ちくま新書<br> なぜ人は自分を責めてしまうのか

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ちくま新書
なぜ人は自分を責めてしまうのか

  • 著者名:信田さよ子【著者】
  • 価格 ¥880(本体¥800)
  • 筑摩書房(2025/03発売)
  • ポイント 8pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784480076748

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内容説明

「すべて自分が悪い」というふうに自分の存在を否定することで、世界の合理性を獲得する。この感覚を、自責感といいます。臨床心理学では、自責の問題はほとんど扱われてきませんでした。この本では当事者の言葉を辞書として、自責感だけでなく、母と娘、共依存、育児といったものにまつわる問題を考えていきます。講座の語り口を活かした、やさしい一冊です。

目次

まえがき/第1章 母はまだ重い/1 「母と娘」の時代の幕開け/精神分析のなかの女/フェミニスト・カウンセリング/アダルト・チルドレン/被害という概念の広がり/『母が重くてたまらない』へ/2 母と娘のいま/母娘問題のはじまり/毒母、毒親という言葉/母の老い/自分の限界は甘く見積もる/亡くなった親/3 母を俯瞰する/定義にこめたもの/母親の三大原因説/謝罪になっていない謝罪/母と娘は和解できない/4 グループの力/解釈を一切しない/母親研究/言いっぱなし・聞きっぱなし/生育歴が母親研究になる/母を俯瞰する/不均衡な力関係の表れ方/第2章 共依存を読みとく/1 共依存とシステム家族論/当事者の言葉/アルコール依存症の治療現場から/システム家族論の登場/システム家族論の影響/2 支配としての共依存/共依存の発展/従来の共依存理解の限界/依存ではなく支配/「あなたのために」が不幸のはじまり/言葉が現実をつくる/母の愛のいかがわしさ/被害者権力/パターナリズム/3 母と娘の共依存/母のケアが力を奪う/あなたがいないと生きていけない/女性と共依存/共依存的な人にどう対処するか/共依存的になってしまうとき/被害者は無力化されているのではない/権力は状況の定義権/支配の根幹/4 複雑化したトラウマ/苦しみと鈍感さ/ありふれている共依存/支配性を自覚する/第3章 母への罪悪感と自責感/1 近代と母性愛/母と娘に関する3冊/罪悪感の正体/つくられた家族像/母性愛のふたつの柱/2 母のミソジニー/精神分析にとって女とは何か/阿闍世コンプレックス/受け継がれる母性信仰/ミソジニー/3 母性愛と罪悪感・自責感/反出生主義/虐待の影響としての自責感/母性愛なんてものはない/4 第三者の介入/最良の第三者は、父であるべき/キーワードの整理/第4章 逆算の育児/1 子どもとは何か/アルコール依存症とフェミニズムの合流/90年代のはじめの孤立/ACの親のように、じゃない育児/子どもという存在/2 親の言葉による支配/親の暴言/自立という言葉/人に迷惑をかけずに生きることはできない/家族と差別/加害と被害をひっくり返す/普遍的な価値を利用する支配/3 幸せでいる義務/抑圧移譲/強迫的なケア/子どもの前では幸せでいる義務がある/閉ざされた家族/幸せなふりをする/4 とりかえしはつく/子どもの恐怖/子ども以外の存在から支えられること/子どもが許せない気持ち/とりかえしがつかないことはない/第5章 なぜ人は自分を責めてしまうのか/1 自責感と規範の関係/規範を取り込む/規範の一貫性/2 「すべて自分が悪い」という合理性/感情を抱けない/子どもの文脈/たったひとつの合理性/3 根源的受動性/子どもは責任ゼロで生まれてくる/孤独感は高級な感覚/虐待の罪/4 自責感のあらわれ/自傷はサバイバル/アディクション/摂食障害/性的な問題/反転する自責感/家族と正義/あなたは悪くない/5 これからの旅へ/グループの意味/ヴィクティム・ジャーニー/あとがき/索引

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ネギっ子gen

65
【自分で自分を責めることの残酷さと、自己肯定感を上げ下げすることの奇妙さは、表裏一体である】コロナ禍に始めた「オンライン公開講座」の中でもっとも参加者が多く、ずっと著者の中で隠れたテーマでもあったという「自分を責める」ことを俎上に新書化。巻末に索引。<問題の立て方は言葉によって決まる。自己肯定感とか自分を好きになるという言葉を使うことで、思考はある方向に誘導されてしまう。/それらの言葉を使えば、「私次第で、私を変えれば、自己肯定感を上げれば、自分を愛せるようになれば」という水路にはまってしまうのだ>と。⇒2025/07/26

olive

37
なんだか最近、困った親の物語ばかり読んでるので手に取る。そこで母への罪悪感はなぜ生まれるのかを読むと、現代の日本のなかでは母親の愛は「疑ってはならない規範」とされ、母親の支配から自由になろうとすると「親不孝者」の烙印を押され、また自身も罪悪感に苛まれる。うんうん、わかる。だったらどうやって罪悪感を開放するのか本書でヒントを得ることかできる。そして印象に残ったのは、「この世に生きているかぎり、誰に対しても加害をせずには生きていけません。いつも誰かを傷つけているんです。それを自覚してるかどうか」(本文より)2025/06/18

rors(セナ)

18
自分の思考の癖として「私が悪かったな…」という結論を出しがちなのを自覚していたので、この本を手に取った。ら、自分の心の深いところに沈め込んで蓋をして、それでも非常に重荷になっているんだけれど、ちゃんと考えたくないと逃げていた「母娘関係」について多くの章が割かれていて、イヤイヤ読んだら、おそろしく腑に落ちた。あまりに自分と母の問題が赤裸々に書かれているように感じて何度も本を閉じて叫びそうになった。なるほど自分の思考癖の一部はここから来てるのかな。とりあえず自分も自己肯定感って言葉は苦手。2025/06/08

ryohjin

18
オンラインセミナーの語りが書籍化されています。カウンセリングの現場経験を積み重ねてきた信田さんの語りは熱く、キレがあります。アダルトチルドレン、DVなど家族の問題の先端で取り組み、この時代のあらたな家族観を提示されてきました。母親の愛情が娘を支配する、DVの被害者の自責感、こんな問題にグループカウンセリングを中心に関わり続け、大切なのは、同じ経験をしている人を知る、自分の経験を語ることが誰かの役に立つことの気付きとされており説得力があります。私の辞書はクライアントの語る言葉と言われているのが印象的でした。2025/04/20

タカナとダイアローグ

18
母娘の関係について文量が多いけど、「父」の不在が浮かび上がる。 「子どものためにやってきました」ってパターナルな権力性を自覚することから始めたい。 親など他者の振る舞いが不合理なとき、自分を守るため、「すべて自分が悪い」という究極の合理性を持ち出してしまう。自責感と自己肯定感(問いの立て方が違う)信奉の繋がりを調べていきたい。 虐待の公演後に、聴衆から「自責感は、自己免疫系疾患と通じてると思うんですよ」と話があったとのこと。白血病からの回復者と知って納得したらしい。カウンセラーはクライエントの言葉から学ぶ2025/03/13

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