2025/04/08

さとうしん

20
貨幣が必ずしも額面通りの価値で流通しなかった時代の話。中国銭が中国本土や日本以外にもベトナムで流通していたということや、ピカピカの貨幣より青錆の見える古色がかった銅銭が日本で珍重されたこと、南宋時代の紙幣の流通が日本への宋銭の渡来に関係したこと、日本で銅銭が大仏などの材料として用いられたことなどが印象に残った。中国王朝が基層社会での少額の通貨の十分な流通を重視したことは、あるいは現代中国で100元札以上の紙幣が存在しないことと関係しているかもしれない。2025/03/23

電羊齋

16
現代社会では同じ額面の貨幣は同じ価値を持つが、前近代ではそうとは限らない。近世東アジア各地における銭の選別と階層化すなわち「撰銭」という現象の解説が面白かった。また、中国で大量鋳造された銅銭が当初は金属素材として日本に流入し、結果的に基層での貨幣取引を促進したこと、ビタ銭の流通、日本での古銭の模造、倭寇と銅銭流入、古銭の退場などなど興味深い話題が多い。なにより基層での少額通貨の充分な流通が商取引を促進し、民の生活と物価にとって重要であったことも理解できた。この辺はまさに「金は天下の回りもの」だと感じた。2025/05/25

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