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内容説明
フィクションとは、はじめ私が考えていたような、作者の勝手気ままによって、どのようにもなるというものではなく、むしろ、ある必然の動きをもって作者に迫ってくるものだ、ということができます。フィクションとは、全体の真実を、生きた形で表わすための、必要な新しいパースペクティヴなのです――作家志望者に向けた講座(「言葉の箱」)、フィクション論から自作歴史小説での史料活用法まで。貧血化し機能化する散文に対する、豊饒な文学世界の実現へと誘う創作講義。文庫オリジナル。
〈あとがき〉辻 佐保子〈解説〉中条省平
(目次より)
言葉の箱
Ⅰ 小説の魅力
Ⅱ 小説における言葉
Ⅲ 小説とは何か
フィクションの必然性
「語り」と小説の間
小説家への道
小説家としての生き方
なぜ歴史を題材にするか
『春の戴冠』をめぐって
歴史小説を書く姿勢
『言葉の箱』あとがきほか
辻佐保子
あとがきにかえて――記憶と忘却のあいだに
文庫版へのあとがき
中条省平
解説
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Ise Tsuyoshi
2
「結局、小説の魅力は、そうした作家の一人ひとりが、自分の心のなかで、これぞ生命のシンボルなんだ、これに触れて初めて人間が単調な世界から抜け出ることができるんだという、そういうものに満ちた別世界を描くことだと言っていいかと思います」(p.45)。言葉を大事にしながらも言葉を自分のなかに消化して使うには「ピアニストがピアノを弾くように」、日々書き続けるしかない。文庫版あとがきによれば、夏目漱石『文学論』のF=Factとf=feelingを『門』にあてはめて論じた解説があるそうなので、今度読んでみよう。2025/05/15
NOZOMI
2
文章はやさしいが、内容はむづかしい。臆せずまた読みたい。2025/04/09
角
2
既刊の『言葉の箱』に『詩と永遠』収録の文章などを増補したもの。辻邦生生誕100年ということで、増補復刊されるのは嬉しい。が、新規の解説が追加されておらず、前の『言葉の箱』文庫版の解説の再録だけなのは淋しい。 でも、単行本初収録の講演記録「歴史小説を書く姿勢」が入っているのは嬉しい。こういう機会が無いと、なかなか雑誌収録のみだった対談や講演を書き起こしたものは読めないので。2025/03/28
Go Extreme
1
未来の箱 想像力によって新たなイメージを紡ぎ出す 文学はより本質的な現実に触れる力を持つ 知識が自身の実体験の経験として感じられる この世に存在することの大きな感覚 言葉は最も重要な道具 心の中に沈んでいるものを隅々まで吐き出す フィクションは新しいパースペクティブ 想像力によって新しい世界を作り出す力 歴史的事実を現代状況の比喩として捉える 現代という曲がり角における作家の試み 一回こっきりの生命のほとばしり 生命のシンボル 言葉の箱 作家自身の強い信念や創作意欲 喜びや感動に突き動かされる衝動2025/04/21
でろり~ん
0
素晴らしい一冊でした。著者は、自分たちの世代は本当の意味での生を生きていないって言ってますけど、今はもう、ますますですよねえ。西行花伝を3冊も買ってしまったことが、この著者を特別なものにしているのはじじつですが、やっぱりね、作家は考えるんですよねえ。感心です。2025/08/10