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内容説明
なぜか戦後から色濃くなった武士道精神、ネットで嫌われる〈体育会系〉としての野球部、甲子園に残り続ける朝日新聞のパターナリズム、女子マネージャーの役割と女子野球の歴史に見るジェンダー、ニュージャーナリズムが影響する「Number文学」の問題点、大河ドラマ『いだてん』に登場した「天狗倶楽部」の革新性……。日本の野球を「文化」の側面から批評し、インクルーシブなライフスタイルスポーツとして捉えなおす。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
よっち
29
大谷翔平ら日本人メジャーリーガーの活躍が埋め尽くすテレビのニュースと、インターネットやSNSの世界のねじれが生じている原因を野球の歴史から考察する1冊。体育会系としての日本の野球文化はどのように変わってきたのか、そして現代の体育会系はどのようなものになっているのか。アメリカの創られた野球神話、戦前の日本トップエリート校・一高で起こった変化、天狗倶楽部と野球害毒論争や、「帝国主義」と日本野球、戦後日本野球やスポーツの価値論から野球の位置付けがどのように変わっていったのかを解説するなかなか興味深い1冊でした。2025/04/07
佐倉
17
煽情的なタイトルではあるが、アメリカでの野球の成り立ちから日本での定着、そして戦後から現代までの長い射程で「なぜ野球がこのような立ち位置にあるのか?」を紐解いていく好著だった。一高などで受容されたサブカルチャーが批判にさらされる中で国家というメインカルチャーへの目配せ的に武道的な面を押し出していく流れ、その中で野球を楽しむという方向性へと回帰する天狗倶楽部の存在、戦後にメインカルチャーとして返り咲く中、かえって軍国主義的な面がにじみ出てくるという流れ…野球に限らずスポーツ全体の問題点を考えさせられる。2025/04/30
さとうしん
15
高校野球の構造的問題、女子マネに示されるジェンダーの問題から始まってアメリカでの野球の発祥、日本での受容と野球害毒論争、中国東北部や台湾など外地での広まり、そして戦後の展開と課題といった具合に話題が詰め込まれていて読み応えがある。結論としては学校を出て就職した後も、野球経験者も未経験者も、あるいは男性だけでなく女性も野球ができる(あるいは続けられる)環境を整えていくべきということになるんだろうか。2025/04/12
電羊齋
14
野球部・体育会系への否定的イメージから説き起こし、野球部ひいては野球界の抱える問題を解剖する。明治大正にすでにあった勝利至上主義批判、本来包摂的特性を持っていた野球が次第に「男らしさ」に回収されていく過程、高校野球の問題、「男性性」の象徴の「軍人」から「野球選手」への移行、そして「見るスポーツ」としての消費、スポーツ新聞と「Number文学」に見られる野球への技術論的・批評的視点の欠如など興味深い指摘が多い。体育会系、文化系、ジェンダーの枠に囚われない野球、体育、スポーツの在り方を訴える著者には賛同。2025/04/21
itchie
11
タイトルの印象よりかなり骨太な内容で、野球を糸口にした日本人論にもなっている、射程が長く、広い本。日本野球の黎明期、野球はむしろ文化系の遊びだった。かなり明治期にページを割いていて、天狗倶楽部も登場するので『いだてん』ファン必読。びっくりしたのは「星野君の二塁打」の新解釈で、あの話は1947年に作られていて、軍国主義ではなくむしろ戦後民主主義的。関東軍がある種の「自主性」を発揮して暴走したような、戦争への反省が色濃いのでは、と。これは当時の受容のされ方含めもっと紙幅が必要と思うけど、興味深かった。2025/04/10