内容説明
徹底的な史料の読み込みと、図像の分析で文化史研究に新たな地平を拓いたあの先駆的な名著に、図版を増補。本書では18世紀ころのイギリスで行われていた制裁の儀礼「女房売り」「シャリヴァリ」から食糧蜂起にいたる、いじめと騒ぎの歴史をひもとき、イギリス民衆の正義や秩序の意識を解読。さらにジェントルマンの日記やローカル新聞の記事、裁判記録などから、統治者といえども時代の作法・約束事にしたがわざるをえなかった事情を明らかにする。そうした観点からホーガースなどの風刺画を解析してみると―。当時のイギリスの街中を旅して、人々と出あえるような、出色の一冊。
目次
第一章──異文化としての歴史/1 「女房売ります」/2 スキミントンに出くわす/3 制裁の儀礼と文化の歴史/第二章──暦と十八世紀 名誉革命体制と反乱/1 日付けの象徴性と政治文化/2 ジョージ治世元年の群衆/第三章──法の代執行 食糧一揆の世界/1 史料のレヴェル/2 一七五六~五七年の食糧一揆群/3 一揆のパターン/4 規律・法・正当性/第四章──騒ぎとモラル 第二の世界の噴出/1 家父長的な統治と民衆/2 労働・コミュニティ・性/第五章──ホーガースの黙劇 政治文化の表象/1 二つの文化の併存/2 権力と群衆/あとがき/ちくま学芸文庫版あとがき/付録/図版出典一覧/史料・文献解題/索引/地図(歴史的なイギリス、十八世紀なかばのロンドン)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬参仟縁
23
1993年初出。民衆がしたたかに生き、演じる時空には独自の意味があり、固有の論理、一つの文化=世界をなしていた(056頁)。民衆のおかれた生活条件や一揆の規律、制裁の儀礼としての性格に注目する必要を説く(162頁)。民衆の生活・文化・運動における自然発生性、自律性、労働民衆の世界の固有性について、日欧は60年代末から主張され、合意できた論点(201頁)。史料豊富。 2014/08/19
Historian
3
イギリス史といっても、いじめとモメ事、男と女の問題、民衆とジェントルマンの間のやりとりをテーマに、「女房売ります」というビラから始めて、[・・中略・・]これでもかというぐあいに色々な史料をさぐるプロセスが語られます。ホーガースの絵も史料のひとつとして分析されます。 ムチャクチャに見えて、じつはしっかりした民衆のたくましさが描かれて、歴史や英文学やイギリス美術の見方が変わるような気がしました。何といっても、版画や地図がいっぱい。2014/07/14
Cebecibaşı
1
民衆世界と統治者の世界との間の断絶と交流の中で生まれる「磁場」をメインのテーマとして、近世イギリスにおける民衆のモラルがどういうものだったのかを民衆運動や民衆習俗の事例から読み解いていく一冊。マルクスとグラムシの議論を通して民衆世界の領域と政治世界の領域を念頭に社会を分析したトムスンやギンズブルクの研究と同系統の中で議論が進む。日本史において「法と社会」という観点から分析を行う塚田や、権力関係に着目した松沢の研究とも通底する議論がされている。2020/04/10
左手爆弾
1
まさに、暴民mobの本。この語はmobile vulgus(定まりなき群集)を意味するが(p.231)、この民は圧政に虐げられるばかりではない。時には自らの手で法を転覆させ、特殊な秩序を作り出す、まさに「民のモラル」の世界があった。いわゆるモラル・エコノミーについての本だが、モラルは単なる道徳ではなく総合科学であった(p.235)。そういう意味で、近世イギリス史を総合的に見る視点を提供してくれる。2015/05/14
261bei
0
ホーガースの作品を補助線にして18世紀イングランドの民衆の政治文化を追う本。参考文献リストはあるが注を細かく付ける本ではない。しかしその分肩肘張らずに読める。民衆による「代執行」(日本でいう一揆や打ちこわし)に言及する三章が読みどころだが、個人的には昔のイギリスのややこしい暦年法を解説してくれる二章を一番面白く読んだ。2024/12/02
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