内容説明
わたしたちはいつだって迷っている。
夜明け前が一番暗いと知っているけど、その暗さに耐えられるときばかりじゃない。
失われたもの、時間、そして人びと。
個人史と世界史の両方に分け入りながら、迷いと痛みの深みのなかに光を見つける心揺さぶる哲学的エッセイ。
目次
第1章 開け放たれた扉 Open Door
第2章 隔たりの青 The Blue of Distance
第3章 ヒナギクの鎖 Daisy Chains
第4章 隔たりの青 The Blue of Distance
第5章 手放すこと Abandon
第6章 隔たりの青 The Blue of Distance
第7章 二つの鏃 Two Arrowheads
第8章 隔たりの青 The Blue of Distance
第9章 平屋の家 One-Story House
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
アキ
79
原題「A field guide to getting lost」LOSTには失うことだけでなく、自分を見失う、道に迷うなどの意味が含まれる。祖先がロシア系のユダヤ人の著者自身の失くした記録、アメリカというヨーロッパ人が見出したロストワールド、若くして死んだ友人への喪失感。人生は振り返ってみると予測されないことばかりで、いつの間にか以前の自分は失われていることに気付く。さ迷いながら生きていく我々に必要なのは、コンパスでも地図でもなく、今への気づきと精神の回復力。新天地に赴く自分へのエールになってくれる書。2020/03/21
ネギっ子gen
53
【全世界を見失うがよい。その中で迷いながら自分の魂を見出せ(ソロー)】個人史と世界史の両方に分け入って、迷いと痛みの深化に光を見つけた、思索の書。巻末に参考文献。原書は2005年、翻訳は2019年に。<迷う、すなわち自らを見失うことはその場に余すところなくすっかり身を置くことであり、すっかり身を置くということは、すなわち不確実性や謎にとどまっていられることだ。そして、人は迷ってしまうのではなく、自ら迷う、自らを見失う。それは意識的な選択、選ばれた降伏であって、地理が可能にするひとつの心の状態なのだ>と。⇒2025/04/19
ケイトKATE
21
タイトルは『迷うことについて』だが、主題になっているのは、「迷う」、「失う」ことについての思索である。印象に残ったのが、第4章で登場するアルバル・ヌニェス・カベサ・デ・バカである。カベサ・デ・バカはアメリカ大陸征服時代に、原住民に捕らえられながらもアメリカ大陸を彷徨いながら脱出した。カベサ・デ・バカは仲間を失い彷徨ったが、新大陸で原住民を野蛮なものとして軽蔑せず自分と同じ人間であったと理解した最初の人間であった。迷うことや失うことは心を苦しめるが、そこから何かを得ることができることに気付かされる。2020/05/21
ぐら
16
綺麗な文章。私的な内容も含む歴史エッセイ。A Field Guide to Getting Lost。迷う、というよりも、文字通り“LOST”することについて書かれている。 アメリカの歴史や土地の知識がないので噛み砕くのが難しい章もあったけれど、潔さと悲しみが漂う。 隔たりの青、という章が合間に挟まれる。富士山の青色のように遠くからでしか見えない青がある。海の青、空の青。「わたしたちから失われているときにだけ手にすることのできるものがある。そしてただ遠くにあるというだけでは失われないものもある」。2020/10/11
imagine
16
『ウォークス』でも思ったのだが、これだけの思考と思索ができ、なおかつ明快な言語でそれを伝えられる著者に恐れ入った。自らの体験は記憶によく留めているし、古典や楽曲からの引用元も幅広い。極めつけは現代美術家イヴ・クラインについての第8章。この人物について初めて知ったが、日本では文献がほぼ皆無のようなのでますます興味が湧いた。彼に因んだブルーの装丁、引用元をしっかり辿った丁寧な翻訳も良い仕事。2020/06/25
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