内容説明
「ソクラテス、あなたは善く生きろというが、では 具体的にどうすれば 善い人間になれるのか」。本書では3人の若者の人生録を抉り、彼らを苛む疑義の真相を探る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
buuupuuu
9
カリクレスが示唆するように、ソクラテスの振る舞いは実践とは馴染まないように見える。クレイトポンは、ソクラテスが徳を勧めはするけれども、徳それ自体については何も教えてくれないと不平を言う。アルキビアデスは、政治と哲学に引き裂かれて苦悩する。確かな知に基づいた行為を目指していたはずなのに、どうしてこうなってしまうのか。プラトンの著作のあちこちにアルキビアデスを思わせる文章があるのが面白い。なぜよい家柄に生まれ、圧倒的な才能を持った人が堕落してしまうのか。間近で見ていたプラトンは真剣に受け止めたに違いない。2022/02/27
みのくま
4
本書はクレイトポン、アルキビアデス、アリスティッポスの3人の言動行動からソクラテスの影響について考察する良書。クレイトポンは「あなた(ソクラテス)はまだ徳の勧めを受けていない人間にとっては素晴らしく価値があるけれども、徳の勧めをすでに受けてしまった者にとっては、徳の極みまで突き進んで幸福になるためには邪魔も同然だと主張することになる」という。このソクラテス評はアルキビアデスにも共通し、若者たちを困惑させるのだ。他方アリスティッポスはもっと現実的な思想をソクラテスにぶつける。これがソクラテスの弟子たちなのだ2024/04/12