内容説明
大学生の時に友人からの性暴力にあったスミレ。
限界に達した心を抱え、困難な状況にある人たちをケアする街に辿り着く――。
『消えない月』『神さまを待っている』『若葉荘の暮らし』、
現代女性の寄る辺なさに真摯に向き合い、そっと軽くする――著者最新作!
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「それぞれに過去はあって、これからどう生きていくのか悩んで、
闘っていることはわかるから、気にせずに自分のことだけ考えていればいいの」
大学生の頃、自分のことを好きだという友人から性暴力を受けたスミレ。
忌まわしい記憶を胸中に押し込めながら社会人として過ごしていたが、久しぶりに会った女友達から、
彼が当時のことを美しい思い出として吹聴していたことを聞いて、何もできなくなってしまう。
行政がケアを目的に作り上げた街で暮らすことになり、
いじめや虐待など、暴力を受けてきた人々と関わりながら、自分はどう生きていくのか、模索していくが――。
人の心は、あまりにも繊細で複雑だ。
痛みと再生を真っ向からとらえた物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
164
アサイラムとは避難所・保護施設・庇護・・そんな意味がある。行政がケアを目的に作り上げた街で暮らすスミレと、関わる人達の心模様と再生の物語。何を以って再生と言うのか私に確固たる言葉が出て来ないから苦しい。人間の脆さや儚さ、揺れ動く心。暗中模索の心理描写に唸ってしまう。これが畑野さんの真骨頂だ。現実には有り得ない街だろうけれど、世間一般の価値観で被害者が救われることなどないのだ。『選択権は、常に本人だけにある。』くぅ、キツクて重い本作。畑野さんに今回もやられた読後感。2025/04/10
おしゃべりメガネ
137
う~ん、深い話でしたね。畑野さん、これまで色々な作風の話を書いてきてますが、本作はまたこれまでの路線から離れた感じかと思います。主人公「スミレ」は大学生のトキに性加害にあい、とある町で心の療養をすすめながら暮らしています。その町がちょっと特殊な町で、住んでる住人も人それぞれに何かしらワケありな感じです。読んでいて何がどうというワケでもないのですが、不思議とページを捲る手が止まりませんでした。女性は読んでいて、ちょっとツラくなる描写もあるかもしれませんが、最終的には読めて良かったなと思えるステキな作品です。2025/04/16
モルク
128
「アサイラム」とは避難所とか保護という意味だそうだ。行き場のない子供、障害により生活が困難になっている人や精神的に参っている人の住むところ。町全体がそのような場になっている架空の地域を舞台に描かれる。大学生の時に性被害にあった主人公は、苦しみを背負い乗り越えられず仕事も辞めこの町に移り住み、ここで仕事をしながらカウンセリングを受けている。苦しむ人たちに税金を使うことや町の名を聞いただけで偏見を持つ人々。苦しみが目に見えないので理解しない人がいるのも事実であるが、こんな町で苦しむ人に少しでも楽になって欲しい2025/05/12
のぶ
106
大学3年生の時にサークル仲間から受けた性的加害による苦しみを背負い続け、旅行代理店を退職、<被害者の住む街>に移り住んで暮らす真野スミレ、28歳を主人公にしたストーリー。スミレの暮らす街は性的加害だけでなく、様々な出来事によって深い傷を受け、その所為で正常な生活を送ることができなくなった人々を迎え入れている、避難場所のような場所。こんな場所が実際にあるかは分からないが、読んでいて被害者が受けた心の傷の深さ、大きさを強く教えられるように感じた。重たい読後感と合わせて、微かな光も見えた気がした。2025/04/20
hirokun
100
★4 波多野さんはたぶん初読みの作家さん。アサイラムという表題は、避難所といった意味があるそうだが、性被害にあいPTSDに苛まれている女性を主人公にした作品。様々な原因により心身に不調を来した人たちの様子を丁寧かつ繊細に表現している。最近話題になっている案件とも通じるものがあり、物語に引き込まれるように読み進めた。人と人との関係は、時に傷つける気持ちがなくても傷つけている場合もあり本当に難しいものだと感じる。性加害に関しては、世間の論調がまだまだ甘く、被害者を守る意識が弱い。2025/04/06
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