内容説明
知人の老女がひったくりに遭う瞬間を目にした大学生の春風は、その場に居合わせた高校生の錬とともに咄嗟に犯人を追ったが、間一髪で取り逃がす。犯人の落とし物に心当たりがあった春風は、ひとりで犯人捜しをしようとするが、錬に押し切られて二日間だけの探偵コンビを組むことに。かくして大学で犯人の正体を突き止め、ここですべては終わるはずだったが──いったい春風は何に巻き込まれたのか? 『パラ・スター』『カフネ』の俊英が、〈犯罪と私たち〉を切実に描き上げた、いま読まれるべき傑作長編。/解説=瀧井朝世
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
タイ子
104
「カフネ」しか読んだことがない阿部作品だがミステリも面白い。大学生の春風は老女がひったくりに遭う瞬間を目にする。偶然その場にいた高校生の錬と追いかけるも犯人を取り逃がしてしまう。犯人がその場に落とした証拠品を目途に2人の犯人探しが始まる。若者コンビの探偵きどりものから一転、もう一人登場するのが大学生の理緒という女性。ここから作品は不穏な空気を纏い始め、物語全体に社会悪を覗かせていく。胸に抱える不安や忘れがたい過去と闘いながら生きている彼らが意外な繋がりを見せながら理不尽さと向き合う姿が頼もしい。2025/05/18
名古屋ケムンパス
89
「自分の利益のためなら人に嘘をついたり人を騙しても良いと考えている人」は必ず存在します。残念ながら、その心の闇は程度の差こそあれ、どの人の心にも潜んでいそうです。でも、著者は本書でこう語るのです。「人を害する能力を持っていながらそうはせず、嘘をつく能力を持ちながら真実を語り、他者を押しのけてでも欲望を果たそうとする自分を戒める人々の祈りが、なんとか今日も世界を成り立たせている」…危うさを抱えた人の世を生きるには相当の覚悟が必要ですね。2025/05/17
オーウェン
61
老婦人のひったくり事件で居合わせた春風と錬。 2人は逃げた犯人を捕まえるという目的で共謀するが、事態は思わぬ方向へ。 ミステリではあるが、これとは別のパートが紛れ込んでくる。 貧困家庭に生まれた理緒は違法な詐欺の片棒を担がされる羽目に。 この2つがどのようにリンクしていくのかが見どころであり、出てくる主要な人物どれもが過去に重い傷を患っている。 そこに対し解決を試みようとするため、余計に深い傷になる者も。 関係してるかと思っていた春風の家族はほとんど意味がなかったが、それは小さい不満か。2025/10/25
森オサム
56
著者初読み。結構複雑なプロットとキャラ造形を見るに、時間をかけてじっくり書かれたのでは?と推察する。起こる事件は詐欺で有り、社会派ミステリの雰囲気で中々重い。しかし主要人物が大学生、高校生と言う事で、軽妙なやり取りの青春ミステリでもあった。正義感が強くて関係無いのに首を突っ込むお節介な主人公は嫌いなタイプですが、そこを我慢すればとても面白い作品でした。辛い過去を持った人物ばかりでは有ったが、皆さんとにかく若い。今後未来に光明が差す事を祈ります。2025/10/30
ぽのぽの
51
とにかく意外な展開だった。そもそもタイトルからは想像もつかなかった、特殊詐欺をテーマにしたミステリー。阿部暁子さんの作品を読むのは今回で5作目。序盤は軽快で、主人公のひとりである高校生の錬が『鎌倉香房』の雪弥くんに似てて嬉しく思っていたら…。いや〜、人ってわからないな。人を「信じる」って、実はとても難しくて、もろくて、危なくて、だからこそ尊いことなんだと感じた。心に残る良い物語だった。2025/12/14
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