内容説明
『ラブレス』『ホテルローヤル』等、家族の光と闇を描き続ける直木賞作家・桜木紫乃のルーツ!
夢に生き、夢に死ね――
昭和の北海道。
己の城を求め、男は見果てぬ夢を追う。
【著者コメント】
書きながら改めて、生きることは滑稽だと感じました。
滑稽でいいと思うところまで、書けた気がします。
やせ我慢人生を歩いてきたすべての先人に、愛を込めて――人生劇場。
何もかもが赤く染まった鉄鉱の町・室蘭。
四人兄弟の次男に生まれた猛夫は、兄にいじめられ、母には冷たくあしらわれながら日々を過ごしていた。
心のよりどころは食堂と旅館を営む伯母のカツ。やがて猛夫はカツのもとで育てられることになる。
中学卒業後、理容師を目指し札幌に出た猛夫だが、挫折して室蘭に帰る。
常に劣等感を抱えるようになった猛夫は、いつか大きくなって皆を見返してやりたいと思うように。
理容師として独立、ラブホテル経営と、届かぬ夢だけを追い続けた男の行く末は。
自身の父親をモデルに、直木賞作家・桜木紫乃が北の大地で生きる家族の光と闇を描く。
【目次】
一章 鉄の町
二章 修業
三章 別れ
四章 長男
五章 夫婦
六章 闘い
七章 新天地
八章 落城
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
165
「バカヤロー!」人生最期はトントンで丁度いい。だけどね、猛夫の人生劇場の独り芝居に付き合った里美の、駒子の時間を返してよ。トントンどころか愛と言う大きな「おまけ」を貰ってなお、生きるって切なくて愛おしいんだなぁ。理容師の資格を取得するまで「頑張れ!」ってページを捲った私だが、独立してDVから先には昭和の弱い男を感じてしまい、閉ざしたはずの記憶の蓋が開いて座り心地が悪かった。何をどう繕っても私は許さない。その愛憎は私の中にも組み込まれているのが苦しい。圧巻の桜木紫乃姐さん、今回も天晴れだ。2025/03/26
モルク
151
著者の実父をモデルとした作品。室蘭の四人兄弟の次男の猛夫。長男だけを大切にする両親と長男からのいじめ。そこから救ってくれたのは叔母のカツ。彼女に引き取られ甘やかされるが、理容師を目指し札幌に行くが挫折、室蘭に戻り理髪店店主藤堂に弟子入りし腕を磨き一人前になり釧路で独立結婚…これは一代サクセスストーリーかと思われたのはここまで。妻子に愛情を注げず挙げ句の果て暴力を振るう。愛情のない子供時代は言い訳にならない。最低な夫、父であるがそれでも駒子という存在が彼を助ける。昭和の男と女がここに甦る。2025/07/25
のぶ
131
一代記をいろいろと読んできたが、かなり面白い部類に入る作品だった。新川猛夫の生涯は、桜木さんの御父上をモデルにしているようだが、決して豪放磊落な人物ではなく、乱暴な兄に悩まされ、若い頃から苦労して生きてきた人のように感じたが、理容師を目指し、少しずつ成長し、店を持つまでになってくるところは一番興味深く読んだ。外から生涯を支えた駒子の生き方にも心を動かされた。まさに人生劇場そのものだった。2025/03/20
ウッディ
121
鉄鋼の町で魚屋の次男として生まれ、長男からいじめられ、母からは疎まれ、伯母の元で育った猛夫。理容師としての腕を磨き、比類なき技術と自分の店を手に入れながら、何かを成し遂げようとラブホテルのオーナーになった男。愛しい人への愛情の表現方法も、自分の気持ちの治め方も知らない著者の父をモデルにした主人公の「人生劇場」でした。不幸な家庭で育った者同士で共鳴し合い、結びついた人たちを自らの行動で不幸にしてしまう、そんな不器用で救いのない父の物語は、桜木さんのバックグラウンドとなり、作風に影響を与えているのだと思った。2025/08/06
ナミのママ
116
桜木作品の主人公男性にしては魅力を感じないなと手にしていなかった作品。実の父をモデルにしたと知り納得した、これはそういう物語だったのか。昭和13年、鉄鋼の町「室蘭」で4人兄弟の次男として産まれた猛夫。彼の生涯は時代とともに変化していく。経済的にも愛情にも恵まれない家庭で育ち、学歴より手に職をつけ、名をはぜた一方で、満たされないものに突き動かされていく後半。生身の男の人生が淡々と描かれている。読みながら共感も批判もしない。これはタイトルどおりの人生劇場だった2025/07/13
-
- 電子書籍
- 陰の実力者になりたくて!マスターオブガ…
-
- 電子書籍
- ピアノの悪魔と恋する剣士① - 戦う少…
-
- 電子書籍
- 継続するコツ
-
- 電子書籍
- どんな咬み犬でもしあわせになれる 愛と…
-
- 電子書籍
- FROM2012