内容説明
作家としての窮状さえも、フィッツジェラルドは
見事に小説に結実させていった――
華やかな喧噪の日々から一転、三十代にして迎えた不遇の時代にも、
フィッツジェラルドは多彩なスタイルの短篇小説と、
「壊れる」三部作ほか秀逸なエッセイを残した。
人生の暮れ方に描かれた、美しくゆるぎない物語。
早すぎる晩年となった一九三〇年代のベスト集。
〈短篇小説〉
異国の旅人
ひとの犯す過ち
クレイジー・サンデー
風の中の家族
ある作家の午後
アルコールに溺れて
フィネガンの借金
失われた十年
〈エッセイ〉
私の失われた都市(『マイ・ロスト・シティー』改訳)
壊れる
貼り合わせる
取り扱い注意
若き日の成功
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
練りようかん
14
短編8編とエッセイを収録。フィッツジェラルドといえば喪失がまず頭に浮かぶのだけど、後戻り出来ないから滲みでる独特の美しさや、失われたものに対する憧憬など、甘美のエッセンスをより感じた作品集だった。各作品に寄せる村上春樹氏の紹介文が味わいを深くして良い。苦しい時期の1930年代に、ファンでもあった編集者が作品を掲載させることで経済的に支えた裏事情が印象的で、著者と編集者の喪失と憧憬の入れ子構造を思った。特に好きなのは女の子に被さった父が死んだ「嵐の中の家族」。引き取ろうとする彼に先のテーマを強く感じた。2025/08/02
turtle
7
1920年代に絶頂期を過ごし、作家としての夕刻を迎えたフィッツジェラルドの1930年代の大恐慌時代の作品集。村上春樹さんがいかに大事に翻訳を手がけたかが伝わってきます。それぞれの作品に流れるはかなさのようなものが心に残り、悪くない読み心地でした。2025/06/06
ぼっせぃー
1
「異国の旅人」「クレイジー・サンデー」「風の中の家族」「フィネガンの借金」作品群は自身が飲酒と貧困により崩れ落ちていった過程を、静かに、しかし決して冷笑的でなく描いている。どの語りにも、かつてあった何かがもう戻らないという確信がにじみ出ており、その欠落感はどこか澄んでいる。訳文としても、特にその“澄んだ喪失”の質感に忠実であろうとしている。また、単なる晩年の記録(作者はもちろん意識していなかったであろうが)ではなく、書き手が自らの残響に耳を澄ませ、夕暮れの様に、記憶と予兆を同居させようとした軌跡でもある。2025/05/28
ブネ
1
【MEMO】 作家としての窮状さえも、フィッツジェラルドは 見事に小説に結実させていった―― 華やかな喧噪の日々から一転、三十代にして迎えた不遇の時代。 そして早すぎる死を迎えるまで。 多彩なスタイルの短篇小説と、秀逸なエッセイをセレクト。 揺るぎなく美しいその筆致を味わう、最後の十年間のベスト集。2025/04/07
もりくまさん
0
図書館の返却本の所にあって目に付いたので、ついでに借りました。 文字が小さいー2025/08/18