内容説明
おけいは戯作者見習い。幼い頃火事で両親を亡くし、戯作者の祖父の所に身を寄せる。
「見えないものが見える」弟幸太郎と「見えない人の心」を戯作で表したいおけい。だが祖父の原稿の清書を手伝うだけで、肝心の戯作はまだ書けていない。一方奇談や幽霊譚を得意とした祖父の絵師を「見える」幸太郎が務め、妙に生々しいと大評判だ。
ある日、大店夫婦の心中事件が起き、その後、夜な夜な幽霊が出ると噂になる。戯作のネタになるかもよと親友に言われるがままに、執筆意欲に火がついたおけいは事件を探ることに……。
女の幽霊が「見えた」弟と共に、おけいは果敢なくなった人、口を噤んだ人の言葉を物語に紡ぐ――。
人の業を乗り越えた人の優しさが染みる時代小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
118
戯作者見習いのおけい18歳。その弟・幸太郎11歳は見えないものがみえると言う。そんな二人を主役に据えて、脇を固める個性的な面々と、首を突っ込んだ事件から垣間見えるのは人間の業・・姿かたちは朽ちようとも遺る想いがあるのだ。ふぅ、これは麻宮好の新しいシリーズの幕開けだ!じっくり読ませるのはおけいの戯作だけじゃない。今回も好いわぁ。ただ、このカバーイラストの二人は私がイメージするおけいと幸太郎じゃないんだよなぁ。2025/03/10
ちょろこ
109
心探しの一冊。人の心は目では見えない。その見えぬ心を言葉にしていく、戯作者見習いのおけいの物語。とある夫婦の心中事件、人との関係、心の難しさが丁寧に描かれていく今作、やっぱり沁みた。聡い弟を始め、周囲の言葉に耳を傾け自分を見つめ正そうとするおけいの姿がいい。そして自分の痛みを相手に重ね理解しようとする姿も。深く深く心の中を手探りで辿っていくさまは事件の謎解きにも繋がり、心探しミステリと名付けたくなるほど。実に厄介な人の業。おけいの筆はそれを掘り起こし埋葬したかのよう。光へと導く優しさが拡がる読後感が好き。2025/03/31
タイ子
71
作家さんたちによって表現が違う<人の業>。根っこは誰が書いても同じなのだが麻宮さんの書く業が好き。主人公のおけいは過去に両親を火事で亡くし、祖父母に育てられ目下戯作者を目指してネタ拾いに夢中。弟の幸太郎は見えないものが見える超イケメン男子。ある日、大店の夫婦が起こした心中事件。その後幽霊騒ぎが起こる。残った2人の子供も何やら曰くがありそう。おけいと幸太郎が見たもの、聞いたこと、感じた事、人の業がなせる全てにおののき涙する。人の心は壊れやすい、だから愛され愛する。心の淵を覗き込むような悲しみと優しさの物語。2025/02/16
天の川
49
火事で両親を亡くし、戯作者の祖父のもとで戯作者を目指すおけい。戯作のネタにしようと、霊が見える弟と調べ始めた大店の夫婦心中事件の思わぬ顛末。惑いながらも真実を見極めようとし、事件に関わりのあった人々の目線で綴る戯作は着実に戯作者の道を拓いていく。麻宮さん、心の機微を描くのが上手いなぁ。火事場で傷を負わせた勘助を慕う気持ちの行く末も気になる。でも、このタイトルが私的にはちょっと…あと、装画もできれば(^^;)2025/04/18
akiᵕ̈
28
両親を幼い頃に亡くし、戯作者の祖父の元で将来は自分も祖父のようになりたいと奮闘しているおけい。そんな中、夫婦心中かと思わせる事件が起き、それを物語として紡ぐ事でそこに関わる人たちの見えない心の内に触れていく。人の業によって人は傷つき心を壊し、守りたい人を想う気持ちによってまた人は生かされる。なぜこのような事件が起きてしまったのか、おけいがその核心を掬い上げ、深い傷を負っていた人たちの気持ちに明かりを灯す。残酷な愛憎に狂わされた人たちに胸が痛むも、人情や兄弟愛にも溢れ、なんとも温かい気持ちになる。2025/02/16
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