内容説明
二〇一七年、フランス中部に位置する都市リモージュの新聞社に勤める事件記者ジャンゴ・レノールトは、亡き祖父マルセルの遺品整理のため、彼が晩年を暮らした寒村を訪れる。戦後、対独協力者として断罪された祖父は、一族から距離を置いてこの地に隠れ住んでいた。生前会うことがなかった祖父が遺したのは古書の山と、二十あまりの黒檀の小箱──そこに隠された意味とは何か? ジャンゴは西洋古典学を研究する大学院生ゾエ・ブノワの協力のもと、祖父が希求した真実を求め歴史の迷宮へと足を踏み入れる。〈図書館の魔女〉シリーズの俊英が満を持して贈る、知的探究の喜びに満ちた長編ミステリ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
176
高田 大介は、新作中心に読んでいる作家です。 本書は、西洋古典学に関する著者の博識が気になり、高尚過ぎる内容、読者をかなり選ぶ作品でした。 https://www.tsogen.co.jp/np/isbn/97844880291972025/06/25
たま
85
この作家さん初読み。日本人作家が書く海外が舞台の小説と言うことで読んだ。祖父の遺品の謎を解くと言うミステリっぽい導入だが、ミステリと言うよりは、祖父がアルザス出身で対独協力者の疑いをかけられたことからアルザスや大戦時フランスの歴史、主人公の新聞記者(4分の1マグレブ系)が日々目撃する差別、分断の諸相、祖父の遺品が中世の楽譜と判明したことから中世音楽史、そして最後に記憶-記録-歴史とは何か(記憶の法律)等々現在のフランス社会の関心事についての作家の蘊蓄と見解がメインで、とても面白く、参考になった。⇒2025/10/03
オフィーリア
56
文化・政治・歴史・民族・音楽、膨大な情報量の洪水で読者を溺れさせてくる一冊。圧倒される密度の蘊蓄や議論が帯の通り読者に知的探求の喜びを教えてくれる。これだけ多岐にわたるテーマをスラスラ読ませ、対位法という概念でまとめあげ作品として仕上げきった作者様に脱帽2025/06/24
coolgang1957
55
人物や時代の背景とか解説が多くてなかなか読み進まん、でもこれがないと理解できない(理解の深耕さは別にして😅)。これは日本の価値観を舞台のフランスにしてるだけかどうかは判断できないけど、どこにも似たような話があるもんやと🧐歴史の改ざんやねつ造が差別につながったり、報道にも悪影響を及ぼして個人や民衆を愚弄することになる。そんなことを音楽史も絡めてなんとアカデミックに話が進んでいくことかとちょいと頭が良くなった気がする😅最終シーンは仏映画みたいに素敵な余韻が浮かびました。読み応え充分の初読み作家さん2025/08/26
まそお
45
やっと読みおわった。楽しんで読んだけど、細部まで理解するには知識不足が否めないなァ…と感じたのでお勉強していつかまた読み返したい。高い塔の童心でもそう感じましたが、この物語にも静かに燃える怒りがありました。世の中はいつだって理不尽だけど、諦めちゃだめなんだよな~。2025/07/01




